坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。新ブログ「人の言うことを聞くべからず」+を開設しました。古代史、神話中心のブログです。

日本型ファンタジーになった『GODZILLA 決戦機動増殖都市』(ネタバレあり)

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予告を見た時から予想していたが、『GODZILLA 決戦機動増殖都市』で、アニメゴジラ三部作は日本型ファンタジーになった。 「我々人型種族こそが、ゴジラと呼ばれるに至らなくてはならん」と言っている時点で予想がついて、今回はその確認のために映画を観てきた。 

で、その通りでした。おわりwww 

だと話が短いので書き足さなければならないが、それには今まで触れていない部分にも触れる必要がある。

 

 日本型ファンタジーは、当初私が思っていた以上に構造が定式化している。

 日本型ファンタジーは、序盤から中盤、作品によっては終盤近くまでを「窮迫」と「不信」で構成される。 わかりやすいのが『進撃の巨人』(以下『進撃』)で、巨人に攻め込まれて人間が次々と食われていくのが「窮迫」である。

 『アイアムアヒーロー』では知人やその他何でもない人が次々と襲ってくる。 

亜人』は「窮迫」の性質を良く示している。 亜人と知られた永井圭は人々に追われるが、個人が追われる程度のことは、「窮迫」の表現としては足りないのである。 

「窮迫」の表現のために、亜人の再生能力を利用した拷問が行われる。個人が集団の死や苦悩を代行するのである。 

『東京喰種』は6巻までは日本型ファンタジーと言えないくらい生ぬるいが、カネキが拷問を受けることでガラリと世界観が変わる。 

 

「不信」は『進撃』のアニ、ライナー、ベルトルトが次々と裏切ることで構成される。 エレンは疑うことに抵抗し、裏切られたことに傷つきながら戦うが、最後に「平和主義」というラスボスが現れ生きる気力を失う。

 『アイアムアヒーロー』では鈴木英雄のアシスタント先のチーフアシスタントの三谷が、ZQN化した仲間を返り討ちにしていくが、三谷はそれを楽しんでいる。

 逃げ回る中でZQNに噛まれ、「生きてるって気がしたんだ」と言ったところで、墜落した飛行機に頭を吹っ飛ばされて死亡する。

 三谷は、鈴木英雄の分身である。 鈴木は富士の樹海まで逃げるが、携帯のバッテリーが切れて闇に脅える。 

亜人』では、永井圭が中野や他者へ不信を振り撒いているが、それが自分自身への不信に変わっていく。

 『東京喰種』の「窮迫」と「不信」は何度も繰り返される。最初の「不信」は芳村への不信だが、それも自分への不信に変わっていく。

 「不信」は他者への不信から自分への不信に至るのが、日本型ファンタジーの定型である。

 てこれ、2、3日前に気づいたんだけどねwww 

『怪獣惑星』でくじら座タウ星eに移住しようとした揚陸艇が爆発したのは、ストーリーの伏線ではおそらくなく、「不信」を構成するためのものだと思う。

サカキ・ハルオは仲間を疑った自分を疑い、『決戦機動増殖都市』ではゴジラと戦ったことに疑いを持つ。

 

 『決戦機動増殖都市』で、全ての生物がゴジラになろうとし、全ての生物がゴジラに奉仕しているという。

 これは、『アイアムアヒーロー』の「巣」の発展型である。 「巣」は「女王蜂」の意思で動くが、「巣」の中には強い同調圧力があり、同調しないものははじかれている。 

アイアムアヒーロー』の「巣」も、「個にして全、全にして個」という、『風の谷のナウシカ』の王蟲の発展型である。

 そして今回登場したメカゴジラの残骸は、増殖して都市を形成している。 

メカゴジラはナノメタルでできており、ナノメタルは自律思考金属である。さらにナノメタルは、接触した金属と同化する。 金属だけでなく、人間とも同化する。 まず始めに、合理主義的種族のビルサルドがナノメタルと同化していく。 

ビルサルドは不眠不休でゴジラとの戦いの準備を進めていくが、戦略的失敗も犯している。「増殖都市」はゴジラに見つからないように、特種な霧を発生させていたが、ゴジラとの戦いの準備にエネルギーを回すために、霧の発生を止めるのである。

