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坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。新ブログ「人の言うことを聞くべからず」+を開設しました。古代史、神話中心のブログです。

小池田マヤ「不思議くんjam」の感想を書いてみた

f:id:sakamotoakirax:20140202203959j:plain実はファンタジーに見せて、ラブコメなのである。読者は最初、この物語をファンタジーが縦軸で、ラブコメが横軸だと錯覚する。しかし「全てのアムレットを集めて世界の王になる」というストーリーは、大抵終わりを全うできない。王になった後の世界観を提示すことは、相当に難しい。ところがラブコメとして読むと、ファンタジーの部分が尻切れとんぼになっても、高い充実感が得られる。いや、むしろラブコメが基本で、ファンタジーが付けたしと見た方が正しいかもしれない。主人公が複数の女の子に囲まれ迷いながらも、一人の女の子と結ばれる話で、ファンタジーはその味付けになっている。
それにしても、ファンタジーの出しかたは凄い。意味が分からず考えてしまうことが多いが、それがかえって読者の想像力を掻き立てていく。また絵やコマ割りが、独特のマンガの文法と混ざり合って、高密度の内容になっている。小池田の作品は文庫の大きさに縮刷できない。細かい書き込みが多いため、縮刷すると読めなくなってしまうのである。しかしヒットすれば時間をおいて文庫化する傾向が強い昨今では、このような作品は希少種と言える。この作品を見ると、出版界の都合で振り回せない強面の作品を、読者の側が育てていく姿勢も必要なのではないかと考えてしまう。
ファンタジーにとって、テーマは重要であり、この作品はテーマ性が弱いといえる。しかし読者が見事に騙されて、なお満足感を得られるだけの力強さが、この作品にはある。