『進撃の巨人』はジーク達巨人を撃退、ウォール・マリアを奪還することで新たな展開を迎える。
シガンシナ区のエレンの家の地下室で、エレン達は世界の真実を知る。人類は滅びでおらず、壁の外、エレン達の住むパラディ島は世界のほんの一部で、世界は大国マーレが覇権を握っていた。
マーレはかつて世界を支配したエルディア帝国を倒し、その支配から逃れて生まれた国である。エルディアとはエレン達パラディ島の住民と同じ民族で、九つの巨人を有していた。巨人大戦によりエルディア人をリベリオ収容区に押し込め、エルディア人の巨人の力を使って世界の覇権を握っていた。「始祖の巨人」を持つフリッツ王はパラディ島に逃れた。パラディ島を攻めれば、世界を平らにする「地鳴らし」を発動するという警告を世界に残して。「地鳴らし」とはパラディ島の3重の壁の中にいる大型巨人を動かすことで、発動すれば世界を滅ぼすこともできる。しかしフリッツ王は「不戦の契り」を結び、王家の血を引く者は「地鳴らし」を発動できなかった。
「始祖」は「進撃の巨人」を持つエレンの父グリシャが、ヒストリアの異母姉フリーダから奪い、エレンに継承されていた。しかし王家の血を引く者を巨人にし、エレンが巨人化能力者となった王家の血を引く者に触れれば、「始祖」の力は「不戦の契り」に影響されることなく発動することができる。エレンの兄ジークはそのことを知っており、パラディ島の兵政権に「地鳴らし」の力を持つように提案した。
パラディ島の兵政権は、「地鳴らし」を発動するべきかどうかについては悩むが、もしもの時の保険としては持っておこうと思う。その際、ジークの「獣の巨人」はヒストリアに継承させるつもりだった。
しかしエレンはそれに手を打つ。ヒストリアを巨人能力者にしないためにヒストリアを妊娠、結婚させたのである。
「進撃」には、他の九つの巨人にはない能力がある。それは未来を見る力である。
エレンはウォール・マリア奪還作戦の戦没者の慰霊式典の時に、ヒストリアに触れることで未来をみた。以来エレンは、突き動かされるように「地鳴らし」発動に向けて動いていくようになる。
そしてエレンはパラディ島を抜け出し、レベリオ収容区で「戦鎚の巨人」を所有するタイバー家の当主で、マーレの真の実験者ウィリー・タイバーがパラディ島への宣戦布告を告げたその時、巨人化してウィリーを殺した。パラディ島を抜け出しながらも密かにパラディ島と連絡を取り、この日にレベリオ収容区を襲撃させる。兵政権はエレンの作戦に乗らなければ、「進撃」と「始祖」を失うことになる。兵政権は不本意ながらエレンの提案に従った。
そして「戦鎚」の能力者のウィリーの妹と戦い、殺して「戦鎚」の能力を奪う。さらにジークを殺したふりをしてジークをパラディ島に移送することに成功した。
兵政権は独断でレベリオ襲撃を提案、兵政権を巻き込んだエレンを牢に閉じ込めるが、エレンは「戦鎚」の能力を使って脱獄、ジークに会おうとする。
しかしジークに会う直前で、エレンはガビの銃で首を吹き飛ばされる。それでもエレンが絶命する前にジークはエレンの首をキャッチし、二人は「座標」で邂逅する。
ジークはエルディア人が子孫を残せないようにすることで、巨人による世界の災厄を無くそうとしていた。エレンはジークに賛同するふりをした。エレンの目的は、パラディ島以外の人類を「地鳴らし」により滅ぼすことだった。
ジークの油断ならないところは「不戦の契り」を知的作業により無効にし、エレンの「始祖」を利用して始祖ユミルを操っていたところにある。
ジークはエレンを鎖で繋ぎ動けないようにして、エレンの記憶の中を覗いた。
ジークはエレンが自分と同じように、父のグリシャに洗脳されたと思っていた。しかしエレンはグリシャに自由に育てられていたとわかる。そしてグリシャがレイス一家を殺した日、グリシャは「進撃の巨人」の秘密を明かす。「進撃」には未来を観る力があるというのである。しかしグリシャは殺すのを躊躇う。巨人化しようとしてできなかったグリシャに、エレンは
と語りかける。息子が父親を主導している。
グリシャがレイス一家を殺すと、「これでいいんだな?エレン」とグリシャが言う。
「座標」を通じてグリシャの記憶を観ていたジークだが、グリシャもエレンやジークを見たり話したりすることができる。グリシャはジークに「エレンを止めてくれ」と言う。
『僕だけがいない街』や『東京喰種』には父殺しの暗示があるが、どちらの作品も子の価値を父親が否定するという形で「父殺し」が行われている。
「父殺し」には重要な意味がある。「父殺し」をした者は犯罪者として裁かれるか、世界の改変者となるか、どちらかの運命を辿る。犯罪者として裁かれるのがオイディプスであり、改変者となるのがゼウスである。
エレンは父親を従えさせ、父親の価値を否定している。『僕だけがいない街』や『東京喰種』が父親の方から子の価値を否定するのは、まだ子の方が父親を否定できないからだった。しかし「俺は生まれた時からこうだった」というエレンは、自分の価値に父親を従えさせてしまうのである。完全な「父殺し」である。
ジークはユミルにエルディア人の生殖能力を奪うように命令する。エレンは鎖を引きちぎるのでなく、親指を引きちぎって鎖から腕を抜き、ユミルを止めて説得する。
「決めるのはお前だ。選べ。永久にここにいるのか、終わらせるかだ」
エレンの言葉に、ユミルの心が動く。そして「始祖」が発動し、3重の壁の大型巨人が動き出す。「地鳴らし」が始まったのである。
「地鳴らし」は世界を次々と平らにしていく。
エレンを止めるために、ミカサ、アルミン、ライナー、アニ、ピークと、それまで敵同士だった者達が力を合わせる。
エレンから「始祖」を引き離し、「地鳴らし」を止めるのに成功するが、今度はエレンは脊髄をガスにして噴射し、巨人化能力者とアッカーマン家の者を除く全てのエルディア人を「無垢の巨人」にする。
「地鳴らし」を止めてなお戦うエレンの首を斬り、エレンを止めたのはミカサだった。
ミカサの右頬の傷は、強姦の暗示である。
『プラチナエンド』でも、ヒロインの花籠咲がメトロポリマンによって頬に傷をつけられるが、これも同じレイプの暗示である。
始祖ユミルは奴隷として生まれ、舌を抜かれ、豚を逃がした罪でフリッツ王の命令で殺されそうになり、追い詰められて巨人の力に目覚める。
その巨人の力を今度はフリッツ王に利用され、橋をかけ、荒れ地を耕し、マーレと戦わされ、その上フリッツ王の子を生まされる。そして最後はフリッツ王を庇い、槍に刺されて死ぬ。
ユミルはフリッツ王を愛していた。その愛から解き放ってくれる者を、ユミルは待っていた。それがミカサである。そしてミカサがエレンを殺すと、エルディア人は巨人の力から解放され、「無垢の巨人」は人間に戻り、巨人化能力者は巨人に力を使えなくなる。人間=怪物から「怪物でない人間」になったのである。
同じ構造は『テラフォーマーズ』にもある。
かつて誘拐されて辛酸を舐めたサムライソードが、誘拐事件と関係があるらしいハンニバル・フォン・ヴィンランドと対決する。単行本はここで話が止まっているが、女性が横暴な男に復讐して解放されるという構図をここに読み取ることができるのである。
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