イリアスとオデュッセイア
『イリアス』と『オデュッセイア』は、さすが古典と言われるだけあって、その背後にしっかりとしたロジックがある。
『イリアス』の始まりは、アポロンの神官クリューセースの娘クリューセーイスがギリシャ軍に捕らえられ、ギリシャ軍の総司令官アガメムノンに与えられるところからである。
アガメムノンは王の中の王とみなされ、ローマ皇帝の比喩とされた。クリューセースは娘を返してもらおうとするが拒絶され、クリューセースはアポロンに、ギリシャ軍に報いを与えるように祈る。アポロンはその願いを聞き届け、ギリシャ軍の上空から銀の弓で無数の矢を射掛け、ギリシャ軍に疫病を蔓延させた。
アガメムノンはクリューセーイスを父親に返すが、諸将に代償を求める。
アガメムノンの要求に対し、アキレウスは戦利品を分配し直すべきではないと主張し、「私に戦う義務はない。しかしあなた方の兄弟の為に戦闘に参加している」というと、アガメムノンは「そなたが義務で戦うのなら、我らは汝なしでも戦うことができる」と言って、アキレウスの戦利品であるブリーセーイスを取り上げる。
アキレウスはアガメムノンの仕打ちに怒り、母である女神テティスに祈って、ゼウスがトロイア側に味方してギリシャ軍を追い詰めるように願った。
ゼウスはその願いを聞き届け、アガメムノンにある夢を見させる。それはギリシャ側の武将ネストールが、「オリュンポスの神々は皆ギリシャ勢の味方をすることになったから、総攻撃をすればトロイアは落ちる」と説いた夢だった。
アガメムノンはこの夢を信じて総攻撃をかけるが、次第に劣勢になり、ギリシャ軍は総崩れになる。
この時アキレウスは戦闘に参加していなかったが、友人のパトロクロスがアキレウスに出陣するように求める。アキレウスが拒絶すると、パトロクロスはアキレウスの鎧を借りて出陣する。
パトロクロスはトロイアの総大将ヘクトルと戦って撃たれ、アキレウスの鎧も奪われてしまう。
アキレウスはアガメムノンと和解して、アガメムノンはアキレウスにブリーセーイスを返す。アキレウスはヘクトルと一騎討ちをして、ヘクトルに勝利する。
ギリシャ軍の総司令官であるアガメムノンには、より良い戦利品を求める権利がある。しかし何らかのアクシデントでそれを得られなかったからと言って、部下に代償を求めてはならないのである。
それを強いてアガメムノンが代償を求めたからギリシャ軍が劣勢になったのであって、それはアガメムノンの責任である。
アキレウスは友人の仇を討つためにヘクトルと戦ったのであって、敗戦の責任をとって戦ったのではない。
『オデュッセイア』は、トロイア戦争終結後のオデュッセウスの苦難を語る物語である。
オリュンポスの神々のほとんどが、オデュッセウスの故郷イタケーへの帰還に賛成するが、息子をオデュッセウスに殺されたポセイドンだけがそれを許さず、様々な困難をオデュッセウスにもたらす。
一方故郷では、妻のペーネロペーが40人の求婚者に言い寄られている。オデュッセウスは死んだと思われていて、求婚者達は遺産が目当てだった。求婚者達は王の不在をいいことに王宮で享楽に耽り、「王の不在は国の不備」を理由に事態の解決を迫って、「機織りの織物を完成させたら、求婚者の誰かと結婚する」とペーネロペーに約束させた。
オデュッセウスの息子のテーレマコスは、父親の行方を探す旅に出る。
オデュッセウスは苦難の旅で仲間の全てを失いながらも、故郷に帰還する。そしてペーネロペーへの求婚者を全て討ち果たす。
苦難を乗り越えたものには報いがあるのである。
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