米大頭領候補のトランプ氏は在日米軍の駐留費を日本が全額負担せよと主張している。 ならばそれを受け入れて、アメリカに地位協定の改善を求めればいいと思っていたが、額を見て驚いた。5兆円である。情報はこちらからである。
今年の日本の歳入は58兆円、国債の発行額は38兆円、その内防衛費は1兆円程度である。
日本が5兆円の米軍駐留費を出し続けることは、ほぼ不可能と思われる。
ならばアメリカがなぜこれだけの出費を出し続けることができたのかといえば、ドルが基軸通貨だからである。
世界中の国際取引の決済手段として使われるドルは、通貨供給量を大幅に増やしても、低インフレでやっていける。このドルを使って、アメリカは世界の警察をやってきたのである。
これがわかると、今世界で起こっていることが分かるようになる。 例えばTPPである。日本は95%で合意、ナショナリストにして見れば情けない結果と思いそうだが、実は日本以外の国は95%以上で合意していた。TPPに関しては日本が一番ナショナリスティックだったが、その日本にしてこの結果である。
基軸通貨ドルにも限界があり、打出の小槌とはならない。ドルをもってしても、アメリカの世界の警察としての軍事費を維持できない。その分を補填するのがTPPであり、グローバリズムである。グローバリズムは、我々の金をアメリカに流し込むシステムである。
ギリシャの債務危機についても、同様のことがいえる。 ギリシャの債務危機では、あらゆるデータがユーロから離脱して、ドラクマを採用すべきという数字を示していた。純経済的には全くその通りで、ギリシャにとっては不幸というしかない。
しかしだからこそ、ギリシャの残留は経済的な理由ではない。ギリシャの残留は中東やロシアが引き起こす紛争に巻き込まれないためである。
問題は今回EUを離脱したイギリスだが、イギリスの場合は地理的にEUが盾になってくれるため、離脱しやすいという背景がある。
そのうち、アメリカも世界の警察をやれなくなる時がくるかもしれない。 それでもどこかの国が、世界の警察をやることになるだろう。
その国がどの国かは、もう決まっている。中国である。その時には人民元が基軸通貨となる。最近中国が設立したアジア・インフラ投資銀行は、人民元を基軸通貨にするための布石である。
そして必要だからとはいえ、世界の警察もただではやってくれない。
アメリカは中南米を裏庭としたが、中国にとって東シナ海、南シナ海は「表庭」である。
中国は南沙、西沙諸島を手に入れ、さらに尖閣諸島に手を伸ばす。日本はシーレーンを中国に握られ、中国の下風に立つ。
それは避けなければならない。
だから我々が中国に対処するために一番考えなければならないのは、アメリカを覇権国として維持することである。
現在論壇を見る限り、ナショナリストとケインズ経済学との親和性が高い。 確かに債務危機に陥った時に通貨を大量に発行し、国内で超インフレ、対外的に通貨を暴落させ、それで輸出競争力をつけて急速に経済を回復させるケインズ理論は理想的である。
しかしケインズ理論では、防衛費を捻出することができない。ケインズ理論は理想的だが、ケインズ理論は戦争の可能性を極少化しない限り、完全な形では実行できないと思うべきである。
もしトランプ氏が大頭領になった場合どうするかだが、経済的には、グローバリズムの中休みになると思えばいい。 そういう反動は必ずある。
トランプ氏は関税障壁を設けようとしているようだが、ならばこちらも関税障壁を設ければいい。ただし、トランプ氏が大頭領になっても、任期は4年である。それ以上はトランプがグローバリズムに転向しない限り、「アメリカ」が許さないだろう。
米軍駐留費の負担についてだが、これはのらりくらりとかわすべきだろう。「負担しなければ撤退」はブラフで、トランプ氏の安全保障への意識は高い。おそらく負担を負わせられることなく、トランプ氏と渡り合えると思う。
また地位協定については、残念ながらトランプ氏相手では話ができそうにない。だから東南アジアに同盟国を探すなどをして、アメリカの軍事力の重要性を相対的に低下させる努力をするべきだろう。
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