坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

ロシアは中央集権を止め、ゆるやかな連邦制に移行すべき。

5月9日の対独戦勝記念日で、ロシアのプーチン大統領は戦争宣言をしなかった。
そのためロシアによるウクライナ侵攻は、ロシア国内では特別軍事作戦という位置付けになっている。ロシア軍の兵士が脱走しても、ロシア軍はその兵士を軍法会議にかけることができない。既にロシア軍全体で1/3の兵力を失ったという報道も出ているのに、中途半端な位置付けである。
ロシアはウクライナに武器供与などの支援を行うNATO諸国に対し批判をしてきた、もし戦争宣言を行えば、NATO諸国も敵に回しかねない。
ヒトラーユダヤ人の血が流れている」とラブロフ外相が発言し、プーチンイスラエルに謝罪するという一幕があったが、ロシアは決して一貫して強気ではない。
そしてウクライナ侵攻を特別軍事作戦と位置づけにしてしまった以上、今後ロシアがヨーロッパ相手に戦争を起こす場合(この想定自体非常に可能性の低いことだが)、ヨーロッパのどの国も戦争宣言をして攻めることができず、特別軍事作戦として実質上の戦争をしなければならないという状況にロシアは陥ったといえる。もちろんNATOを敵に回すことはできないし、NATO加盟国以外で、といってもモルドバしかないのだが、NATO加盟国以外の国を攻撃してもNATOが後ろ盾になって、その国を支えてしまう。もはやロシアはヨーロッパ相手に勝つことが永遠にできなくなってしまった。

さらにスウェーデンフィンランドNATOに加盟を申請した。
日本の左派はこの経緯についてよくわかっていないようだが、まずフィンランドは20世紀初頭までロシア領だった。第二次世界大戦でもドイツと手を結んで当時のソ連相手に戦い、独立を守ったという経緯がある。それでもフィンランドは敗戦国なので、戦争時の大統領リスト・リュティは戦犯として禁錮刑を受けた。フィンランドはロシアに責められれば戦うが、ロシアを敵に回さないように注意深く外交を行い、そのために中立を保ってきた。
スウェーデンはロシアに攻め込まれる位置にはない。それでも中立の立場を捨ててNATOに加盟を申請した。
その理由はこう考えればいいだろう。スウェーデンフィンランドEUには加盟しているが、NATOアメリカと歩調を合わせるのが嫌だったから加盟してこなかった。しかしウクライナ侵攻により、住民の虐殺や強制移住などの暴虐を知り、自分達の生活を守るために今回NATOへの加盟を決意したと。
北欧は福祉大国である。スウェーデンは仮に働かなくても生活が可能で、リベラルも徹底している。つまり国に生活を保証されて自由を満喫しているのである。ヨーロッパには左派政権が多いが、左派は平和な時には覇権的な存在には嫌悪感を持ちアメリカに反感を持ちがちである。しかしロシアのような横暴な行為には強く反発するのである。むしろ保守派の方が冷静な印象がある。ウクライナからの避難民には保守派は難色を示したが、反ロシアで沸騰した世論は避難民を迎え入れるのに肯定的で、保守派の意見に耳を傾けない傾向さえ生じている。そうなったのもヨーロッパでリベラルが隆盛を極めたからである。リベラルが安全保障で穏健とは限らない。自分達の自由が脅かされれば、保守派より強い結束を示して戦おうとしがちである。だから左派でも、オーストリアNATO加盟に動いていないが、その理由はオーストリアが北欧ほどの福祉国家となっていないからで、その分自由への希求が北欧ほどでなかったからかもしれない。左派なら穏健であるべきだと日本の左派が思うなら、リベラルというものを左派は理解していない。

マリウポリは陥落したとロシア側が報道しているが、ウクライナ軍はハルキウを取り返し、全体にウクライナ軍優位に戦争が進んでいる。最近ウクライナのゼレンスキー大統領は、「ロシア軍のウクライナ侵攻前までロシア軍を押し戻せば勝利だ」と言っているが、少し前まで「ロシアに与えられた損害は賠償金で補填する」と言っていた。
賠償金についてゼレンスキー大統領が言及した時、私はロシアが賠償金を支払わなければ、ウクライナがクリミアまで取り返すつもりだと思った。ここにきて賠償金の話をしなくなったのは、ロシアの軍人や外交官がウクライナ侵攻を批判し始めて、プーチン政権の基盤が相当揺らいでいるため、敢えて賠償金の話を抑えて、「賠償金を払えばクリミアに手は出さない」というサインを送ったのだと思っている。
賠償金という、第一次大戦でのドイツ以降聞いたことがないものに私が注目するのは、戦争が終結すれば、ロシアもウクライナも戦後の復興にかからなければならないが、ロシアに経済援助するのは中国が一番になりかねない。西側はウクライナへの援助で手一杯になり、ロシアへは援助合戦で負ける可能性が高い。そうなればロシアは中国の参加に入ることになる。これは日本にとっても脅威であり、援助合戦で競り負けるくらいなら賠償金で絞り上げた方がいいという、西側のコンセンサスが出来上がっているのではないかと思う。

この戦争は今年いっぱいで決着がつくと私は思っている。
この戦争でロシアは今年はGDP比10%程度のマイナス成長となり、来年以降も莫大な負債の償還に苦しむことになる。加えて賠償金も支払わされる公算が大きい。
ソ連崩壊後、ロシアは社会主義体制から資本主義経済にシフトするため、当時のガイダル首相代行が価格を自由化するというショック療法を行った。その結果インフレが進行し、当時のエリツィン大統領はショック療法を停止した。
エリツィンの後、KGB出身のプーチンが台頭し、ロシア経済を立て直した。この時は、私はプーチンを評価した。
しかしプーチンの元では、オリガルヒと呼ばれる振興財閥が幅を利かせるようになった。これは新たな統制経済である。ロシアでは常に「上からの近代化」がなされるが、「上からの近代化」は根本的に社会構造を大きく変化させないため、中央集権、統制的な体制が残ってしまう。

現在、中国はゼロコロナ政策により上海をロックダウンし、北朝鮮はコロナに対応しなかったため、ワクチンを打たれずに発熱者が3万人を越えている。そして西洋と多く価値を共有するロシアは西洋と同じ方法で乗り切ったが、その代わりにウクライナへの「勝てない戦争」に踏み切っている。
中国と北朝鮮、ロシアは中国と北朝鮮は真逆の対応、ロシアは戦争という別の問題だが、共通しているのは独裁である。中国はコロナの対応が西洋よりも早かったことが注目されたが、今やすっかり弱毒化したオミクロン株のために過激な対応を取り、北朝鮮はその弱毒化したコロナにより苦しみ、従来なら隠蔽してきたものを公開せざるを得なくなっている。

jbpress.ismedia.jp

つまり独裁は、誤った対応をした時に軌道修整できないのである。

ロシアの再生のためには、中央集権体制を改め、地方や企業、個人の裁量を増やしていかなければならない。ところがロシアは85の連邦構成主体からなる連邦国家なのだが、この連邦国家主体の上に、大統領の側近から派遣された大統領全権代表によって統治される連邦管区がある。
最近ウクライナ侵攻を受けて、自治体の長が五人辞職を表明したが、自治体の長も大統領が指名し地方議会が承認することで就任となる。このような非民主的な制度がロシアの地方自治を著しく阻害している。
この連邦管区を廃止し、地方の普通選挙を実施し、ゆるやかな連邦制に移行する。人々は権利を得ることで責任を持つことを学び、統制に服する精神から脱却を図っていく。そのようにしない限り、ロシア経済の再生はないだろう。

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