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坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。新ブログ「人の言うことを聞くべからず」+を開設しました。古代史、神話中心のブログです。

最高のヒューマニズム~小池田マヤ『CGH』

f:id:sakamotoakirax:20140325000918j:plainこのマンガを、変態マンガだと思わないで欲しい。(私はそう思って、一度敬遠した。)このマンガの良さを理解するには、一度時系列に直して理解することである。
実にシリアスなストーリーである。作家としては少々扱いにくいほど重く、またわざとらしい。小池田は時系列の順序を乱し、キャラクターを全面に出すことで、重さを保ちながら明るさを出し、しかもわざとらしさを感じなくさせている。実に緊密な構成である。
私は、あらゆるジャンルの中で、ヒューマニズムが一番のジャンルだと思っている。そしてヒューマニズムが一番であるなら、最も優れたヒューマニズムは、救われない者を救うストーリーであろう。主人公の千歳は死ぬべき運命にあり、一人で死ぬのを恐れている。千歳の幼なじみの黒須は、千歳が死ぬ時に共に死ぬ約束をしている。千歳はその約束を後悔し、黒須を生きさせようとするが、土壇場で、
「一緒に死んでくれる?」と千歳は言う。救われない運命を背負う者の、消すことのできない暗い情念、しかもこの情念を、物語は肯定するのである。これ以上のヒューマニズムは、「日出処の天子」以外にない。
絵も注目である。トーンの貼り方、独特のコマ割りなど、単にストーリーだけでなく、ページ全体を楽しめるものになっている。吹き出しの読む順序には少々難航したが、手塚治虫も吹き出しの読む順序は、右から左よりも上から下に読む順序を優先させていたのを、このマンガで思い出した。特にラストは、回想の中の千歳のセリフに、回想をしている黒須のセリフが重なるシーンがあり、二人の心情がせめぎあい、強い感動を呼び起こす。(これを読みにくいと思って敬遠する方は、読まなくて結構)
小池田のマンガはトーンが多くて背景が少なく、キャラクターが浮き上がる描き方である。キャラクターが風景に溶け込んでいくような羽海野チカとは対象的な描き方になっている。このような描き方は、強い個性や激しい心情を描くのに、非常にマッチしている。
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