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坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。新ブログ「人の言うことを聞くべからず」+を開設しました。古代史、神話中心のブログです。

私の擬装請負体験(21)

シリーズ一回目から読みたい方はコチラ↓


  1. sakamotoakirax.hatenablog.com

10月15日朝、私はいつも通りにアパートを出た。
しかし会社には向かわずに、検察庁に向かった。
8時頃、私はΘ係長にメールを送った。
検察庁に行くので、会社休みます〉
まだ検察庁は開かないので、コンビニで時間を潰していると、Θ係長から電話がかかってきた。
検察庁に行ってどうするんだ?」
「擬装請負の告発をします」
「やめろ!!擬装請負なんかやってない。まだそんなことを言ってるのか!?そんなことを言ってるからくびになるんだぞ?」
「やってないなら、行っても問題ないじゃないですか」
「ーー勝手にしろ!!」
Θ係長はそう言って電話を切った。
「ーーさて」
検察庁が開いたので、私は中に入った。


失敗。


擬装請負の通報先は、検察庁じゃなかった。この頃、擬装請負の通報先は一般に知られていなかった。
(まあ、そのうちわかるだろう)
私はたかをくくって、次は弁護士を探すことにした。
なにしろ弁護士など探したことがないので、電話ボックスに入って片っ端から電話をかけた。
かけたところのひとつから県の弁護士会を紹介され、県弁護士会に電話すると、夕方に予約が取れた。
(まだ時間がある)
次は新聞社にに行くことにした。
アポ無しで断られるところを強引に押しきって編集長を呼んでもらい、事情を説明し、手持ちの資料を全て見せた。新聞社は、調査することを約束した。
昼食を摂ると夕方になったので、県弁護士会に向かう。
弁護士の紹介を受けたが、始めての弁護士との話はうまく進まず、結局電話ボックスで電話した時に、一番最初につながった弁護士を紹介された。
(二度手間じゃん)
欠勤は今日だけにして、明日は会社に行こうと思っていた。くびにされた時に頻繁に休むと、敵がそれにつけこんでくるかもしれない。
もう時間がない。ダメもとで電話ボックスからもう一度電話して見ると、なんとか翌日に予約が取れた。
(今日できることは、一応やったな)
そう思った私は、会社に行こうと思った。会社がどうなっているか、様子を見るためである。
(なにしろ今日会長が来てたからな)
どうなったか、気になる。
R社に行き総務室に入り、W課長と話しをしたが、たいした情報は得られなかった。
(ちょっとカッコつけすぎかな)
私は家に帰った。

10月16日。
会社の食堂に入り、朝礼までの時間を過ごしていると、W課長をはじめ、管理職の人達が談笑していた。みんな屈託なさそうに話している。
(よくやるもんだ)
私は談笑する人達のそばに座った。
挑発のためではない。
今まで言ってなかったが、その場所は私の朝の定位置なのである。
一番楽しそうにしているのは、総務職員のU氏である。
U氏はタバコを吸っている。
見ると、U氏の使っている灰皿が、U氏の手元から遠い。
私は自分の手元にある灰皿を、U氏に近づけた。
「ーーこれはこれは」
U氏はややおおげさに言った。
(ーーたいした役者だよ)
朝礼の時間になった。
「今日、私は定時で上がります」
私は言った。弁護士のところに行くためである。
弁護士に相談して、解雇理由通知書というのをもらうように指導された。もちろん解雇理由を明確にするためである。
家に帰ってさっそく、営業Sに解雇理由通知書を出すように求めた。
「解雇理由通知書は出せない」
と、ふざけた解答が返ってきた。
「弁護士が言ってるんだから、出せるでしょう?」
「いや出せないって」
と話が噛み合わない。あげくに、
「Vさんにも聞いたよ『坂本を褒めたことは一度もないって」
と言い出す始末。人を褒めるのは、Vさんの最大の長所である。
さすがにぶちギレ、
「なんでもいいから書いてください!!」
で押し切った。

