坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

派遣の問題を解決するには30年かかる②

日本で労働運動が盛んになったのは、マルクス主義は入ったからである。マルクス主義は明治期に輸入され、戦前の大政翼賛会の時期を除いて日本の労働運動の精神的支柱となった。
マルクス主義は労働運動だけでなく、進歩的文化人の精神ともなった。日本のマルクス主義は冷戦時代に共産圏とも関わりを持った。時に連合赤軍などの跳ねっ返りを生んだりしたが、冷戦時代は思想全体が否定されることはなく、進歩的文化人労働組合が共に繁栄を謳歌した。
リベラリズムは西洋から輸入され、フェミニズムを核として得に2010年代に繁栄した。リベラリズムの繁栄が、偽装請負の問題が頂点に達し、リーマンショックにより偽装請負の問題が吹き飛んだ後に来たことは興味深く、私は何らかの関係があると思っているが、それはともかく、時に保守主義そのものになりがちなネオリベラリズムの優位にリベラリズムが立ったことは、リベラリズム隆盛の大きな貢献だった。
要するに、日本の個人救済の思想は全て外来のものであるということである。
日本独自のものは戦後の平和主義や、そこから生まれた自虐史観に対抗する歴史修正主義である。平和主義は非暴力主義と関係がありそうで実はない。極めて閉鎖的な、日本独自のものである。
この平和主義が今ウクライナの戦争で断末魔を挙げているのだが、これに対抗してきた右翼は冷戦時代、日陰に回らざるを得なかった。児玉誉士夫笹川良一といった右翼の大物は、暴力団との関係も指摘されたりしている。もっとも彼らは経済界のフィクサーだった。財界の中心的人物なら日向を歩いているように見えるが、思想的には日陰だったのである。そしてこれらの日本の思想に、個人救済はない。

現在の派遣労働者は、これらの思想的恩恵を全く受けなかった。
1987年に労働者派遣法が制定され、すぐに冷戦が崩壊し、またサッチャリズムレーガノミクスに始まった新自由主義からグローバリズムへという流れの中で、派遣の問題は長い間棚上げにされてきた。2000年代に偽装請負に問題がフォーカスされたが、リーマンショック偽装請負の問題も吹き飛んだ。そもそも偽装請負の問題の取り上げ方自体が、派遣社員を同一業務に3年でなく、半永久的に搾取要員として扱っているというところから目を背ける取り上げ方だった。
そしてわ個人主義の弱い日本では、思想的背景がない限り個人救済の運動は起こらないのである。
https://sakamotoakirax.hatenablog.com/entry/2022/09/22/024240?_ga=2.4428147.1739893514.1643458955-131981009.1625566099
で私は派遣の問題を解決するには30年かかると述べたが、事態はより悪化している。
派遣社員が直接雇用される権利があることが終身雇用を打破する唯一の手段であることは、知識人は皆知っている。しかし派遣の問題を語ることができないため、終身雇用の問題に切り込むことすらできなくなっている。
このような状況で起こっているのが知的退廃である。人文科学、社会科学は背を向けられる一方である。この知的退廃はこれからも深刻化し続けるだろう。
マンガでもファンタジーばかり、またリアルなフィクションであっても、必ずファンタジー要素が絡んでいるのは、派遣の問題を取り上げられないからである。多少でも派遣の問題が絡んでいるのは、読んだことはないが『逃げるは恥だが役に立つ』だけだろう。
先の記事で述べた自己啓発系の人々も、今の状況を変えたいとは思っているのだろう。状況を変えるために何かをしたと思いたくて、それで私にやるように行って、それで自分は変わる気が全くなく、私に責任転嫁することしかできない。私は自己啓発系の人々といくら話をしてもダメだと思った。

金大中太陽政策以来、韓国が親北朝鮮の政策を採ってきたのは、南北朝鮮の統一が名目である。
しかし朝鮮半島を統一するためには、核保有国となった北朝鮮の自壊を待つしかない。その間北朝鮮を利する行為は南北統一を先延ばしにするだけである。しかし韓国は、この利的行為をこれまでしばしば行ってきた。
現在の尹錫悦大統領は、先のアメリカのペロシ下院議長の訪台の後もペロシ氏に会わず、しばしば親中国的な態度を取っているが、尹大統領は賢明である。尹大統領は親中的な態度により、親北朝鮮的な風潮に流れるのを矛先を逸らすことで抑えているのである。尹大統領のように親北朝鮮の風潮を抑えない限り、南北統一の日は永久に来なくなる。
沖縄では故翁長知事が亡くなられたことにより、その後継者を自称する玉城デニー氏が「普天間でも辺野古でもない」と言って知事に当選した。それが今では「基地のない平和な島」と主張している。
私は最近、玉城氏は故翁長知事の精神的な後継者ではないと思うようになっている。
断っておくが、私は現状を見る限り、普天間基地の県外移転さえ難しくなっていると思っている。
故翁長知事の主張は沖縄の中継基地論で、有事の時に十分に対応できる論ではある。問題は普天間基地を県外移転した場合、中国がどう思うかなのである。
日米から見れば軍事力の減少でなくとも、中国から見れば弱気、攻める好機と見られる可能性が、普天間基地を県外移転した場合にはあるのである。
しかし中国の問題がなくても、沖縄の基地が県外移転される可能性は、玉城氏の「基地のない平和な島」という主張によりなくなってしまった。
https://sakamotoakirax.hatenablog.com/entry/2016/07/02/060403?_ga=2.234535006.1739893514.1643458955-131981009.1625566099
で私はケネディ神話について述べた。ケネディが多様性を認められる世界と、核不拡散の両方を実現する人物と思い礼賛するほどに、現状が固定されるとこの記事で述べた。
つまりこの3つの例は、現実に根差さない、矛盾のある目標を掲げれば掲げるほど、現状の問題が解決されるどころか、現状が固定化され、問題が永久に解決されなくなることを示しているのである。
このような現状を固定化してしまう共同幻想に対抗するためには、徹底的に現実的な手段を取り続けることである。尹錫悦大統領のように、故翁長知事のように。
私に対して「できる!できる!」という自己啓発系の人は、自分では何をやらない。ならば他の人も何もしないだろう。そこで私が「派遣の権利を取り戻す!」などと言おうものならどうなるか。
誰も派遣の問題について語れないのである。
ならば私に派遣の問題に取り組むように勧めた者達は、私を応援するが自分は何もできないだろう。それは悪意はなくとも、派遣に救いはあるように思わせ、合わせて派遣とそれ以外の分断は存在しないように見せていくことになる。つまり私は、派遣が救済されるという虚構の核となり、実際は永遠に派遣を救済しないための装置になってしまうのである。
この虚構に対抗するための、徹底的に現実的な手段、それは派遣の問題は解決するのに30年、場合によってはもっとかかると述べることで、派遣社員に救済はないこと、また分断は明白であると述べることである。知的退廃に逆らって自らのしたいことをする人間が多数現れ、それが波となって派遣社員達に届いた時、派遣の問題は解決できる。
派遣社員に救済はない。ただどう生きるかという問題があるだけである。

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