坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。新ブログ「人の言うことを聞くべからず」+を開設しました。古代史、神話中心のブログです。

私の擬装請負体験⑭

シリーズ一回目から読みたい方はコチラ↓


  1. sakamotoakirax.hatenablog.com

Mくんは次第に私のことを、
「話し方が論理的ですね」などと評価するようになっていた。
私が離間の策を施してから、少しずつクリスタルグループから心が離れていったらしい。ある時、
「所長潰そうや!!」
と、Mくんが言ったことがあった。私なら所長を潰せると思ったらしい。
私は何も言わなかった。
(まだその時期じゃない)
クリスタルグループがR社に新規参入してまもなくであり、クリスタルグループは当初の予定より大幅に人員を減らしての参入となったが、その後特に問題を起こしたわけでもないのに、所長を追い詰めることはできなかった。

Mくんは私から金を借りており、また新たな借金もしたが、金を借りる要求の後に、
「やっぱりいいです。自分でなんとかします」
と前言を翻し、また金を借りにくる状況だった。
私はそこに、Mくんの誠実さを感じていた。Mくんは自分なりに、自力で生活を立て直そうとしていると思った。
私は節約気味の生活をしていたが、Mくんに金を貸しているうちに、次第に赤字になっていった。
私はそれでもいいと思ったが、ある時、小さな事件があった。
一人暮らしをすることになったのである。元々実家は兄夫婦の家で、いずれ私が家を出なければならなかった。
それまでは親の家で食費も入れないで暮らしていたが、これからは食事は自分でなんとかしなければならない。
学生時代、そして先物の会社で働いた時には、自炊などほとんどしなかった。だから私は、少なくとも最初は、絶対に食費がかかると思っていた。
「これから一人暮らしするから、しばらく金借りにこないで」
と、私はMくんに言った。
それからしばらくして、Mくんと連絡が取れなくなった。

(ひょっとして、Mくん辞めたんじゃないか?)
思い当たることが多かったので、そう思うとすぐにメールした。
はたしてそうだった。
「坂本さんから借りたお金は、必ず返します」
と、Mくんは言った。
「いやあ、まずは自分の生活を立て直すことを考えた方がいいんじゃないか?」
私は言ったが、Mくんは頑固だった。二年かけて、Mくんは私からの借金を完済した。

気になったのは、Mくんが辞めた理由である。
予想の範囲だが、やはり私とMくんが嘱託になる話は暗礁に乗り上げていた。
それだけではなく、くびになっていたEがB社にまた派遣された。EはB社をくびになったからR社に来ようとしたが、私に阻止されて、そのまま無職になっていた。
(俺への当てつけかよ)
さらにMくんが辞めた直接のきっかけは、Eがアパートを借りるのに、Mくんが保証人になるように所長から言われ、反抗して仕事をボイコットしたことだった。
(はあ…これはB社に行かないと)

B社に行って話を聞く。
(しかし、何の話を聞きにいく?)
B社に行って何をすればいいか、私はまったくわかっていなかった。
(辞めたMくんのため?違う。事情はどうあれ、Mくんは会社をボイコットした挙げ句辞めた。今さら俺が言ってどうにかなることじゃない。嘱託昇格の話がなくなったことか?俺達を昇格させるかは会社が決めること。会社の決定が下った以上、言ってもどうにもならない。B社に言うことは何もない。それでも俺は、B社に行かなければならない、そう俺の中の何かが行っている)
ある日、仕事が定時で終わる日を利用して、私は車でB社に向かった。
(つづく)

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