坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

ドラゴンボールを考える⑫~「身勝手の極意」の正体

『DB超』のマンガ版の「未来トランクス編」も、アニメと同じで、トランクスに「未来を救えなかった」という屈託は感じられない。マイといちゃついてるトランクスを見て、「やーめた」と言う。

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と子供マイが言うのに対して子供トランクスが、

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と繰り返して言うのは、トランクスが「シリアスな世界観の中にいる」と思っていないからである。
さらに悟飯が「トランクスが未来を救った」と勘違いすると、現代に留まることが決まっていたのに「2、3日後に帰る」と言い出し、

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このトランクスはダメです。

このトランクスは、「未来を救うかどうか」より「未来を救えなかった自分」を気にしている。

青髪のトランクスにしたのは、おそらくこのダメなトランクスにするためだろう。
原作のトランクスはとにかく生真面目な青年で、現代では「お客さん」で終わったが、未来はきちんと救った。
しかし、現代のトランクスと環境の違いがあるとはいえ、性格が違い過ぎるのである。現代トランクスは、もっと根がちゃらんぽらんに見える。
青髪のトランクスは、環境のために真面目にならざるを得ないとはいえ、根がちゃらんぽらんな現代トランクスの性格を反映させたのだろう。それに合わせて、現代トランクスの髪もマンガでは青髪になっている。
未来に向かう(帰るではない)トランクスに、ベジータはアニメの爽やかな別れと違って、「トレーニングを怠るな、もっと強くなれ」と言っている。内心、トランクスに不満だったのだろう。

「宇宙サバイバル編」で、最初に消滅した第9宇宙の天使は、第9宇宙の消滅後、

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感じ悪っっ!!

に消滅した第10宇宙のクスちゃんの反応。

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第9宇宙の天使が印象悪いのもあって「クスちゃんマジ天使」とか言われてるけど、みんな人良すぎない?このコため息ついただけだよ?ちなみにクスちゃん一番人気だけど、兄弟の中で一番年上だよ?

他の天使は消滅時にしゃべらない。

第6宇宙のヴァドスシャンパの消滅を嘆きながら第7宇宙の席に移動www。

そして第11宇宙と対決する直前の第3宇宙が消滅する時、それまでピコピコいってただけの破壊神モスコ様が中から出てきて、

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出てきたかと思ったら竹を割ったような御仁で。そして消滅後の天使の反応は、

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第3宇宙の天使にとって、破壊神が顔を出してしゃべるのは良くないことらしい。
天使は破壊神に仕えているようで、破壊神は時々天使に行動を制約される。宇宙と共に破壊神が消滅しても、天使は消滅しない。なぜなら天使は「あちら側から来たガイドのようなもの」だから。
そしてこの印象の悪い天使達が、「身勝手の極意」を使え、破壊神は完全には使えない。それが『DB超』の世界観であり、「身勝手の極意」を理解する鍵である。

「力の大会」で、悟空はとうとうジレンと対峙する。
悟空は超サイヤ人ブルー×20倍界王拳で戦うが、ジレンには全く歯が立たない。
そこで切り札の元気玉を使うが、ジレンはそれを受け止め、弾き返してしまう。

元気玉に呑まれた悟空は、そのまま死んだと思われた。
ところが元気玉によって空いた大きなクレーターの中心から、悟空が立ち上がる。この時、悟空の様子が一変している。

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体が勝手に反応し、どんな攻撃も避けることができる技、「身勝手の極意」への覚醒である。
ここで「身勝手」のテーマソングというべき『究極の聖戦』が流れる。
歌っているのは串田アキラという人で、どういう人かわからなかったので調べてみたら、『宇宙刑事ギャバン』の主題歌を歌っている人で、結構な大御所である。
悟空はジレンと互角に戦うが、悟空の「身勝手」の効力が切れ、ジレンに弾かれる。
「この熱気…それがお前の限界だ」とジレンは言う。「身勝手」の効力が切れた悟空は、体力を著しく消耗していた。
その後フリーザに気を分けてもらい、

