坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

日韓の国民はしたたかになろう

人権が守られていない現実を意図的に放置して、「民主主義を守れる」と思っている者は全体主義者である。

新味の裏に反動を隠蔽した与野党 - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

山口真帆の事件が改正組織犯罪処罰法の現実の運用のためだと述べたが、

www.yomu-kokkai.com

であれほど共謀罪法案の成立過程を批判したsirduke氏が山口事件に一言も触れないのは、彼女が本当は全体主義者だからである。彼女がリベラルな振りをするのは混乱させるだけなのでもう止めて欲しい。

vergil.hateblo.jp

も同様。迷惑なだけなので早々に敗北宣言をして欲しい。
id:Vergil2010 氏は山口事件に触れないだけではない。

ヘイトスピーチはマジョリティにも適用される。 - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

で見たように印税の横領を国と弁護士が黙認しているのを知っていながら、そのことについて何を言わない「犯罪を望む者」である。
山口真帆については今さら言うまでもないが、1ヶ月以上に渡って誹謗、中傷をマスコミが繰り広げた事件がNGTの裁判の内容を根拠にしており、山口に味方する弁護士が一人もいないことで山口が裁判の内容を知ることができず、ブラックボックスの中の「信用できる情報」をマスコミが手にいれていたことは、私でなくても多くの人が気付いていたはずである。
それを語らないこと自体が大きな問題だが、山口事件を全無視して「法の下の平等」を実現できると思うこと自体政府に餌を与えているのである。
改正組織犯罪処罰法の濫用に抵抗するには、「法の下の不平等」にあまねく手を差し伸べる勢力が形成されるのを待つしかなく、それまでは政府の好き勝手にさせておくしかない。
左派がダブルスタンダードを使い、あまねく人を救う気がないことなど、既に多くの人が気付いている。そんな勢力はこれからどんどん小さくなるだけで、政府に抵抗する振りをして、かりそめの結果を手にしても事態が悪化するだけである。是非このような発言は控えて貰いたい。ダブルスタンダードを行使する者には同じような者ばかりが集まるので。

韓国がGSOMIAを破棄した件について。
もう2ヶ月くらい前になるのかな?当初の反発がなくなって、大部話しやすくなった。日韓基本条約を破棄しろという論が出ていた時は正直ヒヤヒヤものだった。
このことについて、左派から批判がほとんどなかったのは当然のことだろう。GSOMIAは軍事同盟の一環だから、集団的自衛権違憲とする左派が韓国を批判できる訳がないからである。それでいてショックは隠せないらしく、はてなではKーPOPの話題などでお茶を濁していた。
左派はアジア諸国に対しては謝罪し、軍事的な問題が生じれば好戦的な右翼を平和主義の立場から批判することで命脈を保ってきたが、それが通用しない事態がまた生じたのである。
それなら「徴用工の請求権は消滅していない」という橋下氏の論に同調すればいいのにそういうこともしない。右翼の主張も建設的なものはなかったが、左派はこの件については無力さが際立っていた。

まず丸山穂高議員が「竹島が戦争で取り返すしかない」と発言した件について。
これについては、学会ではむしろ常識的な見解である。佐伯啓思白井聡も同じことを言っている。ただ彼らも戦争を望んでそう言っているのではなく、むしろ竹島を取り戻せない現実を突き付けるためにそう言っていたのである。
なら丸山議員はどうかといえば、北方領土で「戦争で取り返すしかない」と発言した丸山議員のことだから、やはり戦争をしたいのではないかという意見には一定の説得力がある。この件については少し置こう。
一方、同じN国の立花孝志党首が「部屋を借りて20年家賃を払わなければその部屋は借りてる人の者でしょ?」と民法消滅時効の論で竹島は韓国のものだと主張、猛反発を受けた。なお私は結論部分には同調するが、消滅時効を例にとるのは反対である。
すると立花氏は一転して立花を日本の領土だとし、まずは経済制裁をしましょうと主張。これに対して世論は先の立花氏の主張の方を批判し続けた。
これについて考えるいい材料がある。

president.jp

まず、トランプと閣僚や側近たちの発言が、いちいち一致していないんだ。これを「トランプは政治の素人だから、組織内の調整や政治的な調整もせずに思い付きで言い放っているにすぎない」と見る人もいる。だけど、僕はそうじゃないと思う。トランプは根っからのビジネスマンだから、ポーカーをするように世界を攪乱しているんだろう。

 

これってい…じゃなかった。N国もやってるよねwww。
丸山議員はN国なんだから別々に見ることないでしょ?「戦争で取り返すしかない」、これが丸山議員の主張なんだから立花氏も同じだよ。まず経済制裁して、次に日韓基本条約を破棄して、その次が戦争というプロセスをたどっていけばいい。
現時点で確実に言えるのは、竹島が日韓どちらに帰そうとも、問題の解決に最大の貢献をしたのは立花氏だということである。私も竹島問題については、今後も立花氏にお任せするとしよう。

 



この三浦氏のツイートを見て思ったけど、韓国では南北和解が南北の統一だという考えがあるようだということに気づいた。南北和解が政治統一だという考えは真実の否認で、政治統一を目指すなら北の崩壊を求めるべきで、南北和解は政治統一から遠ざかる結果になると思う。
もっとも、韓国がどの道を目指すかは韓国人が決めることで、内政干渉になってはいけないが、

