坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

カドモス


カドモスは、ギリシャ神話に登場する人物である。
フェニキアのティロスの王アゲノルの子である。フェニキア人というのは現在のシリアにいた民族で、アジア人だが、フェニキア人はギリシャ人と並び、地中海交易を生業として地中海各地に植民都市を建設していた。有名な植民都市として、共和政ローマと対決したカルタゴがある。
同じアゲノルの子で、娘のエウローペーがいたが、神々の王ゼウスがエウローペーを見て恋に落ちた。
ゼウスは白い牡牛に変身し、エウローペーに近づく。エウローペーがが牡牛に跨がると、ゼウスはエウローペーをクレタ島に連れ去った。エウローペーの名はヨーロッパの語源となった。
アゲノルはキリクス、ボイニクス、カドモスの三人の息子に、エウローペーを捜索するように命じる。そしてエウローペーが見つかるまで帰ってくるなと言う。
カドモスはエウローペーを探したが、見つからない。そこでデルポイに行き、今後どうすればいいか神託を受けることにした。
デルポイでは、「エウローペーを探すことを諦め、1頭の雌牛の後を追い、その雌牛が倒れたところに都を建てよ」と神託を受けた。
カドモスは牛飼いから白い満月の模様のある雌牛を買い取り、一度も休ませずに追い立て、その後をついていった。
そして雌牛が倒れたところに、カドモスはアテナの像を建て、生け贄を捧げるために部下に泉の水を汲ませに行かせた。
しかし泉はアレスのもので、泉の番をしていた大蛇にカドモスの部下達は殺されてしまった。
カドモスは岩で大蛇の頭を打って殺し、生け贄を捧げると、アテナが現れてカドモスの行為を褒め、大蛇の歯を地中に蒔くように命じた。
カドモスが言われた通りにすると、歯を植えた地中から武装した男が出てきた。
カドモスが男達の真ん中に岩を投げると、男達は殺し合いを始め、最後に残った5人がカドモスに忠誠を誓った。
アレスはカドモスに、殺された大蛇の代償を求め、カドモスは8年間、アレスの奴隷として働くことになった。
大蛇の歯から生まれた男達はスパルトイと呼ばれ、カドモスが建設した都市テーバイの住民となった。

テーバイの王となったカドモスは、アレスとアフロディーテの娘ハルモニアを妻とした。この二人の結婚は神々に祝福された。
カドモスはアウトノエー、イーノー、セメレ、アガウエー、ポリュドロスと1男4女の子宝に恵まれたが、カドモスの子や孫は次々と不幸に見舞われていく。
娘のセメレはゼウスの愛人となったが、ゼウスの妻のヘラに憎まれ、ヘラはセメレの乳母に変身して、ゼウスに神の威光を見せるようにセメレに吹き込む。
セメレの頼みを拒めなかったゼウスは、雷火を纏ってセメレの前に現れ、セメレは雷火により焼け死ぬ。セメレは身籠っていたが、胎児はゼウスの腿に埋められて臨月まで過ごす。こうして生まれたのが酒の神ディオニソスである。
また娘のイーノーは、ディオニソスを匿ったことでヘラに目をつけられた。
ヘラはイーノーの夫のアタマースに狂気を吹き込み、アタマースが白い鹿を見つけて矢を射たところ、それは自分とイーノーの息子のレアルコスだった。
それを見たイーノーは気が狂って、同じく自分の息子のメリケルテースを沸騰した湯の入った鍋に入れて殺し、その遺体を抱えて海に飛び込んだ。ゼウスはディオニソスを育てた恩義に報いて、イーノーを女神レウコテアーとし、メリケルテースを海神パライモーンとした。
娘アウトノエーはアリスタイオスと結婚し、アクタイオンをもうけたが、アクタイオンは誤ってアルテミスの水浴を見てしまい、アルテミスにより鹿の姿に変えられ、自らが率いる50匹の猟犬に噛み殺されてしまった。
アガウエーとスパルトイの一人エキオンの子ペンテウスはテーバイの王位を継いだが、ディオニソスを信じなかったためにディオニソスの見せる幻に翻弄された挙げ句、ディオニソスが母のアガウエーやその他の女達をけしかけてペンテウスを八つ裂きにした。

カドモスはアレスの怒りがまだ解けていないことを知り、ポリュドロスに王位を譲り、ハルモニアと共にエンケレイスの国に移った。
エンケレイスの国はイリュリア人に攻められており、カドモスとハルモニアを指導者にした。
その頃アガウエーは、イリュリア王リュコテルセースの元に逃れて王妃になっていたが、父のカドモスがエンケレイス人を率いていることを知ったアガウエーはリュコテルセースを殺し、イリュリアをカドモスに献上した。
晩年のカドモスとハルモニアの間にイリュリオスが生まれ、カドモスの後を継いでイリュリアの王となった。
カドモスとハルモニアは大蛇になり、ゼウスによって神々に愛された英雄の魂が済むエーシュリオンに住むことを許される。

カドモスは青銅を発見したとも、ボイオティアにフェニキア文字を伝えたともいう。フェニキア文字はアルファベットの起源となった文字である。

カドモスの神話は英雄の物語として語られているが、カドモスの英雄らしい行動は大蛇退治しかない。
それでもカドモスの物語は、我々に何事かを教えてくれる。

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