坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

現場をいかに回すかを考える

「声掛けしろ」
と、
https://sakamotoakirax.hatenablog.com/entry/2014/11/10/014748?_ga=2.215901463.1860501792.1537344223-543134467.1537344223
の食品会社ではよく言っていた。
「声掛け」とは、何かトラブルが発生した時に、作業員同士で指示をだし合って対処することである。
(稲森和夫のアメーバ経営みたいだな)
私は思った。違いは2つ、ひとつはあくまでトラブル対処の話であり、創造性はないこと。もうひとつは声掛けしても何の見返りもないことである。特に私はバイトなので、昇進などは有り得ない。
何しろ機械トラブルはよく起こることである。その度に管理職の者が機械の修理にかかる。
機械の修理にかかった管理職は指示を出さない。だから作業員はそれぞれの持ち場で作業をするだけである。機械トラブルのせいで製品が流れなくなっても、作業員が自分の判断で動いたりすることはまずない。
(こういうのは上意下達でやってくれるといいんだが)
ところが作業員が手をこまねいていると、
「何やってんだ!お前ら動け!」
と罵声が飛んでくる。それで職場の雰囲気が悪くなる。
(わかったよ、やってやるよ)

機械トラブルがある。係長が修理にかかる。
(まだ指示を出さないな)
私は様子を見ている。
係長は修理にかかりっきりである。
(まだ指示を出さない)
私が黙っているのは、あくまで管理職が指示なって出して対処するのが順当だと思っているからである。
係長はまだ修理にかかりっきりである。
(そろそろ怒鳴り出すかな?)
と思ったところで余裕のあるラインを止めて、滞った製品の箱詰めなどをしてくれる。
作業員も慣れていて、自分の判断では動かないが、どこそこのトラブルに対処するようにとだけ言えば、後は自分の判断で箱詰めをしたりガムテープを貼ったりしてくれる。
(なんだ、声掛け簡単じゃん)
機械トラブルでなくても、箱取りは自分が対処仕切れなくなった時も、他のラインを止めて対処させることができた。そこで私は、しばしば余裕のあるラインを止めて箱取りの手伝いをしてもらったりした。
「五分だけ時間けろ」
と言って、昼休みにおばちゃん達を動員して溜まった箱を片付けたりしたこともある。みんなでやると速い。
(こういうのを、上はどう思っているのかね。自分の指導の成果だとか思ってるんだろうか)

和は箱取りが専属だったが、他の仕事をすることもある。
検品とか確認とか言っていたが、    要するに製品の包装に賞味期限がちゃんと入っているか、絵柄がズレたりしてないかをチェックする作業である。
何度かやるうちに、表面を完璧に観た上に、裏面の絵柄のズレがないかまで観れるようになった。
その検品作業をしていた時のこと。
段ボールの箱を開いて箱の形にする箱作り機は、よく故障する。
その度に段ボールを取り出し、ハンドルで箱を開く幅などを調整し、起動ボタンを押して再開しなければならない。
この作業は、箱取りか横入れという作業をする者がすることになっていた。
横入れとは、本来のラインの他にもうひとつラインを作り、それをひとつのラインに合流させることで、生産量を約2倍にする作業である。
具体的には、冷蔵庫から製品を持ってきて、それを横入れ機という機械にかけてもうひとつのラインを作る。
箱取りと横入れでは、横入れの方が余裕がある。箱取りには故障を直す時間はない。
そこで私が検品をしている間、箱作り幾が故障すれば私が横入れを呼んで対処させる。しかし2回も呼ぶと、横入れが遅れてくる。
(上はこういう事情を理解してくれない)
この状況を見ても、上は怒鳴るだけである。
私は検品から離れて、箱作り機の段ボールを取り、ハンドルを回して起動ボタンを押す。その後すぐ検品に戻る。
実際、検品しても不良は多く出ており、  検品入りながら見ていない作業員もいた。さらに箱取りでトラブルがあった時に、検品が動いて箱を積んだりすることもあった。当然検品が離れている間、ラインは止まっておらず、製品は検品されていない。
私が検品を離れて箱作り機の故障を直しても、製品は10個も流れていない。この会社は慣行上、私が検品を離れてトラブル対処をしても問題ないのである。
(本当はラインでも横入れでも止めた方がいいんだが)
製品の品質より、ラインを止めないことを重視する会社は、結構あるのである。

ある時、箱取りでどうしても直せない機械トラブルがあって、係長を呼んで直してもらった。
「こんなことで呼ぶな!)
と言って、係長は私をぶん殴り、その勢いで機械の鉄の柱に頭をぶつけた。
私はブチ切れそうになったが、後で係長が主任に降格したという話を聞いて、なんとか怒りを抑えた。

古代史、神話中心のブログhttp://sakamotoakiraf.hateblo.jp/もよろしくお願いします。