昨年の安保法制で一時支持率を下げた安保政権は、それほど間を置かずに支持率を回復し、40%台を維持している。
一見安定しているかに見える安倍政権だが、既に陰りが出ているというのが私の読みである。
と
橋下徹は必ず復活する - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」
で述べたが、現在その読みは外れ、安倍政権は高支持率となっている。
この読み違いの理由のひとつは、フィリピンのアメリカ傘下からの離脱、トランプ政権誕生などの、海外情勢の急速な変化によるものである。
もうひとつの理由は、去年の参議院選で、改憲派が衆参ともに3/2を占めたことにある。
日本の政治は、表面上の論争が経済であれなんであれ、真の論争が護憲と改憲の論争だった。
それは前回の参院選が、経済的に評価できない自民が経済を理由に勝利したことにも良く表れている。
前回の参院選にも、ひとつの仕掛けがあった。安倍首相は「憲法改正を議論する」と述べ、民進の岡田代表が「議論の内容を明確にしろ」と迫ったのを、安倍首相はスルーした。
護憲と改憲は潜在的な対立なだけに、より表面化させようとした方が不利になる。こうして民進は議席を減らした。
改憲の発議が可能となった現在、国民の多くは国民投票となったら、賛成に投じなければならないと考えている。
しかし一方、改憲をなるべく先送りにして欲しいとも思っている。 つまり護憲は何らかの正しさがあるよりも、間違いを積み重ねてきたものだから変えたくないのであり、改憲は国民にとって断罪となっている。
そしてその罪の意識が与党を下支えしている。
つまり改憲派が3/2を割り、野党が逆転勝利する可能性は絶望的で、これほど護憲が叫ばれなくなった現在では、護憲を基盤にした野党の存在意義が無くなり、衰退、あるいは壊滅するかもしれない状況にある。
もちろん労働組合などの支持団体をもつ野党は、ある程度の勢力を維持するだろうが、安倍政権はこの点でも手を打ってある。
労働組合を通じて、正規労働者が野党を支持層にしているのに対し、非正規労働者は政党につながる団体を持っていない。
必然的に非正規労働者は無党派となり、政治に影響を与えにくくなっている。
長年政府が消費税の値上げに取り組んできたのは年金を維持するためだが、非正規労働者は増税に耐えられない。
だから増税するためには、非正規労働者の所得面での改善が必要なのだが、非正規労働者が政党につながらないのをいいことに、この点は放置されている。
必然的に、政府は増税を断念した。
そして増税の代わりに、年金が減額された。
こうして、安倍政権は野党を共犯者にしたのである。非正規を切り捨てた野党には、年金の額を元に戻す力がない。
力のない野党は衰退せざるをえず、また情勢の変化で非正規が組織化されることがあれば、野党の受ける打撃は壊滅的である。
そして、安倍首相は最長2021年まで首相を務めることができる。 改憲をうたわれながら改憲発議がない状況が4年も続けば、安倍首相の後に誰が首相になっても自民政権でやっていける。それだけ野党は力を失っている。
この状況で議席を伸ばせるのは、最初から改憲派で、自民に対し是々非々の対応を取り、護憲vs改憲の潜在的な対立から自由な維新くらいだろう。なお共産党は、他党のように個別的自衛権に流れなかったことで、野党に勝ったのである。野党から奪うパイが無くなれば、共産党も衰退していく 。
野党が壊滅し、自民一強の構図は不健全極まりないが、有効な対応策はほとんどない。
戦後一貫して護憲でやってきた野党が、今さら改憲に鞍替えできるはずもなく、衰退、消滅するのを止めることはできない。
ただ改憲派がいる民進は改憲への切り替えが可能だが、護憲の蓮舫代表がいる限り改憲に踏み切れないし、改憲への切り替え自体、痛みを伴わないわけではない。
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