坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

派遣社員の待遇が一歩前進した!

労働者派遣法第四十条の六。

労働者派遣の役務の提供を受ける者(国(行政執行法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第四項に規定する行政執行法人をいう。)を含む。次条において同じ。)及び地方公共団体特定地方独立行政法人地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。)を含む。次条において同じ。)の機関を除く。以下この条において同じ。)が次の各号のいずれかに該当する行為を行つた場合には、その時点において、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす。ただし、労働者派遣の役務の提供を受ける者が、その行つた行為が次の各号のいずれかの行為に該当することを知らず、かつ、知らなかつたことにつき過失がなかつたときは、この限りでない。

 

四十条の六の三。

第一項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提供を受ける者が、当該申込みに対して前項に規定する期間内に承諾する旨又は承諾しない旨の意思表示を受けなかつたときは、当該申込みは、その効力を失う。

 

つい最近労働者派遣法が変わったらしい。去年の7月に仙台高裁での裁判で準備書面を書いたが、その時四十条の六の三も引用しているがこのような文章ではなかった。いつ変わったのだろう?
四十条の六の第二項。

前項の規定により労働契約の申込みをしたものとみなされた労働者派遣の役務の提供を受ける者は、当該労働契約の申込みに係る同項に規定する行為が終了した日から一年を経過する日までの間は、当該申込みを撤回することができない。

 

ということで、四十条の六の一項に違反する者が派遣労働者に直接雇用の申し込みしたと見なされるとするこの条文に、一年時効が成立することになった。
めでたいことである。なぜなら2015年の改正前の派遣法では、派遣労働者がいつまでに直接雇用の申し込みをすればいいかについての規程がなかったのである。
改正前派遣法四十条の四。

派遣先は、第三十五条の二第二項の規程による通知を受けた場合において、当該労働者派遣の役務の提供を受けた第四十条の二第一項の規程に抵触することとなる最初の日以降継続して第三十五条の二第二項の規程による通知を受けた派遣労働者を使用しようとするときは、当該抵触することとなる最初の日の前日までに、当該派遣労働者であって当該派遣先に雇用されることを希望するものに対し、労働契約の申込みをしなければならない。

 

第三十五条の二第二項とは派遣労働者の派遣可能期限が近づいた時に、該当する派遣労働者の派遣可能期限の日を派遣元が派遣先に通知して、派遣可能期限を越えて派遣労働者直接雇用することなく同一業務に従事させることがないための規程である。こんなものは派遣元の通知など必要なく、派遣先が責任をもって管理すればいいだけの話なのだが、「派遣元から通知を受けなかった」などと派遣先が主張して、さらに「派遣労働者からの直接雇用の申し込みがなかった」と言われて直接雇用を求めた裁判をしても負けてしまうということがあり、私もそう言われて敗訴した。私は「四十条の四は派遣労働者と派遣先の相互権利義務規程」だと主張したが、裁判所はこの点に言及せずに相手方の主張を認めた。
四十条の六の第二項は直接雇用した雇用を撤回できるとも解釈できる。派遣法第四十条の二第一項の三。

派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの業務について、派遣元事業主から三年を超える期間継続して労働者派遣(第一項各号のいずれかに該当するものを除く。以下この項において同じ。)の役務の提供を受けようとするときは、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの業務に係る労働者派遣の役務の提供が開始された日(この項の規定により派遣可能期間を延長した場合にあつては、当該延長前の派遣可能期間が経過した日)以後当該事業所その他派遣就業の場所ごとの業務について第一項の規定に抵触することとなる最初の日の一月前の日までの間(次項において「意見聴取期間」という。)に、厚生労働省令で定めるところにより、三年を限り、派遣可能期間を延長することができる。当該延長に係る期間が経過した場合において、これを更に延長しようとするときも、同様とする。

 

厚生労働省令で定めるところにより」というところに注意しよう。「厚生労働省令」には労働者派遣法や職業安定法も含まれるが、これはこの条文に限っては厚生労働省令以外の法律は適用されないということである。四十条の六の第二項には「厚生労働省令で定めるところにより」とは書いていない。
民法93条。

意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

 

意思表示は取り消せない。派遣法四十条の六は「その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす」とし、意思表示と見なされる。
しかし「表意者の真意ではない」とした時にはどうなるか。
その時は職業安定法第44条が適用される。職業安定法第44条違反の罰則は一年以下の懲役又は百万円以下の罰金である。
また民法95条「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」を用いても職業安定法第44条違反になる。
しかし

派遣社員の権利は裁判で勝ち取れ - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

で述べたように、裁判で権利を勝ち取ることができないではないかと思うだろう。
それも心配無用である。「厚生労働省令」の範囲において、派遣可能期限の延長に合理性があるかを争う余地はある。
正社員と派遣社員の間に能力的な差はない。それなのに派遣社員が使われているのは安く使えるからである。一時的な不況によって安い労働力を使わなければならないというならともかく、派遣社員に回すべき賃金を正社員に回している状況が常態化しているようでは「合理的」とはみなされない。


古代史、神話中心のブログ「人の言うことを聞くべからず」+もよろしくお願いします。