韓国はなぜ反日なのか? - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

で見たように分断国家コンプレックスが反日の原因である以上我々にも言い分があり、コンプレックスが反日に転じる現状は何とか改善したいところだ。また一時期、はてなに猛烈な韓国批判の記事が載ったことがあるけど、その内容も韓国人のメンタリティ、日本の永続敗戦構造と同じものだとわかる内容だった。これも合わせて批判したい。大国への従属から目を背けるために小国を攻撃するのは奴隷根性であり、それをいくら繰り返しても大国への依存度を減らすことにはならない。
しかし、

lullymiura.hatenadiary.jp

で三浦氏が言うこともわからなくはない。
北朝鮮は中国とロシアの傘下で極東を撹乱する役割を果たしてきたがそれはアメリカの牽制のためである。
非核化交渉が実はアメリカにミサイルが届かなければいいものだというのが次第に明らかになってきているが、もしこの交渉が実現した場合、北朝鮮アメリカと争う理由が無くなり、また北朝鮮が中国とロシアの傘下にいる理由も薄れるのである。そこに北朝鮮と手を組む可能性が生じる。うまくいけば日韓と北朝鮮三国同盟になる。
もちろん北朝鮮は、成り行きによっては韓国も相当に信用できないだろうが、それでも三国同盟の魅力は、アメリカ抜きでも中国、ロシアと相当にやりあえることである。
その道が厳しいといっても、北朝鮮の自壊を待つのも今となっては厳しいし、南北和解が政治統一になる可能性もほぼないし、日韓同盟も茨の道で、結局どの道もか細いのである。ならば三国同盟も立派な選択肢のひとつである。そして選択肢は多いほどいい。
可能性が薄くとも実現するコツは、日韓の国民がコンプレックスを捨ててしたたかになることである。

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生産性向上のため、管理職は現場を無視していい。

「与えられた仕事をこなせば、仕事中に何をしていてもいい」というのが海外、特に欧米の考え方である。
多くの日本人は、それを聞いて間違っていると思う。それは「空いた時間を他のことに使えば、効率は最大になるではないか」と思うからである。
断言しよう。日本人の考えは完全に間違いである。そもそも「空いた時間を他のことに使え」と言ったって、効率は最大にはならない。
それを証明するデータがある。

www.newsweekjapan.jp

によると、日本の労働生産性は50年間先進国で最低で、80年代には少し上昇したが、その後最低ランクに戻った。
その日本が世界第二位の経済大国になったのは、「薄利多売」によるものだった。
かつては世界第二位の経済大国だったと思っていたので、さすがに衝撃を受けたが、すぐに理解できた。それが「空いた時間を他のことに使え」と言ったって、効率は最大にはならない理由である。

「空いた時間を他のことに使えば効率が最大になる」という人は嘘つきである。なぜならそう言われる人と言われない人がいるからである。
言われていない人はマイペースで仕事ができているならまだいい方で、極端に暇になる人もいる。
そう、

忙しい部署に立場の弱い者を置くと仕事が集中する。 - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

で起こったことの結果、立場の弱い者に仕事が集中していくだけなのである。これでは生産性の向上にならない。
上司と部下、正社員と派遣社員といった立場の違いがなくても、人に仕事を押し付ける者がいる。
私は今3班交替制で働いているが、全ての仕事の数量が決められている訳ではなく、メインの作業以外はその人の裁量でやるかやらないかを決めていい作業もある。
立場の違いがなくても、その作業をサボって人に押し付ける者がいる。それがマウンティングだとわかるのは、サボり屋のくせに人を攻撃してくるからである。
多くの日本人の本音はこうで、自分がサボって人に仕事を押し付けるのは、自分が「偉いから」という勘違いを起こしている。私はサボりには寛容な方だが、マウンティングをする者には逆に相手に仕事をさせるようにしている。
こうして特定の人間に作業が集中した部署は、離職率の高い部署になる。
そのような部署で特に行われるのが「犯人探し」である。「犯人探し」とは、問題が発生した時に「誰が犯人か」を決めることで問題を解決することである。
「犯人探し」が行われる部署、もしくは会社では、問題を「犯人」の責任にした結果、作業方法その他の改善が行われなくなる。根本的な問題が解決されないので、同じ失敗がまた繰り返される。
ブラック度が高い企業で良くあることが2つあり、ひとつはしょっちゅうクレームが起こることである。そのような場合、管理職はパワハラが原因だと理解しているが、パワハラ上司を何とかしようとは絶対にしない。クレームが起こる度に管理職が取引先に行って時間をかけて選別作業などをするが、「お前らのせいで」とはならない。なぜなら、彼らは今までそうやって出世してきたからである。
日本の管理職の「役割」は、パワハラ加害者を「正当」とすることにある。日本の社会はパワハラ加害者が中心になって動いており、周囲がパワハラ加害者を擁護し、上司がそれを承認することで成立している。だからパワハラ加害者を承認する上司は評判が良くなり、しばしば出世コースに乗る。それが年功序列、終身雇用の日本型経営を形作っている。
そのような会社では、いかに考えなくさせるかが人の精神の多くを占める。「考えない」とはフィードバックが行われないということで、上からの指示は反論せずに受け、問題があっても上に伝えない。データに間違いがあっても報告しないということが行われる。パワハラをする連中は、表面はいかにも責任感が強い風を装っているが、本質は徹底した無法者である。
もうひとつは、徹底的に叱り飛ばすのに、怒られ慣れて相手の改善を引き出せなくなるパターンである。「犯人探し」とマウンティングによる関係が、相手を反省させられないという点で無意味と化している。そして同じ失敗を繰り返す。
ところがその反省しない者は、しばしばその会社で長生きする。労働法の関係で止めさせにくいというのもあるのだろうが、そのダメな社員と共依存の関係ができているのが原因らしい。共依存の加害者は被害者の「保護者」を演じ、その関係を永続させようとする。私も営業をしていた時に経験があるが、「辞めたい」と言ってもとにかく辞めさせてくれない。
彼ら加害者達がその時に説くのは、人と人との「絆」だったり、人間の「成長」だったりする。それらは全て、パワハラ加害者に都合のいい「神話」だった。
辞める者に保証がある訳ではない。それでも確実なことは、その時は何が何でも辞めるべきだということである。それでも「辞めた方がいい」と思えないほど自我が破壊されている者がその会社に残る。既に生産性以前の話である。