10月22日。
この間にも、営業Sとのやりとりは続いていた。
「なんでもいいから書け」
では解雇理由通知書でない書類を出す可能性があるので、改めて解雇理由通知書を請求したりした。
しかし、私も疲れていた。出版社からの話も、
「落ち着いてから」
という理由でしばらく保留にしたが、そのことを営業Sに話したりしていた。このことが、人の悪意をどれだけ増長させるかに、私の考えは至らなくなっていた。
そんな中、
(おかしい……)
作業をしながら、私は思った。
私の部署に、人が来なくなった。
(これは、あやしいぞ)
昼過ぎになっても、人はこない。
(ーー何かが進行している。先回りして手を打たないと)
どうすべきか、考えた。
(『この会社は擬装請負をやってる』と吹聴して回る、それしかない。必ずいい結果が出るとは限らないが、何もしないよりましだ3時の休憩のときに)
3時になった。
「Q社の方が来ているので、こちらに来てください」
W課長が、声をかけてきた。
(しまった!!出遅れた!!)
W課長の後をついて行くと、社長室に入った。
(社長室?)
部屋に社長はいない。
「Ωと言います」
と、そこにいた男は言った。隣にSがいた。
W課長は、中に入らなかった。
「これが解雇理由通知書です」
Ωはそう言って、一枚の書類を渡した。
私の解雇理由は、
1. セクハラ・ストーカー行為により、職場の風紀を乱したこと
2. 自己の職責を逸脱し職制を無視し、派遣先に対し同業他社の新規参入を断るよう進言したこと
とあった。
私の作業能力については、一切書かれていなかった。
私は、考えを整理しようとした。
「ーーペンを貸してください」
「いいえ、それはできません」
(できない!?)
「坂本さんは今日付けで解雇となり、即刻工場を立ち去って頂きます。坂本さんは職場の秩序を乱す、大変危険な存在です。もう少しもこの工場に置いておくことはできないと、工場側から言い渡されました」
「職場の秩序を乱しているのは、あなた達でしょう?T部長や他の人達と話をさせてください!!」
「いやいや、もう少しもこの工場に置いて置けないと、工場側から言われてますんで」
(なんだとーー)
「正式な手続きは、11月5日に行います。健康保険証は、その時まで持っていてください」
(健康保険証を持っていろ?)
引っかかったが、そこを追及する精神的余裕は、私にはない。
この後ロッカー室に行き、荷物を全部取り出して、駐車場へ向かった。
Sが、私のそばに張り付いている。
途中、私のいた作業場の前を通りかかった。もう既に、私の作業を他の人がしていた。
駐車場に入り、私は自分の車に乗った。
Sを睨み、車を動かした。
(ーー畜生!!)
路地といっていい二車線の道路を、私はスピードを上げた。
そのスピードのままで、T字路に入ろうとした。
横から車が来て、私はブレーキを踏んだ。
二台の車はぶつかる直前で止まり、私は少し車をバックした。
横からきた車は、そのまま走って行った。

「何があったんだ!?」
後で、Vさんから電話があった。
「くびになりました」
「お前、どんな会社の秘密を知ってたんだ?」
「擬装請負です」私は答えた。

この後、労働基準監督署などにも行ったが、擬装請負については、
「我々の管轄ではないので」
と答えるだけだった。
「なら、どこが管轄なんですか」
とは、私は聞かなかったと思う。ただ少なくとも、当時の労基署は擬装請負の通報先を、自分達からは言わなかった。
(擬装請負の通報先はどこなんだ!?)
法律や役所の仕組みを理解して行動するのは、不慣れな者には大変なことだ。この後も、裁判所に話をしに行くなどの迷走を続けた。
突破口が開けたのは、就職活動もしなければと思って、ハローワークに行った時のことである。
色々手続きをしていて、
(おや?)
となったのは、私がまだ、Q社に籍があるのが、ハローワークの調べで確認された時である。
「ーーどういうことですか?」
私は聞いた。
「わかりません」
職員は答えた。この時せめて、
「おかしいですね」
と言って欲しかった。しかし私は、
「擬装請負の隠蔽のためにくびになった」
と話すと、
「擬装請負の通報先は、労働局職業安定課です」
と言われた。これで気持ちがそっちに行った。

職業安定課で、私はQ社との雇用契約書を見せたが、
「これは、派遣の契約書です」
と、職員に言われた。「契約書などを見て、『これは擬装請負じゃないか』と思わせるものがないと、我々は動けないんですよ」
(やっぱりか)
「会社控は請負の契約書でした」
と私が言うと、
「なんでそんなことをするんですか?そんなことをしたら、もっとまずいことになりますよ」
と職員は答えた。
(『もっとまずいことになる』か。なんとかそれを証明できれば……」
私はAグループのふたつの会社で、擬装請負に巻き込まれたことを話し、クリスタルグループの契約書も見せた。
「ああ、これは確かに請負の契約書だ」
一目見て、職員は言った。しかし字の消えた書類ではそれ以上話が進まず、二枚の契約書のコピーを取っただけで終わった。

11月5日。
Q社の営業所に行って、10月23日からこの日まで、「会社都合の休業」だったと、Ωから説明された。
(ーーやられた!!)
即日、即時解雇は、労働基準監督署の許可がなければできないことは、後になってわかったことだった。
(もう何も打つ手がないのか!?)
私は、手持ちの会社関係の書類を漁った。
(ーーあった!!)

労働局職業安定課で、私はふたたび職員と面談をした。
「これは、ハローワークでのQ社の求人票です」
一枚の書類を見せて、私は言った。「ここに、業務請負と書いてあります。この求人票でR社に派遣されましたが、『坂本さんの適性を考慮して』と言われ、求人票の部署とは別の部署に配属されました」
「ーー配属されたのは、この部署ではないんですね!?」
職員が言った
「そうです。ここまでは問題ありません。私の配属された部署が擬装請負をやってる証拠にはなりませんから。しかし」
と、もう一枚の書類を見せた。
「これは、R社の組織図です」
R社に派遣された初日に、総務職員のU氏からもらった組織図だった。
「この組織図には、正社員と外部社員の配置がすべて記されています。しかしすべてが外部社員で構成されている部署、つまり請負の部署が、この組織図にはひとつもないんです」
「……」
職員は、長いこと二枚の書類を見続けていた。
「ーーコピーを取らせて頂きます」
と言って、職員はコピーを取った。
「調査をするときには、連絡をもらえますか?」
私が聞くと、
「だめです。これは会社のプライバシーになりますから」
職員は答えた。
「調査をするかどうかも?」
「そうです」
こうして、面会は終わった。

次回、まとめに入る。

古代史、神話中心のブログ「人の言うことを聞くべからず」+もよろしくお願いします。