坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。新ブログ「人の言うことを聞くべからず」+を開設しました。古代史、神話中心のブログです。

私の擬装請負体験⑦

シリーズ一回目から読みたい方はコチラ↓


  1. sakamotoakirax.hatenablog.com

派遣会社Q社からAグループR社に派遣された経緯は、単なる偶然である。
ハローワークで求人票を取った場合、求人票には派遣先の名前は入っていない。
求人票を持って紹介の手続きをとる時に、始めて派遣先の名前を告げられる。
AグループR社だとわかった時に、私の中にひとつの構想が浮かんだ。それはR社に派遣されて嘱託、正社員となり、R社からB社に出向して2000万の改善提案に参画し、実現させるというものだ。
K課長と話した後、部署Cでは箱の容量を大きくし、より多くの製品を作れるようにしていた。
2000万の改善提案は、箱の容量を変えずにより多くの製品を作れるようにするものだった。
(やれるだろうか)
やれるかどうかは、わからなかった。しかし、やってみる価値はある。
派遣会社Q社には、「この間までB社で働いてました。B社のような会社で働きたいです」と履歴書に書いて送った。
次の日には「今日面接できますか?」と連絡がきた。
「できます」と言えば、派遣では採用はほぼ決定である。
面接をし、すぐに工場見学の話がきた。
工場見学の前にQ社の営業Sから、
「坂本さんの適正を考えて、部署を変更します」
と言ってきた。
(ん?F所長から、Q社に俺の話でも行ってるのか?)
少し不審に思った。
さらに、
「今回は派遣です」
と、Sは言った。

工場見学をした。ひととおり見た後、派遣先の社員と面談があった。
「ここは冷房がなく、夏は熱いですし、きれいな職場じゃない。それでもあなたはここで働けますか?」
派遣先のT部長が聞いてきた。
(この人は…優しい?それとも少し頼りない?)
そんなことを思いながら、面接は終わった。
数日して、R社で働くようにとの連絡があった。
「まだ採用ではないんで、気をつけてください」
と営業Sは言ってきた。
(いや、採用だろう)
と私はたかをくくったが、その後面接があった。
テーブルの上に、私の履歴書が乗っている。
いや、履歴書ではない。私の履歴が書かれている、別の用紙だ。
(わざわざ作ったのか?何でこんなことをするんだろう)
少し不審だったが、気にしなかった。
「どうも坂松さん」
人の良さそうな顔をした総務職員のU氏が言った。
「いえ、坂本です」
「そうですか、坂松さん」
U氏はあまり私の話を聞いていなかったが、面談はうまくいった。
「これ、社外秘なんで家に持ち帰ったりしないでくださいね」
と言って、U氏は封筒を渡した。中には組織図などの会社資料が入っていた。
午後には、働き始めた。
「ざまあみろ、所長め!!」
帰り道の車の中で私は叫んだ。
(そうだ、副主任Jに電話しよう)
家に帰って、そう考えた。B社の派遣社員とは何人かと連絡をとっていたので、副主任Jにも、私がAグループR社に派遣されかかっていることは知っているだろうと思った。
(B社時代に、温めていた改善提案が三つあるんだよ)
電話をかけた。しかし数回のコールで、電話は切れた。
(ーーブツ切りかよ)
私は受話器を見つめた。

こうしてR社で働き始めた。
作業は一行程だけで、部署Lのように覚えにくい作業でもなかった。
直接の上司だったVさんは、私が仕事を教わった人の中で、一、二を争うくらいに教え方のうまい人だった。
しかし仕事を続けているうちに、Vさんが妙なことを言った。
「T部長には気をつけろよ」
「え?」
「あの人は何かあると、すぐに人を辞めさせるからな」
(そんな人には見えなかったがな)
私の中に、違和感が残った。

私の辞めさせられ方には周囲も同情的で、一部の派遣社員が、私のために送別会を開いてくれた。
送別会の席で、
「請負から派遣に変わった」
と聞いた。
(ーー俺が辞めた直後に?俺のことと関係あるのか?)
当時は、私が擬装請負の告発をするかもしれないと、B社が考えたのではないかと考えたし、今もそうだと思っている。
しかし今では、所長の人事能力に見切りがつけられたという線の方が強いのではないかと思っている。派遣に切り替わった後、B社では派遣の大幅なリストラが行われたが、そのリストラに所長の意向が反映されていなかったからである。

送別会の中に、Mくんもいた。
Mくんは車の免許を持っていないので、送別会の時は私がNくんの送り向かえをした。Mくんとはいろいろ話をした。
「∇くんっていただろ?∇くんが部署Cに行ったんだよ」
Mくんが言った。∇くんはクリスタルグループの派遣社員だが、I班とは別で、特に話したこともない。
「それがまたEさんと色々あって、精神科で診断書までとってきたんだよね」
(診断書キター!!)
心の中でガッツポーズ。
(Eと所長の評判は、悪くなるにこしたことはないからな)
「その後Nさんが、『あ、あなたの教え方に問題があるんじゃないですか?』って言ったんだよ」
(ん?)
Mくんが一瞬言葉に詰まったのが、私には気になった。
Mくんを家に送り届けたところで、
「Jさんに、改善提案が三つあるから電話に出るように言って」
と言うと、Mくんは「わかった」と言った。
しかし、その後二週間経ってもMくんからの連絡はなかった。こちらから電話すると、
「いいよ、改善提案は出さなくて」
とMくんは言った。
(……)
仕方がないので、手紙に改善提案の内容を書いて送ったが、やはり返信はない。
その後、クリスタルグループの派遣社員と飲む機会があった時、Vくんが診断書をとってきて、その後辞めたと聞いた。
「その後、Eさんに対してNさんが、『だからおとなしく坂本を使ってれば良かったんだよ』って言ったんだ」
と、その人は言った。
(つづく)


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