体力を回復しながら戦う悟空。www

この悟空の体力の回復の仕方が実にうまい。
第6宇宙のカリフラと、

戦隊ものにはまってる奴らを倒すために女ブロリーになったケール

相手に、回復でなくテンションが上がる形で動きが良くなっていき、一時的に超サイヤ人3にまでなるが、「やっぱ体力が十分じゃねえ」と言って一段階戻る。
それ後赤ゴッドで二人を圧倒するが、ポタラ合体したケフラに負けそうになる。そこで再び「身勝手が発動。
悟空有利と思われたが、重大な問題が発覚する。悟空の「身勝手」は、攻撃の際に考えてしまうので、十分な攻撃にならないというのである。
https://youtu.be/YvHvDS7VIm0
『究極の聖戦』の歌詞が全部入ってるのがこれだけだったみたいなんで張ったけど、「意味は無いさ戦うだけ」って「聖戦」で言う言葉かよ?
http://j-lyric.net/artist/a00111c/l0450de.html
他にも「身体ボロボロどこで止めりゃいいの?」とか「残酷な宿命を嗤え」とか、まー「残酷な宿命」なのは違い無いけど、極めつけは「やがて自我が無になるまで」である。
仏教には「無我の境地」があるとか、「そんなものは無い」という意見もあったりするが、それはともかく、「自我が無になる」ってのは死ぬってことじゃないの?って思ってしまう。
ともかくこの時は、攻撃力の弱さをゼロ距離のかめはめ波で克服してケフラを倒す。

その後の第7宇宙は、各宇宙との総当たりという感じで、体力を減らしながら戦い、ラストに第11宇宙と対決する。
しかし相変わらずジレンには攻撃が通じない。
「消えた宇宙を復活させられない」と自分を追い詰めたベジータが、ここで殻を破る。「身勝手」を会得する道を捨て、自分なりの進化を遂げたのである。

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超サイヤ人ブルーより青が強調され、瞳がとてもきれいで、


笑っちゃうくらいwww。

ベジータは目が濁ってるくらいが丁度いいんだよwww。
このベジータの進化は、ノブレス・オブリージュの表現であり、「身勝手」との対比である。
しかしこの進化も、ジレンを超えるものではなかった。
ベジータは僅かに残った自分の気を悟空に与えて脱落、立てないほどに消耗していた悟空は立ち上がってブルーに変身、ジレンと戦う。
その変身もすぐに解け、絶対絶命となった悟空の脳裡を仲間の姿がよぎり、三度「身勝手」が発動する。なおこの後何度か『究極の聖戦』がかかるが、「身勝手」中は全てインストゥルメンタルである。
しかし攻撃力が弱いという欠点は克服されていない。ケフラを倒した、「身勝手」で避けてのゼロ距離かめはめ波もジレンには通じなかった。
悟空の「身勝手」も駄目か、とみんなが思ったところで、ウイスが、

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なんかわかったようなわからんようなwww。
武舞台は既にバラバラで、ところどころに島が点在する状態。ジレンは悟空を島ごと攻撃する作戦に出る。攻撃は避けられても、そのうち島が無くなってしまう。
しかし悟空はただ避けるのではなく、拳圧でジレンの攻撃を防いでいく。悟空の攻撃がジレンのそれを押し返すようになっていき、ついに悟空の一撃がジレンに届く。
焦ったジレンは渾身の一撃を放とうとするが、それも悟空に封じられてしまう。

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「身勝手の極意〈兆〉」から〈極〉への移行である。
この構図といい、悟空の体力の回復の仕方といい、どうしても『聖〇士〇矢』(なぜか伏せ字www)を思い出す。
しかしだからダメなのではない。以前書いたように、体力の回復はずっと自然だし、この背中合わせの構図もそうである。
ジレンはよく相手に背中を見せるが、それは相手を戦闘不能にしてからである。
また悟空も「身勝手」で体が勝手に反応してくれるから、どこを向いていても問題ない。しかしこう『聖〇士〇矢』を想起させられると、「俺の方がずっと上手く描ける」と鳥山が言っているようだwww。