先ほど「フィードバックがない」と述べたが、下から上へ意向を伝えることはある。
しかしその意向は、パワハラ体質の維持のためにバイアスがかかった意向である。だから何度話を聞いても、パワハラの改善にも生産性の向上にもならない。
だから管理職は、現場の意見を聞かずに作業配分の適正化を図る必要がある。そのためには現場の作業に精通し、誤りを修正する柔軟さが必要である。今まで意見を聞いていない「立場の弱い者」の意見を聞くことも大事である。
しかしそのためには、管理職が現場の意見を無視しなければならない。今までパワハラ加害者を「正当」として出世した管理職達が、簡単に現場の意見を無視できるはずがない。
そこで、ある会社が管理職と現場の関係を断つために用いた手法を紹介しよう。
ある時期に、「用具の置場所をシンプルに」する運動があった。その運動の中で、いらない用具が廃棄されたり、床にラインを引いて置場所を決めたりするようになった。
私は当時、それが意味のあることなのかわからなかった。確かにそれまでの物の置場所はごぢゃごちゃしていたが、不便だと思うほどではなかった。また本当に必要な物まで廃棄されたりして弊害が出ることもあったのである。
今になってその運動の意味がわかった。おそらく管理職達はもっと上から「現場の用具の置場所を可能な限りシンプルに、現場の意見は聞かなくていい」と指示されていたのだろう。以降、現場のパワハラ加害者の意見はしばしば聞かれなくなるようになった。

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日本型ファンタジーの誕生(30)~『亜人』3:下村泉

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下村泉は、本名を田井中陽子という。田井中は母の再婚相手の姓である。義父はろくに働きもせず、母親がスナックで働いて生計を立てていた。
高校時代にバイトで100万貯めて家を出て彼氏と暮らすつもりだったが、目標到達を目前にして義父にその金を使い込まれてしまう。
泉は母の勤め先まで押し掛けて義父と別れるように迫るが、母は取り合わない。
傷心の泉は彼氏の元に赴くが、そこで彼氏の浮気現場を見てしまう。絶望した泉は、手首を切って自殺を図る。
そこに義父が帰って来て、泉に欲情した義父に強姦されそうになる。
抵抗した泉の頭を、義父は洗面台に打ち付け、泉は絶命する。そして蘇生し、亜人であることが発覚する。
義父は泉を警察に売ろうとする。母親は抵抗するが、目が覚めた泉が見たのは、義父への抵抗を諦めて引き下がるように見えた母の姿だった。泉は二人に気付かれないように家を出る。
泉は木賃宿のような所に住み、援助交際をして暮らす。数年経ち20歳を過ぎたが、病に倒れる。自分を護衛する亜人を探していた戸崎が訪ねた時は、泉は既に危篤状態だった。
戸崎は泉が亜人であることが通報された時の警察の録音記録を泉に聞かせる。その記録には、義父を止めるために母が義父を刺し、義父が母を刺して共に死ぬ状況が録音されていた。

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と言って、泉は再び死亡。そして戸崎の前で蘇生する。
以降、泉は戸崎の元で働くことになる。戸崎に別の経歴を与えられ、「下村泉」を名乗る。泉が亜人であるという記録は、「誰にも見つからない場所に保管してある」と戸崎が言う。母の墓の前で「今度は最後まで逃げない。やり直してみせる」と泉は誓う。

泉の上司である戸崎の泉の扱いは中々厳しい。

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永井の人体実験を見せながら、「亜人だとバレれば君もああなる」と脅す。中野を追跡した時には、泉に中野を車で轢くように命令したりする。
しかし戸崎は、そうせざるを得ないのである。
泉は女性である。亜人とはいえ、女性が戦えるとは思えない。だから戸崎は、泉が自分の命を守るために戦うように、機会ある度に泉を脅していく。
その環境で、泉は耐えている。普通の女性なら逃げ出す環境で、泉は踏み留まっている。フォージ安全ビルの戦いでは、「こんな危ないこと女性にさせられるか」と泉を庇う中野に、「私は仕事をサボる気なんてない」と返して積極性を見せている。
これが、泉が母に誓った「逃げない」の意味である。

下村泉は「見棄てられたヒロイン」だが、大抵の「見棄てられたヒロイン」が、男に「女性を救え」というメッセージを発しているのに対し、泉が特徴的なのはむしろ女性に対して警告していることである。

『鏡面の波』のPVで女子高生が男子高校生に告白されそうになって逃げ出し、光の矢が刺さるシーンがある。
なぜそうなっているのかといえば、それが「逃げるな」と女性にメッセージを発しているからである。
泉が逃げないのは、自分を救ってくれる人間がいるのを見逃したくないからである。自分を救ってくれる人間を見逃した時、大抵の女性はその人物を憎んでいる。実際泉も母を憎んだ。
女性が自分を救ってくれると信じる時は、それはその女性を愛する時、男に限れば、セックスした相手であることが多い。
しかしここに、

日本型ファンタジーの誕生②~主人公を傷つけるヒロインと距離感のあるヒロインたち - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

の疑問への答えがあった。「女性として愛さなくても、女性を救う男はいる」。戸崎に婚約者がいるのは、戸崎が泉を愛さないためである。
戸崎は泉が亜人である記録を保管などしていなかった。「だから今全て投げ出したっていい」と戸崎は泉に言うが、「なんとなくわかってましたよ」と泉は答える。
しかし作中には、泉が人並み以上に直感が優れていると思える描写はない。直感的でないのは泉の著しい特徴で、泉は全体的に無個性である。そのため「スゲー美人」と言われているのに色気を欠いている。
フォージ安全ビルでの戦いで、田中に手錠で拘束された泉は強引に腕を引き抜こうとし、戸崎に手伝うように頼む。
それは、戸崎の婚約者が死んだ直後のことだった。泉が腕から血を流しているのを見た戸崎は、「鍵を探してくる」と言ってその場を離れる。
戸崎が婚約者以外の女性への優しさを示す、いい場面である。しかし泉は、

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泉は、戸崎が婚約者以外の女性に優しくなれることをわかっていなかったのである。

戸崎はその後、戸崎の後釜となる後輩の曽我部が泉が亜人だと勘づいているのを知り、曽我部を殺し、その際自分も腹部を刺される。その傷を隠して記者会見に臨み、亜人への人体実験の事実を公表して後に絶命する。

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戸崎が命を懸けたのは償い、それも泉に対してではなく戸崎が関わった亜人に対しての償いのためである。しかし結果的に戸崎は泉を救った。

