坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。新ブログ「人の言うことを聞くべからず」+を開設しました。古代史、神話中心のブログです。

私の擬装請負体験⑥

シリーズ一回目から読みたい方はコチラ↓


  1. sakamotoakirax.hatenablog.com

この頃N氏からはよく、
「部署Cに戻った方がいいのではないか」
と言われていた。
その度に私は反対していた。
「仕事は部署Cの方がずっと簡単です。しかし部署Cの問題は人間関係です」
と答えていた。
単に仕事だけを考えれば部署Cの方がいい。ただ今の部署Cには戻れない。そう思っていた。

かといって今のままではくびになってしまう。
「Eをリーダーの座から降ろすことはできないんですか?」
と、服主任JにEがリーダーであるのを前提で話した。
「…できない」
と服主任Jは言った。「B社からは要請できても、決定権はクリスタルグループにあるんだよ」
(嘘だ!!)
私は信さんはじなかった。
服主任Jののところを離れて休憩所に行くと、同じ部署Lの派遣社員Pさんがいた。
P50代半ばの人だが、髪は真っ白だった。
「坂本くん、今服主任Jと、Eさんのことがどうのと話てたな」
「…はい」私は警戒して言った。
「ちぇっ、全く最近のやつらは、何かあるとすぐ派遣先の方に意うんだからーーいいか?俺達はクリスタルグループの社員で、クリスタルグループ内部のことはB社の社員に話すべきじゃない。そういう話は所長にするべきだ」
「……」
「今のことを、Eさんに報告しろ」
「なぜですか?」
「Eさんは俺達のリーダーだぞ」
「私はリーダーだとは聞いていません」
「ちぇっ、勝手にしろ」
二人でしばらく沈黙したが、Pさんはその後二、三、とりとめのない話をして、休憩所を出て行った。
(ーーPさんにまで、所長の手が回ってたのか?」
Pさんは元事業者だった。会社は事業を停止していたが、倒産したのではなく、時々金策のために仕事を休んでいた。そんなこともあって、派遣仲間での評判は良くない。しかし私は、Pさんのポジティブな性格が好きだった。
事業者なら、自社内で解決しようとせずに、他社である派遣先に相談しようとする態度は好まないだろう。しかし俺が「Eさんがリーダーだとは聞いてない」と言った時、自分の信念で俺に注意しようとしたのなら、もっと食い下がったはずだ。内心ではEを擁護するのも馬鹿馬鹿しかったんじゃないかーー)
私は休憩所を出て、作業に戻った。

その頃、部署CのOさんが足を悪くして、部署Cでの作業が不可能になっていた。
「部署Cに戻る記はないの?」
とN氏がまた聞いてきたのは、そういう背景もあってのことだった。
「部署Cの問題は人間関係です」
私は同じ返事をした後、
「Eさんは本当にリーダーなんですか?」
と、みんなにした質問をした。
「Eさんはリーダーじゃなく、班長だよ」
(班長?)
班長の意味を知らないわけではないが、ここでは初めて聞く言葉だった。
「班長とはリーダーではないが、各部署において指導、教育を行う役職だよ」
「Eさんが班長だなんて、私は聞いてないですよ」
「そりゃそうだよ。そんなこといちいち発表しないから」
このように言われて、信じられるだろうか?しかし私は、このように説明を受けたのである。
「そういうことは、疑っちゃいかんよ」
N氏は言った。
(ここで折り合いをつけろということか…)
私は考えた。
(これで、EのI班への権力は無くなった。しかし部署Cでは権力を持っている。今のままじゃ俺は、部署Cには戻れんな)
しかし、N氏の話にはまだ続きがあった。
「君をどうするかってことで、Eとリーダー数人が集まって話をしたんだけど、そこで俺は言ってやったんだよ『お前このままじゃ、お前の管理能力問われるぞ、坂本くんに普通の教育をしろ』ってーー何しろOさんとまで揉めてるんだから。Eは二言三言文句言ってたけど、普通の教育をするのに同意したよ」
(いや、反古にするだろう)
私がそう言うと、
「Dさんから教育を受ければいい」
N氏は言った。
私は素早く計算した。
(無理じゃないか?ーーいや、部署Cの二つの工程のうち、ひとつはものにしている。Dさんとも関係を築いている。やってやれないことはない)
私は、O氏の話に同意した。
さらにK課長が私の処遇についてどう言っていたかをN氏は話した。
「K課長は、『三ヶ月は部署L、その後のことはクリスタルグループさんにお任せします』って言ったんだよ」
(ほら、やっぱ所長の嘘じゃねえか)
ともかく、話はついた。
(こうなりゃ、Eを追い出す算段をつけないとな)
と、帰りには意気揚々としていた。

