坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

「合法的な請負」のほとんどは労働者供給事業

偽装請負は日本型経営を殺戮装置に変えた - 坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

で、私はウィキペディアでさえ「偽装請負では労働基準法が適用されない」と嘘が書かれているのを指摘した。
それから二年後の現在、この嘘をつく姿勢は全く変わっていない。

偽装請負 - Wikipedia

ところが、民法におけるいわゆる典型契約としては、類似するものとして請負という契約類型が用意されており、請負人にはいわゆる労働法の適用がないのが原則である。

 

こんなことは知っている。しかし偽装請負で働く社員は自らが請負契約をしたのではない。

なお、法令の適用上、特定の契約が雇用契約なのか請負契約なのか、などの契約類型に関する判断は、当事者が用いた用語や名称に拘束されることなく、実質的な内容の判断によりなされる、というのが一般的な解釈である。

 

誰だこんなことを言っているのは。
偽装請負が実質的に派遣かどうかは「実質的な内容の判断」によりなされるが、雇用契約と請負契約が混同されることなどない。どれだけ偽装請負という犯罪を隠したい者がいるのかを示すいい例である。
私が偽装請負で働いたところは会社が請負契約をして、社員とは労働契約を結ぶ。請負会社と社員は使用者と労働者の関係にあり、労働基準法は当然適用される。第一派遣会社が労働者と請負先の請負契約を斡旋したらそれは非弁行為である。弁護士が沈黙していられるような問題ではない。

偽装請負を違法とする根拠はこの告示である。

・労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(◆昭和61年04月17日労働省告示第37号)

(1) 自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること。

 

この第二条二項八の(1)は、今のところそれほど問題になっていない。請負先から機械をリースして合法として終わっている。
弁護士などでたまにこの点を強調する者があるが、大抵の弁護士は、この点にそれほどの関心がないと思っている。今のところは請負先と請負社員の間に指揮命令関係が存在すれば偽装請負であり、あくまで違法だから問題なのである。合法的に労働法が適用されないからではない。これ以上嘘を言うのはやめてもらおう。

そして偽装請負が盛んな時代は終わり、いくつかの会社を見た限りでは、「合法的な請負」を行っている会社もある。つまり指揮命令関係さえ請負会社の中で確立すれば「合法」になるのである。

偽装請負がなぜ違法なのか、その根本のところで実に多くの人がミスリードをしようとしている。一方で本当のことを言う者はほとんどいない。というより私は本当のことを言う人に会ったことがない。
偽装請負が違法なのは、労働者供給事業だからである。
労働者供給事業については、労働者派遣法には書いていない。職業安定法第44条にある。

労働者供給事業 - Wikipedia

労働者供給事業においては、労働者供給事業を行う者の一方的な意思によって、労働者の自由意思を無視して労働させる等のいわゆる強制労働の弊害や支配従属関係を利用して本来労働者に帰属すべき賃金をはねるといういわゆる中間搾取の弊害が生じるおそれがある。

 

つまり中間搾取と労働の民主化のために労働者供給事業は禁止されているのである。
ならば、請負契約をしても請負元が労働者に払った賃金を引いて、請負先が直接業務を行うより利益を出せなければ労働者供給事業と見なすべきであろう。それは中間搾取を防ぐためであり、もちろん労働者を低賃金に抑えて利益を上げるなどはあってはならないことである。そして裁判ならば、判決を得ることで「合法的な請負」という中間搾取を止めさせることができる。

「昭和61年04月17日労働省告示第37号」にある機材を自己の負担で調達するなどは、本来派遣と請負の区分には必要ないかもしれない。
しかしこのように区分された以上、そこには意味が必要である。
昭和61年04月17日労働省告示第37号第二条二項のイ。

業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。

 

請負業務には相当の資力が必要であり、資力が必要なのは「労働者供給事業にしない」ためである。そもそも「自己の責任と負担で準備」とあるのに請負先から機材をリースされてはいけないだろう。
また第二条二項八の(1)の「又は材料若しくは資材により、業務を処理すること。」は、単一の事業者からの請負では請負として成立しないと見なすべきである。製造業ならば、単一の事業者が途中まで加工した製品を仕上げることで業務請負とするのは違法だということである。
このような条件をクリアできる事業者がいるだろうか?もしできないというならば、業務請負に関するいくつかの法は実質やってはいけないことの裏付けをしているに過ぎないのである。
大体コロナが収束すればすぐにどの業界も人不足になるというのに、中間搾取がいくつもあるのを放置していること自体が異常なのである。

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