泉にはひとつの重要な役割がある。それは田中の救済である。
田中は「見棄てられたヒロイン」に対応する、「報われない男」である。
日本のサブカル作品では、「見棄てられたヒロイン」を「報われない男」が救い、また救われるという図式が繰り返されている。古くはゲームの『俺の屍を越えていけ』の黄川人と敦賀の真名姫の関係にその図式が見える。
敦賀の真名姫は人魚で、不労不死を求めた人間にその肉を食われるが、黄川人が傷を嘗めて直す。実は黄川人はラスボスの朱点童子なのだが、真名姫が主人公の一族に味方すると決めた後も、黄川人に「あんたが負けたら、あたしがその傷を嘗めて直してあげる」という。救い、救われるという構図は、他にも『キングダム』の政と向、『東京喰種』の金木研と霧嶋董香、笛口雛実の関係に見ることができる。
もうひとつある構図が、「見棄てられたヒロイン」と「報われない男」が結ばれて子供が生まれるという構図である。『僕だけがいない街』の雛月加代と杉田広美の関係にその構図を見ることができる。
佐藤に裏切られ、傷心の田中が厚生労働省の職員に連行されるのを、泉はは体当たりで車を止め、田中を救出する。仲間になった田中は、

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と、先々の展開を予想させる発言をしている。
「見棄てられたヒロイン」と「報われない男」の結婚は、二人の幸福を願う暗示である。

不幸な女性にを救おうとして男がしばしば手を焼くのが、その女性の非理性さである。理性的な意見を全く受け付けない。そして男は、不幸な女性に近付かないようになる。
しかし『亜人』は、不幸な女性に「理性的になれ」と言っているのではない。それはむしろ、女性性の否定に繋がりかねない。
亜人』は「なんとなく」信じられるものから逃げるなと言っているのである。泉はそうしてゴールにたどり着いた。

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新味の裏に反動を隠蔽した与野党

世間は、山口真帆を本当に『天気の子』にしようとしていた。

taishu.jp

これが、二回目の裁判の内容なのだろう。山口に弁護士が付かないのをいいことに、裁判で好き勝手に言う。
今をところ、この記事への世間の反応は鈍いが、安心してはいけない。
山口事件の一連の騒動は、改正組織犯罪処罰法の適用等を目論んだものと見ている。一時の山口批判一色のマスコミの動きとこじつけの酷さは、秋元の力ではない。
今回の事件の収束は荻野由佳等のメディア出演が攻撃されたことによるものだが、本来は山口擁護が正攻法である。そしてこのような別方面からの攻撃が、いつまでも続けられると思うべきではない。
橋下氏がコメント無しのリツイート名誉毀損に勝訴したのが話題になったが、メディア出演批判等は完全に侮辱であり、いつ名誉毀損で訴えられるかわからない。
文春が一度報道した山口の録音記事を削除したことを非難しなかった時点で、大衆は既に不利な立場に立っているのである。

president.jp

で、橋下氏は枝野氏に予備選挙によって候補者を一本化するように提案したが、枝野氏は「私の責任で候補者をまとめていく」と答えたという。

8月8日には『News Bar橋下』で
玉木雄一郎氏と討論。

lite.blogos.com

玉木氏が憲法改正国民投票で否決された時に安倍政権を倒しにいく考えているが、「嘘つき相手だと何をしてくるかわからない」と懸念を示すと、安倍政権に憲法改正決議を出させて、緊急事態条項などで反対して否決させれば安倍政権が倒れると指摘。

一方、N国の立花党首と玉木雄一郎氏がyou tubeで対談したことで大騒動になった。長島昭久議員まで批判する騒ぎになって、「何でこんなに騒ぐの?」って思ったくらい。
立花氏は与党入りを自民に打診していて、NHKスクランブル放送にする改革には与党入りしないと駄目だということで一理あっても基本ジョークなんだけど、なんと立花氏が国民民主党に与党入りを打診するという事態に。
自民から国民への与党入りの打診は実際にあったことらしくて、立花氏からの打診は筋違いでもそんなに変なことではない。
玉木氏は批判に対し、「たまきチャンネルは個人のチャンネルだから党とは関係ない」と釈明、しかしその後2回も立花氏と対談した。立花氏が辞任後に残る人材について語ると、「そういう人たち、うちと協力してやれるなー。これ、結構でかい話だよ」と玉木氏が言う事態に。

一方、橋下氏は就任早々の小泉環境相の発言を「ポエム」と批判、福島原発の処理水を福島だけで海に流せないなら全国で受け入れるようにと言い、大阪での受け入れを提案。



 

こんな煽り初めて見たwww。
また橋下氏の動きに百田尚樹氏が再接近。

 

お礼を言いながら、「何か変なものでも食べましたか?」とジャブを飛ばす。こういう感じは嫌いじゃない。嫌いになったらとことん付き合わない左派には真似できない芸当だ。
最近のプレジデントオンラインの橋下氏の記事はかなり攻撃的だが、小泉氏批判の最初の記事を見てみよう。

president.jp

ツイッターの内容と比べ、随分と穏当である。これは「これからもサンドバッグにしますんでよろしくお願いしまーす!」ということだろう。
しかし、三浦瑠麗氏は異なる見解を示している。

lullymiura.hatenadiary.jp

最近見ないような、アカデミックでリベラルな記事である。もっとも単純な小泉氏の擁護とも取ることはできない。
さらに小泉氏については「竹下型」だという発言も、

hochi.news

「これも立派な方なので」とあるが、「立派な型」の誤字のようで、「立派な方」つまり「立派な人」にしようとしてるんじゃないの?って思ってしまう。こうなるともう古典回帰運動である。もっとも小泉氏は、最近は方向を修正したようである。

福島原発の処理水の問題は、薄めれば問題のないもので、これを問題にするのは風評被害である。
しかし処理水の受け入れは、若干の自己犠牲の精神を伴っている。この自己犠牲の精神が右派に受け入れられて、リベラルとは違った流れを作り出している。この自己犠牲の精神の延長線上には、沖縄の基地問題もある。概ね良い流れだと言っていい。
一方安倍政権は内閣改造を行い、大臣未経験者を大幅に登用したが、これも新味を出すためである。しかしこれでは、参院選で勝った野党の真似をしただけではないか?
見せかけだけ新しくて、小泉氏のように古典回帰しようとしたり、その裏には反動が隠蔽されている。

