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坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。新ブログ「人の言うことを聞くべからず」+を開設しました。古代史、神話中心のブログです。

私の擬装請負体験⑧

シリーズ一回目から読みたい方はコチラ↓


  1. sakamotoakirax.hatenablog.com

実は私は、Mくんに金を貸していた。貸したり返してもらったりで、金額は時々変動したが、当時は二万円くらいだったろうか。
それまでは催促したりしていたのを、催促しないようにした。
当然、Mくんは連絡してこなくなる。
そのまま三ヶ月、放置した。
(なめやがって)
そうなることがわかっていながら、私は苛立った。
三ヶ月経って、メールを送った。
〈お前、俺を敵に回すつもりだな〉
ちなみに、この日は大晦日である。
しばらくして、メールが返ってきた。
私は、殺意に似た気持ちで、メールを見た。
〈お前?〉
〈そう、お前〉
と返信した。
〈お金ならちゃんと返しますよ。てか、お前はないんじゃないの?〉
(本題からずれてきたな)
いや、本題からずらそうとしているのは私の方である。さらに返信しようとしていると、向こうから電話がかかってきた。
「もしもし、どういうことよ、これ」
「どうもこうもないよ」
「金ならちゃんと返すってーー」
「金のことじゃないよ」
「え?」
「お前、俺がクリスタルグループをくびになった本当の理由を知ってるんだろ!だから今まで電話寄越さなかったんだろ!」
「ーー」
「『改善提案三案出したいから、副主任Jに電話に出るように言って』って言った時も、君は『改善提案は出さなくていい』って言って、それ以来俺に電話をしなくなった。君は俺がくびになった本当の理由を知っているから、俺がB社と渡りをつけようとするのを困ると思ってるんだ」
「だって、坂本くん辞めたんだから、改善提案出す必要ないじゃん」
(引っ掛かったな)
「必要だからじゃないよ。俺が出したいから出すんだよ」
「……」
「俺はR社にいるからさ、そうやって蚊帳の外に置かれちゃ困るんだよ」
「B社とR社は、別の会社じゃん」
「別じゃないじゃん、同じAグループじゃん。社長もおんなじ」
「だからってなんだよ!金なら返すって!!」
「わかってるよ。そうじゃなくて、俺がくびになった本当の理由を知ってただろうって言ってるんだよ」
「知らねえ!!てめえ頭おかしいんじゃねえのか!?」
「くっくっ……」
私は笑い出した。
「何がおかしいんだよ」
「嘘ついてる奴は、みんなそう言うんだよ」
「ーー」
「だから俺は、君が本当のことを知っていただろうって言うんだよ」
「ーー知らねえ!!もう切るぞ」
「逃げんのかい?」
「逃げるんじゃねえ!!こんな話聞いてられねえ!!」
「それが逃げだってんだよ」
電話は切れた。

その後も、Mくんとのやり取りは続いた。Mくんは金の話で押し通そうとし、私は私が辞めさせられた真相に話を持って行こうとする。
Mくんは金の問題を先に解決しようと思ったのだろう。
〈お金、返します。二万二千円ですよね?〉
と、金額まで明示してメールしてきた。
しかし翌日に、
〈すいません、今月お金ないんで、返済待ってもらえないですか?〉
と言ってくる。
私はたたみかけた。
〈君は三ヶ月滞納してるんだよ?ここは血を流す覚悟で、千円でも二千円でも返すべきなんじゃないの?〉
なかなかの取り立て屋ぶりである。
すると返済すると言って、場所を指定してきた。
場所は、ファミレスである。しかし中で二人で話そうと言うのではない。
Mくんには妻子かいる。家族でファミレスで食事をしている。
そのファミレスの駐車場に、指定された時間に私がいく。駐車場からMくんに連絡すれば、Mくんが店内から出てきて、金を渡す。
(敵もさるものと言うべきか)
私は駐車場で、やや除け者にされたような気持ちだった。
(さりとて俺だって、返済のためにたまの家族サービスを犠牲にしろと言う気はさらさらないしな)
借金の取り立て以上に重要なのは、あくまで不当解雇の証拠をつかむことであり、ひいてはB社に私の意向が円滑に伝わるようにすることである。
Mくんが店内から出てきて、私に二千円を渡した。
「今度飲みに行こうや」
私は言った。「心配しなくても、金のない奴から金は取らないよ」
しばらくしてまたメールで飲みに行く話をすると、
〈嫁が来たいって〉
との返信。
〈嫁は勘弁して〉
この日はこれで済ませたが、翌日、
〈先日の件、了解しました。いつ飲みに行きますか?〉
とメールがきた。
(どういう風の吹き回しだ?)
しばらく考えた。私は、Mくんが何らかの反撃に出たかと考えた。
(しかし経験上、こういう時の反撃は、本人が思ってるよりもつまらない手であることが多い。つまりーー)
〈嫁来んの!?〉
と返信すると、
〈来ません(*^^*)〉
と返信がくるのに二十分かかった。
(まあ、たまたますぐにメールを見れなかっただけかもしれないけどね)
基本的に、話は進展していない。Mくんとは、会えない状態が続いている。
(揺さぶりをかけてみるか)
〈そろそろ所長のくび取りにいきなよ〉
とメールした。つーか揺さぶりすぎ。
〈う~ん、俺はそういうの経験ないから、坂本さんに任せるよ。俺は自分のことで精一杯で、それどころではない〉
と当然の返信。
〈そう〉
と、私は返した。こういうのは、手早く鞘に収めるのがコツである。
(つづく)


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