ジレンには過去のトラウマがあった。
悪党に親を殺され、師に就いて修行したがその師も殺され、仲間を作りその悪党と戦おうとしたが、悪党の強さに、、仲間はジレンを裏切って逃げてしまった。以来、ジレンは仲間を信じず、己一人を頼りとして強くなった。
しかし自分より強い者が現れたことでジレンのトラウマが目覚め、そのトラウマがジレンの真の力を呼び覚ます。
そんなジレンに対して亀仙人は、

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と悟空を評す。クリリンも、

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「そんな魅力が悟空にある」という。友情vs人間不信の構図である。
このあたりを見ると、友情を全面に押し出す『キン〇マン』(なぜか伏せ字www)を思い出す。
もちろん『DB超』は、『キン〇マン』よりずっと上手く描けている。悟空はただ一撃もらっただけで、『キン〇マン』のように友情で全てを解決してしまうようなものにもなっていない。
しかし友情は美徳であっても道徳ではないのである。
友情はただそこにあるものを「美しい」と思うだけである。しかし友情を道徳にしてしまうと人間不信=不道徳になる『キン〇マン』に限らず、友情を絶対化して人間不信を不道徳にしてしまうのが、主に80年代以降の日本のサブカルの潮流だった。

勝負ではなく精神的に追い詰められたジレンは、第11宇宙のメンバーがいる観客席を攻撃、悟空がそれを防ぐ。
仲間を攻撃するジレンに悟空が激怒。ジレンを後一歩で倒せるところまで追い込む。ところが、

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フリーザ!?

と俺も思っちゃったwww。悟空の体力が限界に達し、「身勝手〈極〉」が解けたのである。
ここで17号とフリーザが活躍。二人が戦っている間に僅かに体力を回復した悟空(それでも速い)が戦線復帰するが、ここでフリーザがごねる。

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フリーザが自分を生き返らせることの念押しを始めたのである。そんなフリーザに悟空は、

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「それはおめえが一番よくわかってるはずだ」と悟空。
悟空とフリーザってそういう関係だっけ?と思うがそれはともかく、フリーザが納得すると『究極の聖戦』が、しかもインストゥルメンタルでない方が流れる。


『究極の聖戦』は「身勝手」のテーマソングじゃないの!?

悟空とフリーザが共闘し、ジレンと3人で仲良く場外、17号が武舞台に残り、第7宇宙の優勝が決定。
17号は消滅した宇宙を復活させるように神龍に願いを言う。
実はそう言わなければ、優勝した宇宙も消滅させるつもりだったと全王。ちょっとそれ都合良すぎない?それじゃ苦労して優勝した意味全くないし、不条理を試練とする意味もないし、

「消滅した宇宙を復活させる可能性はあるが、それはハッピーエンドじゃない」と言った俺の立場がねえじゃねえか!!

フリーザはそそくさと地獄に帰ろうとするが、ウイスが「フリーザさんもハッピーになったらどうですか」と言ってフリーザを生き返らせてしまう。
これで悟空の約束ははたされた、じゃない。
悟空の約束は「地球のドラゴンボールフリーザを生き返らせる」である。しかしフリーザは一度地球のドラゴンボールで生き返っているので、地球のドラゴンボールでは生き返れない。
ならばナメック星のドラゴンボールでいい。何を使ってフリーザを生き返らせるかは問題じゃないといえばその通りである。しかしナメック星のドラゴンボールは使わなかった。
ウイスは悟空とフリーザの約束のためにフリーザを生き返らせたのではない。悟空と無関係に、自分の意志でフリーザを生き返らせた。
つまり悟空は、フリーザを生き返らせるために何もしなかったのである。