そしてそれは、最近の立民と国民の統一会派にもいえることである。
国民民主党小池百合子氏の希望の党から生まれた政党である。旧民進党の分裂により生まれた政党だが、橋下氏も一枚噛んでいるため、元の鞘には戻したくないという思いはあるだろう。だから玉木氏と対談したのだと思う。
さらにそれに、立花氏が揺さぶりをかけた。
今なお立民と国民の合流の動きは進んでいるが、最近はちょっとおかしい。統一会派の後は「会派合流」と言ったりする。会派合流って何?難しすぎてわかんねーよ!
立民と国民が合流しようという動きをすればするほど、有権者は反動的に受けとるようになっているのである。だからいろんな言葉を使ってごまかす。
国民民主党は、護憲でない立場で、立民の後釜を狙う政党になるべきである。それが党が長生きする道である。

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ヘイトスピーチはマジョリティにも適用される。

またもや始まった。

news.nifty.com

私的な関係を裏付ける陳述かと問われると、「そういうようなことだと思います」と回答。また、被告側が山口との親しさを根拠に、暴行を否定しているのかとの問いに「そういう推測はできる主張」と明かした。

 

根拠のない誹謗中傷は避けなければならないが、直感的な発言までしてはならない訳ではない。遠藤弁護士は、山口に不利な発言を、根拠はなくてもぎりぎり言えるところまで言っている。

headlines.yahoo.co.jp

「被告が証言変更」とあるが、第一回公判と証言が変わったとはどこにも書いてないのである。 このようになっているのは、実につまらない理由である。NGTの吉成社長の発言は、おそらく第一回公判に基づいているからだろう。裁判の途中で証言を変更するのが有利になることはない。 ただこの裁判は茶番で、争いはなあなあに終わることが決められている。目的は山口を陥れることだからだ。そして吉成社長の発言が第一回公判に基づいていると世間は突っ込まないと、高をくくられている。 そして

news.livedoor.com

https://megalodon.jp/2019-0924-0253-57/https://news.livedoor.com:443/lite/article_detail/17114715/ で、山口の出廷の可能性を示唆。あくまで山口に揺さぶりをかけ続け、あわよくば山口を法的に有罪にしようという魂胆が透けて見えている。「そういうようなことだと思います」し、「そういう推測はできる主張」です。 

さて今回はこの記事。

vergil.hateblo.jp

ネトウヨ一般に共通する特性として、

勉強しない

何度誤りを指摘されても頑として認めない

とっくに否定された妄説を何度でも持ち出してくる

議論の前提となる概念に「オレ様定義」を振り回すため会話が成り立たない

無知なのにいつも上から目線

中身が何であれ最後に言い返した方が勝ちだと思っている(いわゆる「論破」w)やっぱり勉強しない

 

今や左派より右翼の方が優れている - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

で「左派より右翼が上」と書けば右翼をバカにする。

何この偏向情報?www - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

と同様完全に俺の記事と連動。そして

vergil.hateblo.jp

でも右翼をバカにする発言を繰り返して連動性を強調するがこれは…どうでもいいやwww。

この人確実に弁護士と官僚の犯罪を知ってるのに口が避けてもそのことを言わないんだね。 

それはそれで追求しなければならないことだけどう今は曲げて置くとして、先の記事。

このように、ヘイト・クライムもヘイト・スピーチもこの憎悪ピラミッドの中に位置づけられ、人種、民族、性などのマイノリティに対する差別に基づく攻撃を指している。このような経緯から、マイノリティに対する差別であり攻撃であるという両者の本質は共通するが、「ヘイト・クライム」は主要に有形力を伴う犯罪、「ヘイト・スピーチ」は有形力を伴わない言動による暴力を指す。(略)

 

とあるが、マイノリティへのヘイトスピーチが強調されているのはヘイトスピーチの本質的な問題性を述べているからであって、定義ではない。

ja.m.wikipedia.org

でも、ヘイトスピーチがマイノリティかマジョリティかで区別するとは書いていない。 

マイノリティへのヘイトスピーチが認められて、マジョリティへのそれはヘイトスピーチじゃなくて悪口?ヘイトスピーチと悪口の区別がついていないのは君だよwww。

 それに右翼を「勉強しない」っていうけど、、大抵の右翼はよく勉強してるよ。戦争問題なんか語り出すと洪水のような情報と未整理な主張で戦争問題について勉強するのが嫌になるくらいwww。彼らは大抵は「よく勉強するおバカ」なのである。

 君もそう。「よく勉強するおバカ」。我田引水の主張をして、識別能力も右翼と変わらない。 

「無知なのにいつも上から目線」というが、君もそう。本質的な勉強をしないという意味でね。

 上から目線?そんなのいくらでもやりゃいいさ。この日本ではマウンティングしないで議論で戦えないことくらい、多くの人が気付いている。 しかし上から目線で話した以上、相手の上から目線を批判することはできない。当たり前のことだ。

ところで、細々と個人ブログを書いているだけの私に、どうやったら「言論弾圧」などできるのか。そんな方法があるなら教えて欲しいくらいだww

 

はてなで一位にランキングされる力があって「細々と個人ブログを書いている」ね。

君には言論の責任は無いのね。だから「表現の不自由展・その後」で君達は負けたんだよ。 『何この偏向情報?www』でも書いたけど、普段リベラルで相手を叩いておいて、都合が悪いとリバタリアンで反論するダブルスタンダードを展開しても、数で負けるだけだ。そう、右翼はリベラルに基づいて「表現の不自由展・その後」を批判したのである。

 数で勝てないなら線引きを明確にする戦略に切り替えるべきなのに、反省したくないから負け犬に徹する。「全て相手が悪い。自分は悪くない」という物語を自分の中に作り、そこから出ようとしない。そして今度は永遠に負け続ける。勝てなく当然である。


