坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

主人公とラスボスが同じ?書評『3月のライオン』

f:id:sakamotoakirax:20140406131058j:plainこのマンガを将棋マンガと見た場合、最も興味深いのは、主人公とラスボスが同様のキャラクターであることである。名前も共通性があり、主人公は霧山「零」で「ゼロ」を、ラスボスは「宗谷」「冬司」で「北」「冬」を暗示している。零は中学生でプロ棋士になり、将来の名人になることが嘱望されており、棋風もオールラウンダーであり、宗谷の棋風と似ている。八巻で、霧山と宗谷が通じ会うことが示されたが、このことは零の未来が明るくないことを暗示している。その未来は孤独である。天才が抱える孤独である。
注目すべきは、柳原という老齢の棋士である。宗谷が五つのタイトルを保持している中で、棋竜と棋匠が宗谷以外のもので、柳原は棋匠のタイトルを持っている。柳原は零と直接に関係することはない。代わりに島田開が、棋匠のタイトルに挑戦する形で関係していく。島田は山形の寂れた田舎の出身で、苦労してタイトル戦の常連になった。そして地元にタイトルを持って帰ることを悲願としている。胃痛を抱えながらも努力家で、面倒見のいい島田を、零は尊敬している。島田は柳原に勝ち、棋匠のタイトルを獲るだろう。そしてその島田を、零が倒すのである。
親しい人が苦労して築きあげた栄光を奪い獲ることにより、零は宗谷に挑戦する実力を身に付けることができる。そしてそれは避けられない道なのである。この無情な運命による孤独、その孤独を零は宗谷を見ることで、より早く、より深く感じていくのである。
よって今後の展開は、零が感じた孤独と、どのように向き合っていくのかが、物語の主眼になるだろう。