 「増殖都市」は自律思考により進化する。

『GODZILLA 怪獣惑星』 - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

で感じた、私の直感は正しかった。

個体での進化の否定が『決戦機動増殖都市』のテーマに組み込まれている。 

作戦通りに事が進んでも、ゴジラを倒せない。ビルサルドの提案は、ナノメタルと同化した上での戦闘機ヴァルチャーでの「特攻」だった。

 これは合理主義とは言い難い。合理主義に似せた、人間性の否定を意味していると思う。 

ゴジラと「増殖都市」は、ほぼ同じもののように見えて、わずかに違いがある。

 『怪獣惑星』のゴジラは、植物から進化したゴジラアースの亜種だという。 ゴジラを頂点とした生態系には、同調圧力がなく、むしろ超人思想の反映と見るべきだと思う。 対する「増殖都市」は、合理主義に似せた同調圧力と「進化」を同じものとしている。そして「増殖都市」の力でゴジラを倒してはいけないとしているのである。 

今後のヒントとしては、今回登場した人類の末裔の「フツア」が鍵となるだろう。 

「フツア」には虫の遺伝子が混ざっているという。『テラフォーマーズ』である。どの道を選択しても、「人間=怪物」の構図からは逃れられない。

 

 ヒロインのタニ・ユウコは、ビルサルドの提案によりナノメタルと同化しそうになり、ハルオが指令部を破壊して同化を止めるが時既に遅く、ユウコは死ぬ。

 この悲劇的展開は、実は日本型ファンタジーにおいては頻繁に見られる展開なのである。 

ユウコが何者かを判断する情報は少ない。ビルサルドが造ったヴァルチャーと相性がいいこと、ハルオが「フツア」の双子の巫女に好意を見せると嫉妬したこと。機械に囲まれた環境が落ち着くこと。ビルサルドの判断に同意したことである。

 これで充分に判断できる。ユウコは「世界の運命を決めるヒロイン」である。 

ナウシカ』や『まどかマギカ』で活躍した「世界の運命を決めるヒロイン」は、男が活躍するようになると二つに分化した。

ひとつはそのまま「世界の運命を決めるヒロイン」の属性を維持したが、分化した方は「見棄てられたヒロイン」となった。

 「見棄てられたヒロイン」は、『君の名は』の宮水三葉、『僕だけがいない街』の雛月加代、『東京喰種』の霧嶋菫香、笛口雛実、カナエ・フォン・ロゼヴァルト、『進撃』のミカサ、『いぬやしき』の渡辺しおんなどである。

 彼女達には「見棄てられた」印が必ずついている。そして誰に見捨てられたかといえば、根本的には父親に「見棄てられ」ている。

 一方の「世界の運命を決めるヒロイン」は、あるスクールカーストと同一化した。それが「クィーン・ビー」である。

『進撃』のヒストリアは巻末の『進撃のスクールカースト』ではまさに「クィーン・ビー」であり、『アイアムアヒーロー』の早狩比呂美は「女王蜂」である。『東京喰種』の芳村エトは、相当に「クィーン・ビー」の性格を発揮している。

 「世界の運命を決め」ずに、「クィーン・ビー」として登場するキャラもいる。『君の名は』の奥寺ミキ、『東京喰種』の伊丙入、『いぬやしき』の犬屋敷麻理などである。 

「世界の運命を決めるヒロイン」と「見棄てられたヒロイン」の区別は必ずしも明確でなく、ヒストリアもクリスタ・レンズとしては「見棄てられたヒロイン」である。どちらも「見棄てられ」ており、救済の対象だが、救済には優先順位があり、特に両者が対立すると、「クィーン・ビー」は報復を受ける。『君の名は』に、ストーリー上必要のない奥寺ミキが登場するのはそのためであり、奥寺ミキは瀧に「フラれた」のである。 

『決戦機動増殖都市』では、ユウコが「フツア」の双子の巫女と対立した。彼女達が「見棄てられたヒロイン」であり、ユウコはその報復を受けたのである。

 もっとも逆のパターンもあり、『いぬやしき』では犬屋敷麻理が救済され、渡辺しおんが救われない。それは『いぬやしき』が、父親復権の物語だからである。ならば父親復権の話でない他の日本型ファンタジーは…?

 

 次作『星を喰う者』では、エクシフを滅ぼした、ゴジラでさえものの数ではないという、「ギドラ」が地球に飛来する。そして「フツア」が守っていた卵「モスラ」も。 

 

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