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今や左派より右翼の方が優れている

taishu.jp

で司法関係者が山口真帆についてぶつぶつと語っているのを

山口真帆を救えない奴ら - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

でデマだと書いたが、後で本当にそうじゃないかと思った。少なくともそう語った「司法関係者」はいるんじゃないかと。
山口事件に「司法関係者」が関わったのは、推測を交えて3回ある。一回は山口が示談をした時、2回目は第三者委員会の調査、3回目はNGTと犯人の裁判の時。
裁判では、山口は呼ばれなかった。呼ぶはずがないのである。「司法関係者」の話が犯人の裁判での証言ならば。
もし山口が裁判に呼ばれて犯人の証言を聞けばそれに反論し、犯人を偽証罪にすることも不可能ではない。
しかし山口が裁判に呼ばれず、犯人とNGTが口裏を合わせればそれは「証明された」ことになり、マスコミがその内容を書くのは「問題ではない」ことになる。そうなれば司法がらみの陰謀である。

さて、今回は維新の記事。
大阪万博が決まって都構想実現の機運が高まると、右翼の大物が続々と橋下氏に接近してきた。上念司氏、有本香氏、百田尚樹氏などである。
その後維新は都構想のためのダブル選挙を敢行。松井氏、吉村氏とも当選し、府知事と市長が入れ替わった。その間藤井聡氏が都構想を批判したが、

president.jp

と小西禎一元大阪副府知事の主張と逆なのを露呈してしまった。
さらにその後、橋下氏は政教分離を否定して靖国神社の国有化を主張し、百田氏と論争した。私は政教分離否定には反対だが、それでもこの論争は見応えのあるものだった。特に極東軍事裁判でなく、日本で基準を作って分祀を行うというのは非常に斬新だった。
後に再び論争になった時は決裂状態になったが、私は右翼は完全には橋下氏と手を切っていないと見ていた。実際、有本氏と上念氏が橋下氏に再接近している。

藤井氏のような官僚と右翼はケインズ主義という点で、元来親和性があった。
だから都構想でも反対に転じて良かったのだが、右翼は緊縮財政ともいえる維新を支持した。
そうなったのは、右翼が自分達なりの「正しさ」 を求めた結果だろう。
もちろん右翼が全て正しいというのではない。森友問題で安倍首相無謬説に拠ったように、右翼にはたくさんの間違いがある。しかしたくさんの間違いがあればこそ、どこかに「正しさ」を求めるのである。その「正しさ」を右翼は都構想と維新に求めた。
別に緊縮財政とケインズ主義は矛盾しないのだが、右翼が逆ベクトルに向かったという印象はある。
ケインズ主義、歴史修正主義、自主憲法、永続敗戦構造が、従来のステレオタイプな右翼のあり方だったが、ここにきて、このステレオタイプな型が崩れてきている。さらにれいわ新選組MMT理論を唱えたことで、ケインズ主義は右翼の専売特許ではなくなった。
もし維新が、将来ケインズ主義的な主張をすることがあれば、ケインズ主義を捨てて緊縮財政論に転じる右翼が出るのではないかと私は思っているが、そうなるのは維新に接近しなかった者だろう。もし私の考えが当たっていれば、右翼はその時大分裂を迎え、そのキャスティングボードを握るのは維新になる。

この記事は、右派と左派のどちらが優れているかを論じるためのものである。
今は、右派の方が左派より優れている。
確かに右翼は多くが横暴で、話もろくに噛み合わない。一方左派は多くが理論的である。
しかし思うのは、根本的なところは変わってないんじゃないかということである。
確かに左派は理論的だが、都合が悪いと無視する。無視するくせに、異なる意見の者に対する根本的な敬意がない。
橋下氏はダブル選挙の時は対抗馬の小西氏、靖国論争の時は百田氏に敬意を持って接した。
「考えが近いんだから、そのくらいの差異で敬意を失わないのは当然」と思うならそれは当たらない。橋下氏は韓国に同情的だし、維新は日韓関係が最悪なこの時に議員を韓国に派遣している。今や右派の方が幅が大きいのである。
左派は維新について語ることが少ない。
その理由は、橋下氏や維新は簡単に論破できないからである。橋下氏の政界復帰にしてもそうで、都構想が可決すれば橋下氏は政界復帰するとみんな思っているが、橋下氏が否定しているので言わない。
そうやって無視、無視、無視。その結果言えることがなくなってしまっている。言えなくなっているのに進歩しようとしない。
右翼はもはや違う。「この点では妥協しないけど、この点は支持する」という側面が、右翼の中で強くなっている。左派は「この点で駄目だから他の点でも駄目」が基本スタイルである。
それが派遣社員に対して良く表れた。左派のリベラルは派遣へのダブルスタンダードのためのものだが「氷河期世代」という形で派遣にスポットが当たると、リベラルが後退し、護憲色が強まるという「先祖返り」を起こしている。
戦略的誤りである。左派の強化は未来のない護憲を捨ててリベラル色を強める方向にある。
山口真帆の件では、

山口真帆を救えない奴ら - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

では大部批判したが、それでも山口に同情的なのは右派的な人達だと思っており、その点は評価している。このように言うのは、山口に冷淡なのは左派の方で、むしろ山口の破滅を望んだと見ているからである。
このように、右翼は左派よりバラエティーに富み、異なる意見の者に敬意を持つ幅が広く、柔軟で進歩が可能な層となっている。

左派には、自分達が理性的だと思っている限り、進歩は訪れない。今左派が右翼に負けているのも当然である。大いに反省すべきだろう。

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日本型ファンタジーの誕生(29)~『東京喰種』4:ドナート・ポルポラは「鬼子母神」

瓜江久生とドナート・ポルポラが戦った時、ネットではドナートの圧倒的な強さに湧いていた。
「フレームアウトして暴走した瓜江の強さはドナートの指一本分」という論調で書いている者が多かったが、私は違和感を持っていた。
最近のマンガは、指一本で敵を倒せるようなパワー偏重のスタイルを採らなくなり、むしろパワーアップを否定するスタイルが増えている。『東京喰種』も「供喰い」がパワーアップになるが、精神の狂うというデメリットつきになっている。そんな『東京喰種』において、今さらパワー偏重のスタイルを採るだろうか。

