坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

私の擬装請負体験⑪

シリーズ一回目から読みたい方はコチラ↓


  1. sakamotoakirax.hatenablog.com

「もしもし?お前、クリスタルグループを来させないようにしてるんだってな?」
B社での派遣仲間のXさんから電話がきた。
「俺もR社に行こうとしてたんだけど、俺も行けねえのか?」
Xさんは、私にこれ以上動くなと言ってきた。
(Eの野郎、しゃべったな!!)
私はジョッキのようなグラスを取りだし、氷をたっぷり入れて、焼酎をなみなみと注いだ。
それを一気に半分ほど飲み、携帯の電話帳を開いた。
なまはげ
と登録してあるところで止める。Eの電話番号である。もっとも電話したことは全くなかった。
そのEの番号にかけた。
「おお、おお……」
と、Eは喜んでいるのかよくわからない声を挙げた。これが私の怒りを煽った。
「お前、B社であったことをR社でぶちまけてやると言ったのを、Xさんにしゃべったな!!てめえがR社に来られなくなりそうだからって、こういうかたちで仕返ししてくるとはつくづくくだらねえ野郎だ!!」
「なんだと、俺がそういう奴に見えるのか!!」
「お前はどこからどう見てもそういう奴だよ。俺は所長に言ったよ。Eは組織を乱す奴だって。あの所長もお前ほどじゃないが、組織を乱す奴だ。お前またあの所長と連れ立って、今度はR社をめちゃくちゃにするつもりか?お前がR社に来ないって言えば、クリスタルグループはR社に何とか来れるんじゃね?お前はR社に来るなよ!!」
「お前、これだけは言っておくぞ」
「なんだ?」
「お前は寂しい男だよ、じゃあな!!」
と言って、Eは電話を切った。

クリスタルグループは、R社にやってきた。
「クリスタルグループが、R社に来ましたよ」
とVさんに言うと、
「ふーん、でももう会社違うんだから関係ねえだろ?」
と言われた。
(何でそう思えるんだろうねえ)
B社にいる派遣の仲間からの話では、「最初は5人で、その後30人体制になる」というものだった。
しかし蓋を開けて見ると、クリスタルグループの人員は二名しかいない。
しかも、クリスタルグループ以外に4つの派遣会社がR社に新規参入している。どの会社も、クリスタルグループと同じくらいの人数である。
(これでは、当面30人体制は無理だな)
私は、タイムガードの数で、新規参入の派遣会社の人員を数えながら思った。
(しかし……こうなったのは、俺がEに『お前が来なければクリスタルグループはRに来れるんじゃね?』と言ったからか?)
普通なら笑止な考えである。しかしこの考えには根拠があった。Eが「坂本くんが来るなと言ったから行かない』と言っている噂が入っているのである。
(最大で30人程度の派遣会社だからな。俺の力が通じないなら何を言っても聞かれないだろうし、Eが来ないことで、R社も規模を縮小してクリスタルグループを入れればいいと思ったのかもしれない。とすれば、俺はクリスタルグループを参入させないチャンスを、自分で潰したことになるな……)

ある時、家にクリスタルグループからの封筒が届いていた。
中身を見ると、ただの就職案内だった。
(所長の名前は入っているか?)
封筒をもう一度見た。ない。
(アホらし)
すぐに封筒をゴミ箱に入れた。
さらにしばらくして、昼食時に食堂に行くと、そこに所長がいた。しかもいつも私が座る当たりにいる。
しばらく考えて、私は所長から離れた場所に座った。すると所長は、私の方に近づいてくる。
(何でこっちにくるんだよ!!)
「ーーやあ、坂本くん久しぶり。今度うちもこっちに来ることになったんだけどーー」
と言って所長は私と目を会わせずに立ち去って言った。
(ーー何しに来たんだ?あいつ)
Mくんと会った時にこれまでの経緯を話すと、
「ーーEさんと、仲良くした方がいいよ」
と、Mくんは言った。
「え?ああ、あいつ逆恨みしそうだからな。俺を刺しに来そうだもんな」
「ま、まあ刺しに来るってのもあるけど、やっぱり人の恨みを買うようなことはーー」
「刺しに来たら返り討ちにすりゃいいさ」
「まあ坂本さんは強いからそう言うだろうけどーー」
(別に強くはないんだけどな、腕っぷしは)
と思っていると、
「実は、坂本さんをくびにしたのはN氏だから」
と、Mくんは以外なことを言った。
「ーーへ?」
「N氏は坂本さんに一生懸命教えたけど、坂本さんが出来なかったからN氏のプライドが傷ついたっつーか……」
「それはない。N氏は俺を部署Cに戻そうとしてたんだ」
Mくんには、二重スパイのようなところがある。このように時々仕掛けてくることがある。
しかし、私はそれでいいと思っていた。
(こっちの情報が筒抜けになるのがわかってるから、情報を操作できるしね。それにーー)
「ーーそうか、じゃあNじゃないか」
Mくんは呟くように言った。
(ーー俺を騙せないこともわかってるみたいだし)
(つづく)

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