坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

石原慎太郎は国賊である

尖閣諸島国有化は、別に外交的勝利ではない。国家間における勝利とは、戦争に勝つか、外交努力により権利を確定することである。
石原氏の行った尖閣諸島国有化が、意味がないことと言っているのではない。問題は尖閣諸島国有化を、外交的勝利であるかのように錯覚しているような風潮に、釘を刺すために、このことを述べている。
よく、無人島に上陸して自分の国の旗を立て、「この島は何々国の領土だ!」などとやっている馬鹿者がいる。
尖閣国有化は、中国に尖閣諸島を買収されないための措置であって、外交的勝利のように思うのは、上述の馬鹿者と、意識の面で変わらない。
ただ、アメリカが日本と手を切れないことを見越して国有化運動を起こした、その見極めは見事だと思う。
しかし、尖閣国有化運動は、結果が良ければ全て良しと済ませられる問題ではない。なぜなら尖閣国有化運動当時、石原氏は東京都知事であり、国会議員でさえない。石原氏は外交を扱える立場でないのに、東京都で募金運動を行った。尖閣諸島沖縄県に属するが、もし東京都が購入すれば、沖縄県と東京都のどちらの管轄になったのか、地方自治の点でも問題のある行動だった。
もっとも、どのような状況でも地方自治体が外交問題に首を突っ込んではいけないというわけではない。2012年当時の政府では、石原氏の運動がなければとても尖閣国有化に踏み切れなかっただろう。それでも外交は国の管轄であり、地方自治体が国に先んじて外交問題に介入すれば、国は腰の入った外交政策を取れなくなる。
ならばどうすればいいかというと、自らが原則を破って、地方自治体の長にあるまじきことをしたことを明言し、他の自治体が石原氏を模倣しないように釘を刺すことである。これは、模倣者が現れないうちは、口先だけの印象を与えかねない。しかし既に、石原氏の模倣者でなく、自治体が国の外交を先導しようとする動きがある。島根県竹島の日である。
石原氏は、尖閣国有化が成就した時点で、島根県竹島の日を批判すべきだった。石原氏が竹島返還を求めているのなら、竹島の日に目を瞑っているのもわからなくもないが、石原氏は「竹島は戻ってこない」と言っているのである。
石原氏が「戻ってこない」と思っている竹島の返還要求を、政府は行っている。竹島を棄てて韓国と友好を求めるのが、ビジョンなら、あらゆる手段を用いて竹島を取り返すのも、一つのビジョンである。しかし戻ってくる見込みのない竹島返還要求などビジョンにならない。このビジョンにならない要求のために、安倍首相までが、竹島の日の式典に出席し、国民の嫌韓感情と相まって、ビジョンを作る議論の妨げになっている。
民主政体では、政治家は思っていることを言いにくい。そのような時、言いにくいことを言うのは評論家の仕事である。しかし評論家は嫌われるのを避けてこのことを言わないのだが、評論家よりもっと悪い人がいる。言うまでもなく、石原慎太郎氏である。
私が尖閣国有化で石原氏を批判するのは、今の事態を憂慮するからである。しかし石原氏は、政治生命を賭けて竹島の日を批判せず、尖閣国有化を追い風にして、維新の会の代表になってしまった。
ただこの時には、民主党に代わる政権を担える党を作るという大義があった。しかし維新は分裂し、石原氏は政権から遠い、小数野党の党首となった。もはや石原氏には、自主憲法という、戦後の歴史を全てリセットするという裏技にしか、竹島の日の批判を先送りにする大義名分を見いだせない。これこそ、現時点でほとんどの国民が望んでいないことである。
しかも私見では、竹島平和憲法を守るために、韓国に奪われた現実から目をそむけたために、取り返すのが不可能になってしまったと思っている。このことは「竹島平和憲法のために取られた!?~戦後の終り」で既に述べた。http://sakamotoakirax.hatenablog.com/entry/2014/04/09/005953
今「私見では」と言った。「ならば石原氏には関係ないじゃないか」と思った方もいるだろう。しかしだからこそ、私は「アメリカが日本と手を切れないことを見越して国有化運動を起こした、その見極めは見事だと思う」と述べたのである。石原氏はリアリストである。
日本の政論には、現実味のない空論が多く、そのためリアリズムが分かりにくくなっている。
領土問題は、単に交渉すれば解決するのではなく、条約破棄や経済制裁、それで駄目なら実力行使をして解決するものである。そしてリアリストは、このような領土問題解決の手順を理解している。尖閣問題をあのような手際で国有化し、憲法問題でも自主憲法論を唱える石原氏が、竹島憲法の関係に全く気づいていないとすれば、ただの怠慢なのである。
尖閣国有化には功があってもその後の行動により、日本の外交はますます迷走している。だから私は言う。石原慎太郎国賊である。