『東京喰種』には、公表されていない、隠された設定がいくつかあると思う。そしてそれは、作品を見ていくことにより論証できるのである。
「隻眼の梟」は赫包が6つから8つあることが明らかになっているが、それは戦闘中に喰種捜査官が視認したことによるものである。篠原もカネキと戦った時に、カネキの赫包の数を意識している。
喰種捜査官にとって、戦っている喰種の赫包の数は重要な情報であることが、以上からわかる。
赫包を視認するのは、赫子の噴出でわかるのだろうが、赫包の形状についてはイメージ図しか描かれていない。赫包が球形のものだというのもイメージである。
大きさも、体内にこんな異物があるのは不自然だろうと思える大きさで描かれている。
赫包は、生まれた時には「二種持ち」等でない代わりひとつしかない。そしてその位置は「羽赫」「甲赫」「鱗赫」「尾赫」の位置に合わせて肩、肩甲骨、腰、尾てい骨あたりにある。
赫包の数が増えるのは、「供喰い」によってである。そして赫包の位置が戦闘中に視認できるものである以上、最初の赫包と同じ位置にあっては視認が難しいだろう。だから二つ目以降の赫包は、体内のどこにでも発生すると考えられる。
瓜江がドナートの分身を倒すと、ドナートの指が消える。これで「フレームアウトした瓜江の力はドナートの指一本分」と言われるがそうではなく、ドナートの分身は分離赫子であり、その赫包はドナートの指にあった。「指一本分」の力ではなく、「赫包ひとつ分」の力なのである。

瓜江と髭丸がドナートに遭遇すると、早々に窮地に陥る。

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いきなりヒゲの腕が飛ばされるwww。
なにしろ赫子の予備動作がないので、避けたり防いだりするので精一杯である。瓜江は❌印が集合した赫子に天井に抑え込まれ、瓜江が動けない間に、ヒゲのもう一本の腕がもがれる。
瓜江はドナートと「世間話」をして気を引き、ヒゲを逃がす。追おうとするドナートを、瓜江は赫子を振り払って抑え込むがドナートの攻撃で腹に穴を開けられ、窓ガラスで頭を削られて放り投げられる。そこには髭丸の叔父が死んでおり、瓜江は死を予感する。
それでも立ち上がる瓜江。その時、瓜江の両眼が赫眼になる。

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そんな瓜江に、ドナートは語りかける。

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瓜江は「ちぎゃう!!」と否定するが、ドナートは無視。

ボロボロになるまで戦い食事も喉を通らない。それがお前の選んだ事か?認めてもらいたかったか、褒めて頭を撫ぜられたかったか。その残滓のごとき想いを周囲にぶつけて果たそうとしたのだろう。まっこと無為だな。お前がどれだけ栄転しようと、お前がどれだけ成果を残そうと、お前が満たされる事はない。お前には本当の家族がいないから。瓜江久生、私は断言しよう。お前が真に恨んでいるのはお前の父親だ。お前を一人残して逝った弱い人間を恨み続けてきたのだ。

 

そう言うドナートに瓜江は一閃、ドナートは消滅する。もちろんそれは分離赫子で、ドナート本体は指が一本欠けただけ。

しかし瓜江は正気に戻らない。
その後才子とシャオがやってくるが、その時の瓜江は、

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才子の絵そっくり!!!

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才子は「瓜江を救う」ために瓜江と戦う。

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このためのネーミングとニート設定かーい!!
瓜江は「全部俺に押し付けやがって、佐々木クソ佐々木」「俺は強い」「俺を見ろ」とぼやきながら才子と戦う。そんな瓜江の顔を才子はその「爆乳」に埋め、

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愛の告白だー!!(゜ロ゜ノ)ノ
こうしてシャオが瓜江の赫包付近にRC抑制剤を打ち、瓜江を鎮静化する。しかし才子は「瓜江は自分の力で戻ってきた」という。

ドナート・ポルポラはロシア系の喰種で、孤児院を経営しながら、裏ではその子供を喰っていた。そのドナートに育てられたのが亜門鋼太朗である。ドナートは亜門だけは殺さなかった。
亜門はなぜドナートが自分を殺さなかったのかをずっと考え続けていた。しかしその理由は亜門にではなくドナートにある。
それを説明するために、

日本型ファンタジーの誕生⑲~『アイアムアヒーロー』3:「クルス」と「巣」の意味 - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

日本型ファンタジーの誕生(28)~『不思議くんJAM』も日本型ファンタジーだった - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

の二つの記事が必要だった。
アイアムアヒーロー』では、「クルス」は「学校の王」ジョックに代わる存在で、「巣」の意思決定は「女王蜂」にさせていた。「クルス」の存在はあくまで「女王蜂」あって成立していた。
『不思議くんJAM』では、石狩不思議=王子シッダルディがジョックで、「犠牲の血の冠」の赤石知覧を見れば、「冠」が何かかがわかった。『不思議くんJAM』はジョックからクイーン・ビーを見た構成になっており、ジョックから見て、クイーン・ビーは「装飾」なのである。
ドナート・ポルポラは、ピエロの中で「クラウン」と呼ばれる。後に「二代目クラウンからピエロを譲り受けた」と語っている。
ドナート・ポルポラは、カネキを「隻眼の王」にして「世界の運命を決めた」エトと並ぶ、もうひとりの「世界の運命を決めるヒロイン」である。
ではドナートが女に見えるか?
見えないから、作者は苦労している。

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ドナートは小児を専門に捕食する喰種で、女性が専門だとは書かれていない。
なお、ドナートが六月透を「美味そうだ」と言ったことはあるが、六月は当時男で通していたので、ドナートが六月を女性だと見抜いたかは定かではない。
作者は苦し紛れにドナートに女の話をさせて、この場だけはドナートは女なんだと、読者にわからせようとしている。それでもなかなか女には見えないが、作者の意図は髭丸を逃がすためとはいえ、喰種と捜査官が普通に世間話を始めるのだからすぐにわかるwww。
そしてドナートの言うことは気持ち悪いが、要は「子供も女も喰っていない」と言っているのである。
ドナートは、500人の自分の子供を養うために人間の子供を捕まえて喰っていたが、釈迦に子供のひとりを隠されて半狂乱になって探し回り、以後改心して子供の守り神となった鬼子母神である。
そして瓜江vsドナートの戦いは、鬼子母神=「世界の運命を決めるヒロイン」であるドナートが、瓜江を変えるための戦いである。

