坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

私の擬装請負体験⑩

シリーズ一回目から読みたい方はコチラ↓


  1. sakamotoakirax.hatenablog.com

Eは、私の斜め向かいに座った。
(どう、切りだそうか)
いざとなると、なかなか言葉が出ない。しかしそう思った次の瞬間、言葉が吹き出していた。
「ーーおい、偽リーダー、あんたが本当はリーダーだっていう噂があったな」
いきなり言い過ぎ。しかしEは黙っている。
「二千万の改善提案を知ってて、それを潰そうとしたのもあんただ。あんたは部署Cを一人占めしたかった。だから自分以外の奴を部署Cから追い出そうとしたんだ」
「そうだよ」
「ーーは?」
Eはにやにや笑っている。
「おい、お前、どういうつもりだ」
「どうもこうもないよ。俺がしてきたことの意味が、君に理解できなかっただけだよ」
「坂本さん」
Mくんが横から口を挟んだ。
「仮にも年上なんだから、お前とか言わないで」
(ちっ)
内心舌打ちしたが、私Mくんに同意した。
「わかったよーーEさん、あんたは所長に本当はリーダーに任命されていた。しかし俺があんたの悪事を所長にぶちまけたために、所長は俺にあんたが本当はリーダーだって言えずに、連絡係だってごまかした」
「ーー君がそう思っているなら、そうだよ」
(は?こいつ何上から目線なの?)
熱くなっていたものが、急速に冷めていった。
「いいっっぱいうらんでくれていいいよおおおう」
Eが言ったが、
「いや、あんたにゃ恨む価値もない」
と言うと、Eの表情が凍りついた。
「ま、クリスタルグループであったことをR社でぶちまけてやれば、クリスタルグループはR社に来れないから」
「ーーそれなんだけど、本当にクリスタルグループはR社に来れなくなるの?」
Mくんが聞いてきた。
「多分ね」
「やってみろ」
Eが言った。
「ほう、食いついてきたね。さっきまでの大人ぶったあんたはどこにいった?」
Eは黙った。
「俺をくびにするように画策したのも、あんただ」
「違う。君をくびにするように画策したのはN氏だ」
「余裕ねえなあ。『君がそう思うんならそうだよ』って言わねえのかよ」
「……」
「N氏に一体なんの動機がある」
「……」
「あの、そろそろラストオーダーになりますが」
店員が寄ってきて言った。
「あ、じゃあ日本酒で。Eさんは?」
Eも日本酒と言うので、お猪口を2つ注文した。
「せっかくEさんが来たんだから、ひとつ乾杯といこうやーー乾杯!!」
私が言うと、Eは歪んだ表情で杯を挙げた。
(あーめんどくせ)
私は横になって、
「しかしEさん、あんたにはプライドってものがないのか?」
と言った。
「プライドがないんじゃないよ。君のプライドが高すぎるんだよ」
「ああ、確かに俺のプライドは高いな」
「ぶわっはっは!!」
と、Mくんが笑った。
(そんなにツボにはまったか?)
店を出た。
「さあ帰るか、Eさんはーーあ、居ねえ!」
影も形もなかった。

しかし読者諸氏にはお気づきの方も多いと思うが、私は重大な失敗を犯していた。
それはもちろん、私がクリスタルグループのR社進出を阻止する気でいるのを、敵に教えてしまっていることである。
私については、クリスタルグループのR社進出が決定する前にR社で実情を話してしまえば済むが、Mくんはそうはいかない。
私は速攻で、Mくんに謝った。Mくんは気にしていないと言ってくれた。
あまりの大チョンボなので、私は今でも酒のせいにしている。
(こうなったら、早目にR社にぶちまけないと)
このことをR社のVさんに話すと、
「話すなら、総務に言え」
とアドバイスをくれた。
(なるほど、総務ね)
と思って総務室に入ったが、総務室内の空きデスクに、工場長が座っていた。
(大人しく工場長室に居てくれればいいのに)
R社の工場長は、どういうわけかその辺にいる。
いつもその辺にいるので、私は一度、事務員と間違えてタイムカードの押し間違いを直してもらうよう話しかけてしまったことがある。しかし、
(どうせなら、工場長に話した方がいいんじゃね?)
とこの時思い、工場長に話しかけた。
私は会議室に通された。総務課長W氏も呼ばれた。
(ああ、やっぱり総務課長に話すのね)
私はB社での一部始終を話したが、話しにくいことも出てくる。
それは、EとB社の正社員Dが、二人とも問題児だということである。回りを全部問題児扱いすると、
「ひょっとしてあなたが問題児なんじゃないの?」
と思われかねない。
正社員Dは、問題児過ぎて部署Cから外すという話もあった。Eのためにそれが阻害された話をしようとしたが、なるべく問題児が二人いるとは言いたくなかった。そこで、
「部署Cは請負なんで」
と、私は言った。部署Cを請負にするために、正社員Dを外さなければならないが、それがEのために阻害された、という論理である。
(B社は請負であるのを派遣に話していたし、同じグループ会社だから問題ないだろう)
と私は思っていた。しかし
「うん、そうだねー!」
と総務課長W氏が素っ頓狂な声を挙げた。
(ーー軽い?)
私は自分の失敗を悟った。
話を終えて、総務課長W氏が尋ねた。
「ーー坂本さんの話はわかりました。それで、坂本さんはどうしたいのですか?」
(きたな)
「いやあのーー私の話を、今後の参考にして欲しかったんですけど」
と少ししどろもどろになって答えた。
(「クリスタルグループを来させないでください」って言うと思ったのかよ!そんなへまはしねえよ!!)
全く調子がいいんだか悪いんだか。
(つづく)


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