フリーザは騙されたんです。

あ、ちなみに「悟空が生き返らせた』って映画でベジータが言ってたけど間違いです。生き返らせたのはウイスです。

ここで思い出すのは、EDの『悪の天使と正義の悪魔』である。
「未来トランクス編」の後から入ったEDで「宇宙サバイバル編」にも少しかかっている。具体的には悟空vsトッポ戦までである。
https://youtu.be/MfPXEZTzc6Y
こんなEDだっけ?
確か真ん中あたりでウイスヴァドスが頭を抱えて飛び立っていって、最後に悟空も飛んでいく、つまり「天使の仮面被った悪魔達」の直前でウイスヴァドスが現れ、「世界が君を待ってるんだよ」で悟空が飛び立っていく、そういうEDだったと思うんだけど。

もうひとつ、いやもう二つ、ひとつはマンガの「未来トランクス編」での悟空ブラックの超サイヤ人ロゼのことである。
「死にかけから復活するとパワーアップする」というサイヤ人の性質を利用してブラックは超サイヤ人ロゼになったというが、これはおかしい。なぜなら悟空とベジータは限界まで鍛えており、死にかけ→復活→パワーアップはできないとトランクスも言い、ベジータも死にかけから復活してパワーアップしていないからである。ならば限界まで鍛えた悟空の体を乗っ取ったブラックもパワーアップしないはずだ。
実際には、死にかけから復活する度にザマスの精神と悟空の肉体が一体化していき、サイヤ人の性質はその媒介でしかないことがわかる。つまりブラックの体はサイヤ人のそれでなくザマスのものになっていくのである。そして「神が超サイヤ人ゴッドを超えると薄紅色になる」と言う。
もうひとつは、アニメの「未来トランクス編」の超サイヤ人ロゼである。

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とブラックはナルシズム全開で、ロゼが何なのかについての説明は一切無し。
実はこの前にブラックは「時のはざま」に吸い寄せられて現代に行き、悟空と一戦している。そして悟空の動きがブラックの体に浸透していき、ロゼに覚醒する。
マンガと逆に、ブラックに悟空に近づいてロゼになったのである。
ブラック版「身勝手」と言ってもいい。

「身勝手の極意」の正体、それは「大衆」である。それも「衆愚」そのものと言っていい。
「衆愚」そのものというのは、その核となる人間の特徴による。
よく「脊髄反射」のように議論する人がいる。
その人は反論するまでのスピードが非常に速いが、反論しているうちに矛盾だらけになる。
矛盾だらけだが、反論を受ける側は相手の反応についていけなくて議論に負けてしまう。
こういう人は大抵愚論を述べているのだが、大衆の意見は大概こういう愚論を述べる方に靡く。
それは確かに全ての反論に返しているが、矛盾だらけではしょうがない。
破壊神とは、そういう「大衆」の要望に答えるリーダーのことである。
こういうリーダーの存在は、人によってはかなり横暴で、その横暴さが強権タイプのリーダーのように見せる。
しかし破壊神は、「身勝手」を完全に使いこなせないのである。それは「責任」があるからである。天使は完全に無責任だから消滅しなかった。それが「あちら側から来たガイドのようなもの」という意味である。しかし「責任」を持たなければ上には立てない。だから破壊神に仕えている。

「力の大会」が終わり、ジレンはトッポに、「あいつはまた会いたいと言った。だが過去に囚われて生きてきた俺には、誰かと繋がりを持つことなどできない」という。
「ジレン、お前はそんな臆病な奴だったのか?あの時お前は俺達のために立ち上がった」

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とトッポ。


トッポとジレンも騙されたんです。

なお、マンガの「身勝手」は、アニメとは全く違うものである。
「宇宙サバイバル編」が終わっていないため、詳細は語れないが、二つ言えることは、アニメのような熱気を発していないこと、そしてマンガの「身勝手」は東洋の武術に影響を与えている「禅」の思想の体現だということである。
それは熱気とは逆の、非常に楽な精神である。司馬遼太郎の『竜馬がゆく』のサトリとキコリの話もまた同じものである。

古代史、神話中心のブログ「人の言うことを聞くべからず」+もよろしくお願いします。