それでは瓜江久生とは何者か?
瓜江は、佐々木排世=金木研を表の主人公とする『東京喰種:re』の裏の主人公である。
そしてこの二人が対照的なのは、カネキが「自責」の人間なのに対して、瓜江は「他責」の人間であることである。
両眼が赫眼になった時の瓜江が「おれつ」と言うのは、「俺強え」ということなのだろう。自信と自我自賛は「他責」に支えられている。何か都合が悪いことがあると他人のせいにしているから、自分への評価が崩れない。そう、それはまるで

「成長体験」 - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

である。
こうなると、嫌っている相手から感謝されたり評価を受けたりすると、素直に受け取らなくなる。不知吟士に警告した時は、不知を追い詰めるためだったが、逆に感謝されて「気持ち悪い」と思ったりする。一方黒磐巌の評価を受けた時は、自信を失っていたので「俺はそんな奴じゃ…」となる。
カネキとの共通点もある。それはクイーン・ビーにフラれることである。カネキが神代又栄に勝てないのは、リゼの代わりに義父がカネキをフッたからである。
瓜江も六月にフラれる。しかし単にフラれるだけではない。
瓜江は安浦晋三平を嫌っている。不知の死で仲間を守るために強くなることを誓った瓜江だが、晋三平への態度は「まだまだだな」と思わせる。
しかし実はそうではない。瓜江はマザコンが嫌いなのである。マザコンならぬオバコンの晋三平は、100人のオッガイの「母」となる六月に傾倒していく。カネキがリゼを殺さざるを得なかったのに対し、マザコン嫌いの瓜江は六月を救う。
オッガイといえば、両眼が赫眼になった瓜江もオッガイである。
オッガイについては、「クインクスとは作りが違う」とあるだけで特に説明がないが、これも「公表されていない設定」で、半喰種が「他責」をするとオッガイになるのである。瓜江の他にオッガイになったのは安久クロナで、双子のナシロの死を受け入れず、嘉納に元に戻してもらおうと思い、「できるのにやらないだけ」と自分に言い聞かせることでオッガイになる。

主人公らしく、瓜江には対応するヒロインもいる。それが米林才子である。
東京喰種:re』には、時々誰かわからない女性の絵がある。

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誰?
またこんなカバーの折り込みも。

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才子?
そして10巻以降のオビには謎のクインクス1期生が。

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才子が細いwww。
この絵は1巻のコマの使い回しだが、その時点で才子は未登場なので細いのである。
こうして一部確証はないが、ヒロイン性の薄い才子を実はヒロインだと気づかせ、瓜江が裏の主人公だと気づかせる細工がされているとわかるのである。
瓜江に「他責」を止めさせるのがドナートの役割だが、瓜江は「自分で捜査官になると選んだ」と、父親に認められるためだというドナートに逆らう。
ここに、父親の肯定と否定がある。
瓜江は父親のせいにしないことで父親を肯定したが、父親の認められるのを否定したことで父親を否定した。
ドナートは、父親のせいにしろと言っているのである。「どうした?こっちにこないのか?」と。それを瓜江はギリギリで踏みとどまった。だから才子の言う通り、瓜江は「自分で戻ってきた」のである。

瓜江はSSSレートの喰種「うろんの母」によって窮地に立たされる。
その時瓜江は「不知、お前がいてくれれば」と思う。
しかしこの時に気付くのである。自分がまた「他責」をしていると。
不知が死んだ時、「恨むなら自分の弱さを恨め」と言ったカネキの言葉で、瓜江は仲間のために強くなろうとする。しかし「自責」でも「他責」でも乗り越えられない壁があるのに気付いた瓜江は、第三の「受け入れる」道があることを知る。
この時、瓜江の甲赫の赫子が剣と盾の形に変化する。

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一方、黒磐巌が瀕死の状態になっている。
黒磐は瓜江の父の元パートナーで、瓜江の父が死んだ時に助けられず、その事を悔いていた。黒磐は瓜江に謝るが、「あんたは悪くない」と黒磐に言う。
瓜江にこのような役割を持たせているのは、瓜江がエリートだからである。
「持てる者」と「持たざる者」では、「持てる者」がより多くの不遇を「受け入れる」べきで、「持たざる者」に受け入れさせるべきではない。エリートならなおさらである。

その瓜江の最重要の仕事、それは「龍」になったカネキの救出にある。
カネキの救出については、喰種との共同戦線は丸手斎が、カネキの掘り出しはトーカが行っており、瓜江はそのサポート役に徹しているが、前者は役職上の問題、後者は理念的な問題である。
「龍」が 何なのかについては、あえて語らないでおく。
ここで重要なのは、カネキの救出に誰が活躍しようと、構成上カネキの救出に一番必要なのは瓜江でだということである。。
『東京喰種』だけではない。
亜人』の永井圭と海斗の関係もおそらくそうである。「フラッド現象」はおそらくそのためにあるのだろう。
進撃の巨人』のエレンとジークの関係もそうである。最近は話が複雑化しているが、基本形が同じなのは間違いない。窮地にたった「持たざる者」の救出には、エリートの存在が絶対に必要だということを、これらの作品は語っている。

しかし、瓜江ははたして

日本型ファンタジーの誕生⑯~『進撃』6.新しい日本人の創生 - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

で述べた「怪物でない人間」だろうか?
瓜江は才子と結ばれていないし、特等になれてもいない。
理由のひとつは、瓜江が黒磐に「あんたは悪くない」と言ったことだろう。それは必要なことであっても、自由意思の侵害である。またその瓜江が裏の主人公なのは、行動に問題があっても、それが必要だからなのである。

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