ところが、
それからしばらくして、所長が「お前をくびにする」と言ってきた。解雇日を二日後に設定してのことだ。
ご丁寧に、所長は私のちょっとした失敗を、こまごまと派遣社員に報告させていた。その上、
「例の200万の失敗のことでも、K課長からさんざん言われている」
と言った。200万の失敗のこととは、あの粉を混ぜた件のことだ。それが200万の損失だった。
「君はEさんの悪口を色々言っていたけど」
ここで私はぶちギレた。
「あ、その件ならK課長から『言ってない』って言質もらってるんですけど」
「な、何?」
「それでもK課長は200万の損失の苦情を所長に言ったのですか?なんなら私がK課長に聞いて来ましょうか?」
「や、やめろ!!そんなことするな!!君のことは書類でも言われているんだ、ほら!!」
所長は鞄から書類を取りだし、すぐにそれをしまった。
「あ、その書類見せてもらっていいですか?」
その書類を見ると、欠勤者が多く出たことで、B社がクリスタルグループにその理由を問い質したものだった。私はほとんど欠勤していなかった。
「これには私のことは書いてありませんね」
「このことも含めて色々言われてるんだよ!!いいかげんにしろ!!お前!!君のやった200万の損失なんて、本当なら請求するところだぞ!!」
「あ、損失の請求なんてできるんですか?」
「いやできないけど…」
(馬鹿馬鹿しい)
私は席を立った。
「所長、今日は欠勤でいいですよね」
と言って、私が出て行こうとすると、
「待て!!ここを辞めてこれからどうする気だ?」
所長が聞いてきたので、
「もうクリスタルグループさんのお世話になることはないでしょうね」
私は答えて、所長室を出た。

(これからK課長に、所長のついた嘘を言おうか)
家に帰って、私はずっと考えていた。
(ーーこうなったらやってやる!!その後どうなってもいい)
と、一晩かけて決心を固めようとした。

しかし、できなかった。他のみんなのことを考えると、やはりできなかった。
というのは嘘で、そこまでやって、他の派遣社員と人間関係を維持できると思わなかったからだ。そして精神的にも限界。
しかし、もし今後同じようなことになったら、私は全くためらわずに会社を破壊するだろう。
とにかくこうして、私はクリスタルグループを退社した。

今になって思えば、所長のもくろみは私をくびにすることではなかったようである。
私が部署Cに戻ればEが不利になってしまうので、私にEと仲良くするように強要し、Eのリーダーとしての権威を取り戻し、かつ私をEに従属させようとしたというのが真相のようである。所長が私をくびにしたやり方は法律違反だから、法律違反の危険を犯して私をくびにしたと考えるよりも、こう考えた方がしっくりくる。
「そんなことしても無駄なのに…」
とこの手の人物に言っても無意味で、自分の首が絞まるまで、この手の人物はあがき続ける。
「所詮その程度の考えさ」
と思ったところが、この手の人物の考えに一番うまくはまる。

え?この話のどこが擬装請負の話かって?
擬装請負の話なのである。なぜならこの話は続くからだ。私はクリスタルグループを退社した後、派遣会社Q社からAグループR社に派遣されたからである。B社と同じAグループなだけでなく、B社とR社の社長は同じである。私が擬装請負の内部告発をしたのはR社の方である。
(つづく)


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