坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

日本型ファンタジーゲームの誕生⑤~ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルド

最近では『ゼルダの伝説    ティアーズ・オブ・キングダム』がものすごく売れたんだってね。でも今回紹介するのはその前作の『ブレス・オブ・ザ・ワイルド』。プレイはしていない。動画で見た。
ゼルダの伝説』シリーズは『時のオカリナ』で初めて3D化し、各シリーズのストーリーが『時オカ』でリンクがガノンを倒した後の物語、リンクがガノンに負けた後の物語、リンクが子供時代に戻った後のストーリーの3つの時間軸、そして『時オカ』以前のストーリーと非常に奥行きのある物語群を長い間形成してきた。しかし『ブレス・オブ・ザ・ワイルド』で、この3つの時間軸を捨てた。
そのようにしたのは、「宿命」を排除するためである。『ゼルダの伝説』シリーズは力のトライフォースの所有者であるガノンと、知恵のトライフォースを司るゼルダ姫、勇気のトライフォースを司るリンクの物語だった。
しかしそれだけに、リンクがガノン(またはガノンドロフ)と争うのはトライフォースを司る者として必然であり、プレイヤーはそこに宿命を感じずにはいられなかった。
しかし宿命というのは、一本道のストーリーを想起させて、異なる人生を歩むのを拒絶させる。プレイヤーに多様な選択肢を感じるゲームにするために、『ゼルダの伝説』のそれまでのストーリーを捨てたのが『ブレス・オブ・ザ・ワイルド』である。だからトライフォースは3つとも、ゼルダ姫がその身に宿している設定になっている。

100年前の厄災ガノンの大厄災によりハイラル王国は滅び、リンクは傷ついて100年の眠りについていた。
眠りから覚めたリンクは記憶を無くしていた。そしてスマホ、いやシーカーストーンを手に各地の試練の祠を巡り、ゼルダ姫が厄災ガノンを100年の間食い止めていたことを知る。リンクは厄災ガノンを倒しゼルダ姫を救うべく旅に出る。

ゲームの序盤ははっきり言って死にゲーで、ガーディアンというロボットの出すビームを受けて死にまくる。実況観てて思った。「こんなの避けらんねーよ(笑)」
実に難易度の高いゲームだが、この難易度も100年前は暴走したガーディアンのビームをお鍋の蓋で弾いたこともあるという凄腕のリンクが、記憶と共に失った技術を体で思い出すという演出なのである。
ガーディアンのビーム以外にも脅威はある。それがイーガ団。
困っている旅人の風を装ってリンクが不用意に近づくと、身の上話を語るようにして途中でヒッヒッヒと笑い出してリンクをグサッ!でリンクご臨終。いるんだよねー頑張ってる人に善人のふりして近づいて足を引っ張る人って。
旅の道中で食材を手に入れて料理も行う。料理の素材によってはバフ効果のある料理が出来上がったり、または不味い料理が出来上がったりする。そうやってプレイヤーはサバイバル感覚を身につけていく。
武器もまた耐久力があり、耐久力を超えて使用すると壊れるようになっている。リアルなサバイバル感を出すための、優れたゲームシステムである。マスターソードも壊れるが、壊れても一定時間を過ぎると復活するようになっている。

日本型ファンタジーゲームには、「ここは日本だ」という演出をしている場合がある。桜の木や紅葉の木の森、またはカカリコ村などは和風の家が並ぶが、それも「ここは日本だ」ということを示す表現である。同様の演出は、『ドラクエ11』のナギムナー村の沖縄風の建物や、『ファイナルファンタジー15』の王都インソムニアの新宿のような町並みと新宿都庁を模した王城などに見られる。

厄災ガノンを倒すには、マスターソードを手に入れ、現在厄災ガノンに制御機関を乗っ取られている、神獣という機械兵器の制御装置を起動して、神獣を奪い返さなければならない。
神獣は全部で4つある。神獣はかつてリンクと共に戦った4英傑により使役されていたが、厄災ガノンに制御機関を乗っ取られることで、4英傑の魂も封印されていた。
リンクは4つの神獣に乗り込み、制御装置を起動して4英傑の魂を開放していく。
4英傑にはいろんな人物がいる。ゾーラ族のミファーのようにリンクに恋心を抱いていた者もいれば、リト族のリーバルのように、元々能力の高いリンクを良く思っていなかった者もいる。
ゼルダ姫もまた、ハイラル王家に生まれ封印の姫巫女としての役割を持ちながら、封印の力に目覚めないのを悩みとし、そのために与えられた役割ときちんとこなすリンクに劣等感を持っていた。
結局封印の力に目覚めたのがハイラル王国が滅びた後で、ゼルダ姫はたった一人で厄災ガノンを100年間抑え続けることになる。なんだかかわいそう。ちなみにゼルダ姫は100年間容姿が全く変わっていない。

4つの神獣を厄災ガノンの制御から開放し、マスターソードを手に入れれば、その後はいつでもハイラル城に乗り込んで厄災ガノンと戦うことができる。
しかし、オープンワールドの地上には120の試練の祠があり、それら全てをクリアしないとLIFEなどを最大値にすることはできない。
そこで全ての試練の祠をコンプリートするのを観たが、タルい……。
観てるうちに既視感を感じたのは、そうだ『ドラクエ1』の感覚だ!
ドラクエ1』の「あ~レベル上がんね武器買わんね……」と思いながらひたすらレベル上げをしていたあの感覚に似ているのだ。
もちろん各試練の祠は様々な工夫が施された試練があり、リンクはそれに知恵と技術と持てるアイテムを駆使して取り組んでいく。
それでも単調に見えてくるのは、それまでの『ゼルダ』シリーズでは、ダンジョンごとにクリアに必須のアイテムというのがあり、それがプレイヤーに飽きさせない仕組みとなっていた。しかし『ブレス・オブ・ザ・ワイルド』にはそういう仕組みがない。各試練の祠は高難易度のミニダンジョンだが、それでもコンプリート前に飽きやすい。
このようになっているのも、現実はそんなに簡単じゃないから。世の中は生きる上で飽きさせない仕組みなんか作っちゃくれていない。
またサクサク感がなく、ストーリーを感じにくい。サクサク進むことほどストーリーを感じ、ストーリーを感じるほどに宿命を感じやすいが、これは物語以前にゲームなのである。
ただし全部やる必要はない。試練の祠巡りに飽きたら、もう充分ガノンを倒す力をつけたと思ったら、いつでもハイラル城に乗り込んで行けば良い。
厄災ガノンはリンクに反応して復活するが、そこに4英傑の霊が使役する4つの神獣が厄災ガノンに砲撃を浴びせ、厄災ガノンの体力を大幅に削る。
リンクは厄災ガノンを倒すが、ガノンの怨念は城を飛び出して魔獣ガノンとなる。リンクはゼルダ姫から授かった光の矢で魔獣ガノンを討ち果たす。

こうして、宿命を排除しよりリアルさを味わうゲームがまたひとつ増えたことになる。

 

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