坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

カドモスのテーバイ王家の苦悩とオイディプス

オイディプススフィンクス

カドモスの孫アクタイオンは、ある時キタイローン山のガルガビアの谷間で、50匹の猟犬を率いて狩りに興じていた。アクタイオンは猟犬を休ませるために泉を探した。
ところが、谷の一番奥まった場所の洞窟の中にある泉で、アルテミスが従者と共に水浴びをしていた。アクタイオンは知らずに洞窟に入り、入浴中のアルテミス裸体を目撃してしまった。
アルテミスは、アクタイオンが「女神の裸を見た」と言い触らすことができないように、アクタイオンを鹿の姿に変えた。さらにアクタイオンの猟犬を狂わせて、アクタイオンにけしかけた。アクタイオンは猟犬によって食い殺された。

アクタイオンの死については、異説がある。
ひとつは、アクタイオンがアルテミスの裸体を見た時、アクタイオンがアルテミスを犯そうとしたため、アルテミスはアクタイオンを鹿の姿に変えたというものである。
もうひとつは、アクタイオンが叔母のセメレと結婚しようとしてゼウスと争い、アルテミスはアクタイオンに鹿の皮を被せて猟犬達に襲わせたというものである。
セメレはゼウスの愛人で、ゼウスの妻ヘラの嫉妬により、セメレを罠にはめて、ゼウスの手でセメレを殺させた。ゼウスとセメレの間の子が酒の神ディオニュソスである。

イオの物語とテセウスのミノタウロス退治 - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」


で述べたように、カドモスが追った白い満月の模様がある牝牛は、アルテミスを表している。
そしてアクタイオンがセメレと結婚しようとしていたという異説、これは近親婚を望み、それを父=ゼウスに阻まれる姿を表しているようである。

カドモスのもう一人の孫ペンテウスは、ディオニュソスを信仰せず、テーバイにやってきたディオニュソスを閉じ込めた。しかしディオニュソスの見せる幻により、ペンテウスは牡牛をディオニュソスと思い込んで縛ろうとしたり、ディオニュソスがセメレの墓前に火を灯すと、ペンテウスは王宮が燃えていると錯覚し、火を消そうとした。またここで牡牛が出てくる。
またペンテウスはディオニュソスの信女達の乱暴を聞き討伐しようとしたが、ディオニュソスは信女達の様子を見たくはないかと尋ねた。ペンテウスはディオニュソスの祭をアフロディーテのふしだらな祭だと思い込んでいたので、見てみたくなってキタイローンに赴いた。
ペンテウスはディオニュソスの魔力により気が狂い、太陽やテーバイの城壁が2つに見え、ディオニュソスが牡牛の見せる姿に見えた。
キタイローンに着いたペンテウスは木の上に登り、女達を覗き見た。
ディオニュソスは女達をペンテウスにけしかけ、女達はペンテウスが登っていた木を引き抜き、落下したペンテウスの上に、母のアガウエーが飛びかかり、他の女達と共にペンテウスを八つ裂きにした。
カドモスの一族は、近親婚を果たそうとして牡牛と牝牛に妨害されるということを繰り返している。そこには父=アゲノル=ゼウスに支配された娘イオ=エウローペー=アルテミスの共謀により、父に逆らった若者が命を散らしていくという構図がある。

カドモスの子ポリュドーロスの子がラプダコス、ラプダコスの子がライオス、ライオスの子がオイディプスである。
ライオスは「男子をもうけるな、もし生まれればその子に殺される」という神託があったが、ライオスは酒に酔って妻のイオカステと交わり、やがて男子が生まれた。
ライオスは赤ん坊の踵を留め金で貫き、牧人に命じて赤ん坊をキタイローンの山中に捨てさせた。
またもキタイローンである。アクタイオンとペンテウスが殺された場所、デュオニュソスの祭が行われる場所である。
しかしコリントス王ポリュボスの牛飼いが赤ん坊を拾い、ポリュボスの妃のペリボイアに預けた。ペリボイアは赤ん坊をオイディプス(腫れた足の意)と名づけ、養子として養育した。
オイディプスが成長すると、ポリュボスの実の子ではないと噂がたった。
オイディプスはペリボイアに真相を尋ねたが、ペリボイアは何も答えなかった。
そこでオイディプスデルポイアポロンの神殿に行き、神託を得ることにした。ところが神託は「故郷に戻れば父を殺し、母と交わることになる」というものだった。
オイディプスコリントスを出て、ポーキスに向かって戦車を走らせた。
その途中でライオスの戦車に遭い、ライオスの伝令使ポリュポンテースがオイディプスに引くように言ったが、オイディプスは従わずもたついた。
そのためポリュポンテースがオイディプスの馬を1頭殺すと、オイディプスは怒ってライオスとポリュポンテースを殺した。ライオスが名乗らなかったため、オイディプスは自分が誰を殺したのか知らなかった。
その頃テーバイは、スフィンクスという怪物に悩まされていた。
スフィンクスはピーキオン山頂に座し、そこを通る者に謎を出して、謎が解けぬ者を喰らっていた。テーバイの摂政クレオンは、「スフィンクスの謎を解いた者にイオカステとテーバイの王位を与える」と布告を出していた。
スフィンクスオイディプスに「ひとつの声を持ちながら、朝は四つ足、昼は二本足、夜は三本足で歩くものは何か」と謎を出し、オイディプスは「答えは人間である」と謎を解く。面目を失ったスフィンクスは岩の台座から飛び降りて死んだ。
オイディプスはテーバイの王となり、実の母とは知らずにイオカステと結婚し、二男二女をもうけた。

しかしオイディプスが王となってから、テーバイは不作と疫病が続いた。
クレオンがデルポイに神託を求めると、「不作と疫病はライオス殺害の穢れのためである。殺害者を捕らえテーバイから追放せよ」と神託を得た。
オイディプスが調査を進めると、ライオスを殺したのは自分であり、さらに自分がライオスの子で、母との間に子をもうけたことを知る。それを知ったイオカステは自殺し、オイディプスは自ら目を抉って追放された。

しかし古い形の伝説では、オイディプスは母を妻にしていると知った後も王であり続けている。
また異伝として、娘のアンティゴネと共にテーバイを出て、諸国を放浪していたオイディプスは、アテネにたどり着き、テセウスに見守られて最期を迎える。ミノタウロス退治の、あのテセウスである。

カドモスに始まるテーバイ王家の苦悩は、オイディプスを生み出すためのものだった。


 古代史、神話中心のブログhttp://sakamotoakiraf.hateblo.jp/もよろしくお願いします。