坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

かくて自民の長期支配に至る~大阪市長選

三月の大阪市長選は、投票率23.59と、過去最低を更新するものだった。この選挙は、橋下氏が掲げる大阪都構想において、現在の四案を一案に絞って議論を進めたい橋下氏に対し、都構想を審議する法定評議会の過半数を占める自民、民主、公明、共産が難色を示した。そのため、「都構想案の一本化を市民に問う」として、橋下氏が市長を辞任、出直し選挙となったものである。対する四党は「選挙に大義なし、金の無駄遣い」として、対立候補を出さなかった。そのため実質、都構想案の一本化についての議論は行われず、大阪市民もこの選挙を金の無駄遣いと受け取り、橋下は得票率では圧勝だったが、白票が45098票も入るなど、選挙、橋下氏に対する市民の態度は冷ややかなものだった。

元来、橋下氏の台頭は、長引く不況に国政が有効な政策を打てなかったことから、トップダウンの手法で実績を上げている地方自治体の長が注目を浴び、 その中でも実行力のある橋下氏が 特に注目されていったという背景がある。しかし第二次安倍内閣が成立し、「アベノミクス」により景気が回復したため、当面、彼等のようなトップダウン型の自治体の長への注目度は下がった。その分彼等は逆境に立たされたと言える。しかし注目度が下がったこと=必要が無くなったことを意味しない。

2012年の衆議院選挙で、橋下氏が共同代表を務める日本維新の会は、一躍第三党に踊り出たが、その後の橋下氏は逆境続きである。2013年の従軍慰安婦発言、堺市長選の敗北と、橋下氏に不利な事態が続く。その中で、橋下氏の人気も、徐々に下がっていった。
この記事で、橋下氏の慰安婦発言に深入りするつもりはないし、堺市長選も、結局は堺市民の選択である。ただ言えることは、堺市長選の敗北で、大阪市堺市の合併が不可能になっても、都構想のメリットはあったということである。少なくとも、橋下氏はそう思っていた。だからこそ、「出直し選挙」に踏み切ったのである。

そして、大阪市民も都構想のメリットは分かっていた。私はそう思う。もし都構想にメリットがないのなら、維新以外の党が対抗馬を出していただろう。橋下氏は、「 市長選挙で六億かかると言われているが、二重行政の無駄は数千億円、いえ兆単位」と述べている。 ならば市長選に投票しない人々、および白票を投じた人々は、都構想に反対したのではない。政策への賛否とは次元を異にする行為である。

4月30日の東京スポーツでは、「『改革プラン』で市民サービス停止するハシズムにうんざり」とある。
http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/261503/
記事を読んで、私も市民に同情するところはあるが、橋下氏はその基本思想としての均衡財政路線を、これからも強めていきそうな気配である。もし次期市長選で落選すれば、日本維新の会も崩壊する。しかし橋下氏には、風向きが変わるまで自重する考えはない。
ところが、私は橋下氏の姿勢は正しいと思っている。橋下氏には、今後の時代の流れが見えているのではないか。

与党、自民党の強さは、保守本流として、主に財界に支持層を持っていることにある。経済を支配する者が自民を支持することで、自民はこの国を二重に支配している。そのため支配のテクニックも豊富で、支配される側には、「依らしむべし、知らしむべからず」の対応をする。その対応こそが特定秘密保護法であり、解釈改憲である。このことは、私は「特定秘密保護法解釈改憲靖国参拝」で論じた。
http://sakamotoakirax.hatenablog.com/entry/2014/04/24/064112
そして、自民は政治、経済で真に危機に陥れば、公共事業によって凌いでくる。財政赤字は未だに増え続けているが自民は消費税増税などの諸施策を打っても、財政赤字の増大には歯止めがかからないだろう。その理由は多く挙げられるが、一つには経済の支配層に利権を与えることで支持層を形成する、自民の体質にある。そして自民が「打出の小槌」を使う限り、リベラル勢力にはほとんど勝ち目がない。

保守の側に均衡財政派が増えない限り、リベラル勢力も存続しえないのである。特に自民に対抗するには、均衡財政派が成果を上げて、モラルハザードを喚起させなければ不可能である。つまり、大阪市長選における民主、共産の態度は、戦略的に間違えていた。
秋には都構想の是非を問う住民投票を行うそうだが、結果は不首尾に終わるだろう。大阪市民が、自ら都構想の足を引っ張ったことを認識しないからである。むしろ逆に、自分達が正しいという物語作りに固執し、都構想を悪玉にしていく。橋下氏の政治生命はこれで終わりかもしれないが、同時に都構想も終わり、自民党の長期政権が確率し、対抗できる政治勢力は皆無となる。