見えない世相②~ネガティブな誠実さ - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」
で、「一生ひとつの会社で働きたい」が半年の間に60%から30%に下がっていることについて、これは若者の、ひいては日本の職業観形成の失敗である。
就職直後に「一生ひとつの会社で働きたい」と答えているのは、学生時代にその考えを育てているからである。
それが半年で半分が転向するのなら、転向した新卒はどれだけフレキシブルに動けるようになるのだろう。
新卒の待遇が悪いわけではない。資料を取りそびれたが新卒の待遇は非常に良くなっている。
で「調査・研究」「新入社員意識調査」と見ていくと、新卒の意識にちぐはぐな印象を受ける。
年功序列での昇格を望む割合 42.3% 【過去最高】 良心に反する手段で進めるように指示された仕事であっても従う 45.2%という数値を示したのに対し、
「働く目的」では「楽しい生活をしたい」が増加(昨年度37.0%→41.7%)し、過去最高を更新した。「自分の能力をためす」は(昨年度13.4%→12.4%)過去最低を更新。「社会のために役立ちたい」も3.2ポイント低下(昨年度12.5%→9.3%)
と、個人主義的傾向を持ちながらも「自分の能力を試す」は減少である。
「良心に反する手段で進めるように指示された仕事であっても従う」人は増えても、自分の時間が無くなるのは嫌な人も増えている。
そして日本生産性本部のサイトから、「一生ひとつの会社で働きたい」という項目が消えている。来年度以降は、この項目がアンケートに含まれない可能性が高い。
「年功序列での昇格を望む」という設問はちょっとずるい。 この設問は、「一生ひとつの会社で働きたい」という設問にあるような、徹底的に理不尽さに耐える覚悟を問うていない。
設問の意味が希薄化しており、既に「一生ひとつの会社で働きたい」という人が減少し、ストップをかけられなくなったことを示すものでしかない。
今の教育システムでは、「一生ひとつの会社で働きたい」という考えが学生時代に形成されるのは必然なのだろう。
しかし個人主義の進行が若者の意識を分裂させ、就職後早い時期にこの考えを崩壊させている。
ならば教育システムから終身雇用にあこがれを抱かせるような要素を排除し、個人主義を育てるようにした方がいいのだろう。
もっとも今の若者の一番の心配は、非正規に落ちることだろう。だから非正規の待遇の改善して、学生から社会人まで一貫した職業観を持っていけるようにすべきであろう。
以上の会社に対する新卒、ひいては社会の意識の変化は、「尊敬する人」にも影響を与えているようである。
には3つのランキングが載っている。
ひとつはgooランキングで、一位が「親」である。しかし近年まで、若者が父親を尊敬していると言われていたのに対し、父親か母親かはっきりしない。
しかも二位に「尊敬する人いない」がきている。一位との間に三倍近い差があるとしても二位である。
二番目は高校生向けのアンケートで、一位が「特になし」、二位が「母親」となっている。
三番目は親世代向けのアンケートで、一位が母親である。
3つのアンケートのうちひとつも、「父親」が尊敬する人の一位になったものはなかった。
「父親」は、家庭内の社会の象徴である。会社への忠誠心の低下は、「父親」の存在感をも低下させた。
日本人は父親を尊敬していない。
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