坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

岸田首相襲撃事件について

岸田首相が演説中に爆発物が投げ込まれた。

去年の安倍元首相が暗殺されたのに続いて2件目、また去年の宮台真司氏の襲撃に続いていえば、政治家に限らず著名人の襲撃、暗殺事件が3件も起こっていることになる。これは世界的に見ても、相当異常なことだと言わざるを得ない。

 

日本の歴史を紐解いてみよう。

現在、大河ドラマで『どうする家康』が放送されているが、家康は父の松平広忠、祖父の松平清康と二人が凶刃に倒れている。三河武士は「犬のように忠実」と言われ、家康が天下を取ったことによって三河武士の精神体質が日本人全体の精神体質になったと言われているが、その三河武士が、2代に渡って主君を殺したのである。

家康の故郷三河国の隣の尾張国でも、信長の父信秀の死後、信長の弟二人や叔父、守護の斯波義統が殺される事件が起きている。

尾張三河での暗殺事件、これは下剋上なのである。

源頼朝鎌倉幕府創立以来、武士の社会には常に、将軍権力に対する遠心力が働いていた。

源頼朝源義朝の嫡子だが、伊豆の流人に過ぎず、郎党数人を抱えるだけに過ぎなかった。その頼朝が挙兵後わずか9年で、鎌倉幕府という全国で最大の権門を作りあげるに至った。これはどう見ても速すぎる成長である。頼朝の勢力拡大の最大の要因は、御家人が多くの土地を与えたことである。

御家人達はより多くの土地を得るために、頼朝が義経などの弟を優遇することを望まなかった。そのため頼朝は、弟達を他の御家人と同等に扱わざるを得ず、一門で権力を固めることができなかった。代わりに姻戚の北条氏を重要視して、それが執権政治につながる。

源氏の滅亡後、北条氏は源氏将軍を立てず、北条一門で権力を握ることで御家人の欲望を抑え込んだ。すると武士道は頼朝の祖先の八幡太郎義家に遡って、その子孫の源氏を将軍にしたいという願望を生み出した。それが「源氏でなければ将軍になれない」という神話であり、事実と反する神話である。

北条氏は足利氏を源氏の嫡流に仕立て上げ、足利尊氏室町幕府を立てた。

足利義満足利義教の将軍権力の強化の努力も虚しく、将軍権力に対する遠心力は歯止めがかからなかった。そして応仁の乱で幕府権力が崩壊すると、将軍の権威により支えられていた守護大名の権威も衰えていく。そして門閥に依らない戦国大名が台頭する。これが下剋上である。

しかし下剋上は大名だけの気分ではなく、当時のあらゆる階層の人々が持っていた精神である。実力で成り上がる術を持たない下層民や身分の低い武士が下剋上の精神を発揮する時、主君を殺害する。

 

岸田首相は去年は何もしないということで支持率が高かったが、これは岸田首相が利権の保護者だったということを意味する。

日本には様々な利権があり、その利権が崩せない。

その利権はちょうど室町時代の諸大名の権力や公家や寺社の座に相当する。その利権が日本を分散型の社会にしている。

岸田政権は安倍元首相の暗殺後、安倍元首相の国葬を決定したことで支持率を下げた。

最近になって岸田政権の支持率が上がってきたが、その理由は岸田政権のリベラル寄りな政策だけでなく、ガーシー参議院議員の除名など、理不尽な措置によるものが大きい。しかも政権支持率が上がっているのに、与党の自民党の支持率は上がらない。

政権支持率が上がってきたと思った矢先の、この襲撃事件である。つまり現在、日本は応仁の乱の頃のように、利権により政権が解体する寸前にきているのだと考えられ、その裏では下剋上が進行しているのだといえる。

上念司氏が「テロリストには名前も与えない」と言っているが、それで事態を防げるかどうか。

「暴力から民主主義を守る」という声が多数上がっているが、しっくりこない。むしろズレていると感じる。

考えてみよう。「民主主義の敵」としてテロ行為を行うのは、昔は極左過激団体だった。しかし今はどうか?個人である。

安倍元首相を暗殺した山上徹也容疑者、今回の木村隆二容疑者、そして宮台真司氏を襲撃した倉光実容疑者、これらの容疑者に共通するのは無職、または職業不詳であることである。

もう気づくべきだろう。これらの暗殺、暗殺未遂事件は非正規の反逆だと。

安倍元首相の暗殺は改造銃で行われた。現在、改造銃を作れる部品をネットで購入した場合、政府にそのデータが渡って購入者がマークされるようになっている。

つまり政治家が銃撃される可能性は低いのだが、今回の岸田首相の襲撃は手製の爆弾のようである。銃撃より殺害の可能性は低いが、それでも殺害できないよりはましという判断だろう。今後手製の爆弾を作る部品の購入者をどれだけマークできるかは、これからの警察の対応を見ないとわからない。

そして今回の事件は、凶悪犯罪が増えていることを意味しない。一連の暗殺、暗殺未遂事件は、むしろ精度が高まったという印象がある。つまり「無敵の人」が殺人事件を起こす場合、かつてはそのベクトルは無差別殺人に走りがちだったが、今は権力者、知識人にそのベクトルが向かうようになった。その分だけ怒りの矛先が正確になったのである。これからも政治家、言論人、経済人は狙われ続けるだろう。

 

これからも暗殺、襲撃はなくならない。またすぐに次の暗殺、暗殺未遂事件が起こる。

テロリストに厳しく対処するというのは正しい。しかし怨念が動機である以上、「テロリストには名前も与えない」くらいでは次の襲撃を防げない。承認欲求が暗殺の動機ではないのである。

対応策は地道に利権を排除して改革を行い、政府の権力を強化すること。そして非正規のように顧みられることのない者達にちゃんと焦点を当てることである。

 

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