坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

GODZILLA 星を食う者(ネタバレあり)

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前回、

日本型ファンタジーになった『GODZILLA 決戦機動増殖都市』(ネタバレあり) - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

でギドラとモスラの名前を出したが、書いた後、少し後悔していた。
『決戦機動増殖都市』でメカゴジラが登場すると触れながら、結局メカゴジラの形態にならなかった時から、薄々わかっていたのである。
昨今の多くのクリエイターは、懐かしのキャラを再登場させて消費者を喜ばせるようなことはしない。
そのクリエイターが懐かしのキャラを使い回す場合、懐かしのキャラを客引きに使っておいて、決してそのまま使い回さずに、むしろ消費者のノスタルジックな気分を削いで、消化不良のままにする。その理由は懐かしのキャラを使い回すように見せて、そこに盛り込むテーマの方が重要だからであり、さらに消費者のノスタルジックな気分を削ぐことで、過去への回帰を止めるためである。今日本の多くのクリエイターは、それだけ今の日本に危機感を持っている。
だから今回、モスラは登場しないんじゃないと思っていたが、テレパシーのシンボルのような形でも登場してくれて正直ほっとした。

私がこのように言うのは、

blog.monogatarukame.net

を読んだからである。

「大きな嘘はひとつだけ」というけれど、その法則を無視して最大級のヒットをした作品があるのを忘れたのかな?
もちろんその作品は『君の名は。』である。『君の名は。』の男と女の体が入れ替わる設定と男女の間に3年の時間差がある設定は、「大きな嘘が2つある」設定である。
「大きな嘘はひとつだけ」のパターンが多いのは、そのパターンがストーリーをシンプルにまとめられるからであり、そのパターンでなければ面白くならないというわけではない。
もっとも、アニメゴジラ三部作を面白いと思うにはテーマを理解する必要がある。

あれだったら3匹である必要あるんですか? しかも攻撃が噛み付くだけであり、ゴジラの攻撃は全て無効です……って小学生かよ!

 手遊びで攻撃されたら『はい無効!』ってのとレベルが変わらねえって!」

 

というように、カメ氏はテーマを理解しなかった。
でも本当に理解できなかったの?

「神を讃えよ、全ては献身の道へと続く」「さあ、伏して拝むがいい。黄金の終焉を」でわかるじゃん。ギドラが破滅思考そのものだって。
献身、つまり個人を大事にしないこと、それ自体が破滅思考を生むのである。
日本人は破滅思考が大好きである。『永遠の0』では特攻を礼讃しまくり、「働き方改革」で明日にも毎日定時で帰れる社会になるように語りながら、その中に派遣の権利が盛り込まれると社畜として死ぬ覚悟を決める。
これだけ破滅思考が好きなのに、いざ見せつけらると「さっぱりわからない」というのは、図星を指されたからじゃないの?
図星を指された時に「わからん!!」と言って議論を台無しにしようとするのは、日本人の悪い癖である。

破滅思考としてのギドラの表現は、実に分かりやすい。
実体を捉えられないのは、破滅思考を直視していないからである。だからハルオが「ここで諦めたら全てが嘘になる」「救いなど無くていい」という境地に達したことで、ゴジラがギドラを捉え、ギドラを倒す。

ユウコの扱いが雑だという指摘だが、

日本型ファンタジーになった『GODZILLA 決戦機動増殖都市』(ネタバレあり) - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

で述べたように、ユウコがクイーン・ビーだからである。
ハルオは最後に、動くようになったバルチャーでゴジラに特攻し、ゴジラの反撃で死ぬ。バッドエンドだが、これで正解なのである。アニゴジ三部作には、どの怪物になるかという選択がテーマとしてある。
「合理主義を装った人命、精神の軽視」=ビルサルド=メカゴジラ、「破滅思考」=エクシフ=ギドラ、「争いと憎しみの放棄」=フツア=モスラという三種の怪物があり、この三種が日本人の精神を表している。
それに対する「科学文明の極み=真の合理主義」がゴジラである。
前回、ゴジラを頂点とする生態系と『アイアムアヒーロー」の「巣」の発展系と述べたが、発展系であっても同一のものではない。
ゴジラは「超人」であり、生物が全てゴジラになろうとするこの生態系は、超人思想の表現である。
ハルオはゴジラに特攻する時に、一瞬笑う。
ゴジラゴジラたらしめているもの、それは君の憎しみなんだ」というメトフィエスの言葉、ハルオの精神とゴジラが連動したことを含め、ハルオとゴジラは同一になったと見るべきである。だからハルオが死んでも、ゴジラの勝利は正しいのである。
しかし日本型ファンタジーは、あくまで日本人の物語である。まだ旧人類とフツア、そしてその混血がいる。
彼らは「怖いもの」を火にくべる儀式を行う。
火はメトフィエスが「憎しみの炎」というように、憎悪を表す。フツアの民は憎しみの感情を覚えたのである。

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