坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

できない作業をさせられた時にどうすればいいか?

不作為の行為は加害行為である - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

で述べた工場以外にも、人が潰れるまで働かせる工場があった。

忙しい部署に立場の弱い者を置くと仕事が集中する。 - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

で述べた工場がそれで、そこであった仕事に端数処理というのがある。
その会社では一箱に製品を六個入れるので、六個に満たない製品が出てくることがある。その製品を端数棚に置き、その後の端数処理で六個以上になったら出庫する。トレーサビリティのため同じ製品でもロットNoごとに管理しなければならないため、書類作業がめんどくさい。
ところがある日、
「お前何で先入れ先出ししねえんだ!」
と言ってくる奴がいた。
(は?)
そいつは元管理職で、年齢制限によって管理職から外れた奴である。
(ど素人が何言ってんだ)
ある製品の端数が1だったとする。それに4を足すと5になり、6に満たないので出庫はされない。
先入れ先出しとは、この出庫されないものを処理するたびに出庫することである。先ほどの計算なら
1に5足せば6になり、さら5を足して合わせて10を入庫し、6を出庫したことにすれば先入れ先出しになる。
(面倒なことになった)
それまでは端数=入庫数で良かったが、先入れ先出しだと出庫に使った分+端数+在庫=入庫数となるので、計算が大変である。いや計算自体は簡単だが、計算する時間があまり無いのである。電卓はあったが、結局暗算でやった。すると
「出庫は0と書け」
と、さっきの先輩もどきの後輩が言ってきた。
(は?)
つまり先入れ先出ししない場合と同じように書類に記入しろということである。
(やる気あんの?)
バカバカしくなって先入れ先出しを止めた。すると今度は
「ロットNo.をひとつにしろ」
と他の班(三班二交代制なので同じ部署の人)からクレームがきた。
(は?)
ロットNo.とは、前々工程でつけられるNo.である。端数処理のたびに入庫数などとともに書く。だから端数ロットNo.がひとつでないことが多い。
(なぜ先入れ先出しをしないというクレームじゃない?)
私は他の班が先入れ先出しをしていないと思ったのである。
(これじゃトレーサビリティができねえじゃねえか)
それで私は先入れ先出しで端数処理をすることにした。
上司を動かして「出庫を0と書け」と言ってきたり先入れ先出しで出庫するわけねえぺ」とわけのわからないことを言ってくる平社員共を撃退し、私は先入れ先出しで処理を続けた多分一年近く続けただろう。
(もういいか)
と思った私は先入れ先出しを止めた。もう誰も文句は言ってこなかった。

またある時、現品票という書類の最終工程の記入で揉めた。
私は最終工程のひとつ前にいたので、最終工程の記入は私がするべきじゃないと言ったが、「端数処理をしてるのはお前だろ」と言われて、
「もう端数処理そっちにやってもらうじゃ」
と言った。
売り言葉に買い言葉だったが、この言葉がきっかけだったのだろう。最終工程が先入れ先出しをすることになった。

またある時のこと。
その工場では生産増の計画がそれまで何度か実施されていたが、その時も生産増の計画の話が持ち上がっていた。平社員共が不平そうな表情の中で、
「それはいいですね。やりましょう」
と私は言った。平社員共を忙しくして、パワハラをしないようにしようと考えたのである。
私自身の失敗は考えなかった。同じ仕事を7、8年やっていたので、私は多分失敗しないと思っていたのである。
ところが今回は勝手が違った。
他の人達が次々とクレームになりそうな失敗をするようになったのである。
(肉体労働で人の仕事量を増やすのはおすすめはしないが可能だ。仕事を可能な限り単純にすれば体が動く限界まで働かせることができる)
問題は作業量が増えているのに仕事を複雑にすることで、書類を書いたりする事務的な仕事を作業量が多い人にさせるのは基本NGである。日報はその時の作業内容を把握するのに都合がいいので私は自分で書くようにしていたが、他の書類作業はしない方がいい。
しかし私ははそれまでに端数処理などの手前のかかる作業を一度に二回行うなどの無茶なことを結構やらされていて、さすがに書類の書き間違えや異品混入(ある製品に違う製品を混ぜること)などをやっていた。結局処理に必要な時間が与えられていないからで、そうすると自分で見てるつもりでも見ていなかったりする。この見ない癖をつけられていたために一度だけ失敗した。
しかしその後、ピタリとミスはなくなった。
(まずいことになった)
と私は思った。端数処理を最終工程に押しつけたりして、なんだかんだで作業量が適正化されていたのである。だから作業に慣れてしまえばみんなミスをしなくなる。(しかし新人はどうだ)
人事異動で新人が入ればやはりミスをする。
私は新人のミスは許されるべきだと思うが、しかしそこは最終工程で、その後は取引先に行く。取引先には「新人だから失敗した」という言い訳は通用しないのである。
「これは新人は失敗しますよ。元の生産量に戻すべきです」
と私は前と逆のことを言ったが、会社は私の主張を認めなかった。

このような生産増計画が起こるのは、日本の国際競争力が低下する中で必然的に起こることである。終身雇用制の日本では人を減らせないので、生産量を上げて人を機械と同じスピードで働かせるようになる。
そしてまたこれは、全社会のAI化という「人が働かなくていい社会」という大きな流れの中で起こっていることである。その流れの先にはベーシックインカムで働かなくても人が給付を受けられる社会がある。今はその過渡期なのである。
私はそこでは派遣だったが、この流れの中で、大変な仕事を押しつけられるのは非正規が先である。そのような状況に陥った場合は、とっとと辞めてしまうのが一番である。非正規が大変な仕事を避ければ正社員がその役割をする。日本の国際競争力の低下はまだ歯止めがかからないので、さらに会社は生産増を行う。やがて正社員も耐えられない作業になる。やがて終身雇用制の崩壊という事態に至るだろう。その役割は正社員が担えばいい。

さて、端数処理はしなくてよくなったが、「ロットNo.をひとつにする」という悪習は残ってしまった。
日本の会社では、上の言うことに逆らって現場で勝手なことをして問題を生み出していく。そのようなことは記録に残らないので、誰がいつそのような問題を作ったのかわからず、会社も問題が起こってからしか対処できない。
(まあいい、もう俺の責任じゃねえ。今度クレームが起こったら元に戻すだろう)


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