坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」

「水瓶座の女」の著者坂本晶が、書評をはじめ、書きたいことを書きたいように書いていきます。サブブログ「人の言うことを聞くべからず」+では古代史、神話中心にやってます。 NOTEでもブログやってます。「坂本晶の『後悔するべからず』 https://note.com/sakamotoakiraxyz他にyoutubeで「坂本晶のチャンネル」やってます。

日本型ファンタジーゲームの誕生⑥~俺の屍を越えてゆけ

今回ご紹介するのは『俺の屍を越えてゆけ』。略称『俺鹿』。
プレイしたことはなく、動画で見たけど、実況動画にもそれぞれの物語がある。私が見たのは「脇下一族列伝」。『俺鹿』の実況の中では一番有名だと思う。
時は平安時代、朱点童子の退治のため、お輪と源太の夫婦は大江山に向かうが、源太は討死、お輪は我が子を人質に取られ服従を強いられた。
お輪は朱点童子に従うが、子供を開放する際に、朱点童子は子供に2つの呪いをかけた。ひとつは常人の数倍のスピードで成長し、生後1年半から2年以内に死ぬ「短命の呪い」、もうひとつは人間との間に子を成すことができない「種絶の呪い」である。
この2つの呪いは、朱点童子を倒さない限り解くことができない。
これを見た天界の神々は、源太とお輪の子に力を貸すと決め、イツ花を派遣してサポートさせる。
そして人との間に子は成せなくとも、神との間には子が成せる。
主人公である源太とお輪の子は、神との間に子を成し、呪いを解くために一族挙げて朱点童子配下の妖怪と戦う。

ということで、登場人物達は2年を経ずに次々と死んでいくことになるのがこのゲームの特徴である。
そして敵を倒すと奉納点が稼げ、ゲームが進行するほど奉納点の高い神と交神して、より強い子を成すことができる。
それは人は死ぬたびに成長するようなものである。大国主神が死ぬたびに成長するように。

家の名前を脇下家とし、源太とお輪の子を飛沫丸と命名して、ゲームがスタートする。なぜ飛沫丸と命名したかは内緒🤣
討伐のために各ダンジョンに行くと、黄川人(きつと)という少年がゲームの進め方や各ダンジョンのあらましなどを教えてくれる。
初代飛沫丸だけ、3度の交神を行い、2度双子が生まれ、脇下家に5つの家系が生まれる。
当主一家は、2代目があせも、3代目が薫子、4代目がはぜると、女性キャラが続く。
一方、傍流には清香という、将来当主になりたいという女の子が誕生。ならこの子を当主にするかと思ったら、当主一家にモヒカンの男が誕生。
交神で生まれた子は、2ヶ月は親の神のところにいるのだが、脇下家にやってきた途端にイツ花先生の尻を触ってイツ花先生にひっぱたかれてしまう。
「これから脇下家は乱を求めていきますんで」と実況者稲葉百万鉄氏は言って、男にヤバ吉と命名、当主にする。
おいやめろ!清香を当主にすれば全部支障なく進むじゃねえか!と心の中で叫んでいたが、しばらくして、稲葉百万鉄氏が話上手なことに気づく。
ヤバ吉をその時ちょうど良く手に入っていた巻物で壊し屋にし、初陣で朱点童子退治に大江山に向かう。
男の壊し屋は下半身が褌一丁で「寒そうだよ!」と百万鉄氏。
しかし笑いを取りながらも朱点童子はしっかり撃破。しかし朱点童子の中から黄川人が出てきた。
黄川人の正体は朱点童子で、鬼としての朱点童子自体が黄川人と封印するものだった。
その後もヤバ吉は朱点童子討伐を目指すが、忘我流水道で強敵、敦賀ノ真名姫に遭遇する。
敦賀ノ真名姫は、平均400程度のダメージを与える術「真名姫」を使い、大江山をギリ越えた程度の力では耐えられず全滅の憂き目に遭う。
全員瀕死の中、ヤバ吉が壊し屋の威力のある一撃を真名姫に。外すことも多い壊し屋の一撃をよく当てたもんだと思うが、真名姫を撃破して危機回避。「脇下一族列伝」はヤバ吉の代が一番面白かった。

ヤバ吉の後はうめ香、烈香と続く。
うめ香も才女だったが、烈香はそのうめ香の倍近い素質点で、初陣で「烈香大風車」「烈香落雷撃」と槍使いの2つの奥義を創作、当主に就任してからは「無敵陣飛沫丸」「飛沫丸万歳殺」(当主は初代飛沫丸の名を継承する)と一人で4つの奥義を創作する才能の高さを見せる。そして黄川人=朱点童子の7つの髪から作られたボスのうち6つのボスを撃破する
そうしているうちに、黄川人のこともわかってくる。
黄川人の母は初代飛沫丸の母片羽のお輪の双子の妹片羽のお業。つまり初代飛沫丸とは従兄弟の関係になる。
お輪もお業も神であり、神が人間と交わると強い力を持つ子が生まれる。
革新派の神によって人間の主導者に祭り上げられ、大江山京に暮らすが、保守派の神の策動により帝の軍勢に攻められ、大江山京は壊滅する。その時父親は殺され、母のお業は捕らえられ、姉のイツ花は命を落とす。
黄川人は一人で山を降り、お紺に拾われる。
お紺は黄川人を拾った影響で様々な幸運に見舞われるが、夫は金を持って蒸発し、お紺は首吊り自殺をして九尾吊りお紺という妖怪または神になる。
その後黄川人は忘我流水道の氷ノ皇子に養われる。
氷ノ皇子の血を全て飲んで、黄川人は赤ん坊から子供になり、氷ノ皇子の元を去る。
その際敦賀ノ真名姫とも関係している。
真名姫は不老不死の妙薬としてその身を人間に食われ、忘我流水道に流れてきたところを黄川人が傷を舐めて癒して真名姫を救う。
その後黄川人は怒りを爆発させ、様々な禍を及ぼす。
黄川人の姉のイツ花の霊は大照天昼子となり、黄川人の体を鬼の体に封印する。
そして自分の従兄弟の初代飛沫丸を使って朱点童子の打倒を目指す。

ここで、稲葉氏は大照天昼子とイツ花が似ていることに気づく。
それもそのはず、イツ花先生は昼子の生前の肉体である。
その肉体を魂の残りカスが動かしている別人格だが、計画の立案者である昼子が、「短命の呪い」で苦しむ一族をじっと観察しているようにも見える。
その証拠に、脇下一族の一人が死ぬ時の最期の言葉に、「イツ花ならこう言うだろうよ、『ばーんと逝ってみよう!』って」というのがある。
イツ花先生はうまくごまかしてるが、図星を指されたってとこだろう。
『俺鹿2』では、黄川人が昼子が何か企んでいることを指摘して「だから腹黒いって言われるんだあの人」と言っている。
リメイク版では、昼子が一族に謝罪した上で対戦することができる仕様になっている。

烈香の後、どういう訳かナマズのような子が生まれ、「誰の子だよ!」と叫びながらも海大王と名付けるが、朱点童子討伐の選考試合で毎回優勝していたのが安倍晴明に敗北する。
そして次の代に、悲願の朱点童子討伐を成し遂げ、一族は呪いから解放される。

神々は不死で、強い力を持っているが、無気力だというのが『俺鹿』の設定である。
そんな中で、何人もの一族の死を乗り越えて悲願を達成する。そんな熱いゲームこそ『日本型ファンタジーゲーム』の名を冠するにふさわしいだろう。

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